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人はうまくいかなかったことを忘れられない…「キリの悪いところ」でやめるほうが作業を続けられるという逆説

集英社オンライン / 2024年8月21日 8時0分

「継続は力なり」とはよく言われる格言だが、人にとって物事を「続ける」ことはそう簡単ではない。一方、あえて「キリの悪いところ」でやめると続けられるというやり方がある。

【写真】脳外科医の菅原道仁氏

脳神経外科医の菅原道仁さんが、人をやる気にさせる「ドーパミン」の力を活用して脳をその気にさせる方法を綴った『すぐやる脳』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。

「キリの悪いところ」でやめると続けられる

人は、成功したことより、失敗したことのほうを強烈に覚えているものです。

身近な例で言えば、うまくいった恋愛より失恋した体験のほうが、印象深く残る。人の心は、かくも不思議なものです。

心理学用語では、これらの現象を「ツァイガルニク効果(ザイガニック効果)」(Zeigarnik effect)と呼びます。



ドイツの心理学者クルト・レヴィン氏は、人の記憶について「達成された課題より、達成されなかった課題や中断している課題のほうが記憶に残る」と考えました。

レヴィン氏の考えに基づき、実験を行い、実証をしたのがソビエト連邦(当時)の心理学者、ブルーマ・ツァイガルニク氏です。「ツァイガルニク効果」という名称は、彼女の名前に由来しています。

「ツァイガルニク効果」といういかめしい語感から、「なんだか難しそう」と感じる人も多いかもしれません。けれどもこの原理を利用した告知の方法は、実は現代にあふれ返っています。

◼️「忘れる」から新しい課題に挑戦できる

たとえば、テレビの連続ドラマです。

どの放送回も必ず「物語の続きが気になるところ」で終わるスタイルになっています。だからこそ、視聴者は、次の放送も見たくなるわけです。

ウェブメディアのニュースサイトの構造も、同様です。

「あの大物芸能人に、初のスキャンダル発覚! そのお相手とは……」という文字を見れば、ついついクリックして、ニュースの続きを知りたくなるものです。

ウェブ上の広告も、しかりです。

「運動も食事制限もせずに10㎏ヤセた、その驚きの方法は……」というバナー広告を、思わずクリックしてしまった、という人は多いはずです。

平たく言うと、ツァイガルニク効果とは、「続きを〝引っ張られる〟ことで、続けたくなる」という、身に覚えのある心理のことです。

そのメカニズムを、科学的に説明してみましょう。

「何かを達成しなくてはいけない」という課題があるとき、人は程度の差こそあれ、緊張状態を強いられます。けれども、この緊張は課題が達成された途端になくなります。そして、そんな課題があったことさえ忘れてしまいます。

この「忘れる」という現象があるから、人は常に新しい課題に挑戦できるのです。

「忘れる」ことは、生きていくうえでとても重要なのです。

けれども、このメカニズムは、少々厄介です。裏を返すと、「課題が達成されない限り、忘れられない」ことになるわけです。脳には律儀な性質もあり、よくも悪くも「未完の課題」は忘れないのです。だから、「うまくいった恋愛より失恋した体験のほうが、印象深く残る」わけです。

◼️あえて未完にすると「続きをやりたくなる」

こういったメカニズムを知り、「そうだったのか!」と得心した人は多いのではないでしょうか。現代の広告の手法としても重用されているツァイガルニク効果ですが、研究によって証明されたのはなんと80年以上も前にさかのぼります。

そのとき行われた有名な実験は、次のようなものです。

被験者を2つのグループに分け、簡単な作業や粘土細工、パズルを解く課題などに取り組んでもらいます。

Aグループは最初から最後まで、すべての課題を完了させます。一方、Bグループにはひとつの課題を途中でやめさせ、次の課題に移ってもらうようにします。

全課題を終えたとき、それぞれのグループに「今やった課題にはどんなものがあったか?」とたずねると、課題をいちいち中断されたBグループのほうが、Aグループの約2倍の数の課題を覚えていました。

さらに「未完成の図形」と「完成した図形」の知覚実験も行われています。その結果「未完成の図形」のほうが「完成した図形」より記憶や印象に強く残ることが判明しました。

実は、これこそが、明日も明後日も「続ける」ためのコツです。人は、大抵の作業や仕事を「キリのいいところ」まで終わらせてその日を終えます。そして、次の日も「キリのいいところ」まで終わらせ……、この繰り返しです。しかし、これでは作業そのものがマンネリ化してドーパミンが出なくなってしまいます。

そこで、おすすめしたいのが「キリの悪いところ」でやめる方法です。あえて中途半端なところで終わらせるのです。こうすると「続きをやりたい」という欲求が強くなり、翌日にそれをできたことが脳への報酬になってドーパミンを放出。幸福感を得られます。

これが「続ける」ための原動力になるのです。

文/菅原道仁

すぐやる脳

菅原道仁
すぐやる脳
2024/8/8
1,540円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4763141675

今日も、はじめられなかった人へ
脳をその気にさせる方法、教えます!

【こんな人にオススメ】
・あれこれ考えてなかなかはじめない
・何をやっても長続きしない
・やってみたい事はいろいろある
・成長意欲はある。でも、まだ本気出してない

やせたい、片付けたい、
英語が話せるようになりたい、
スキルアップしたい。

すぐに行動すれば効果が
ありそうなことはわかってるんだけど、
なかなかはじめられない……。

10人いたら9人くらいは
こうやって「先延ばし」にしちゃうし、
強靭なアスリートのような
不屈の闘志を持った1人だけが
「今日から」はじめる。

じゃあ、これは「意志力」の差か
といえばそうではなくて、
人間の脳ってもともとエネルギーを無駄に
使わないようにプログラミングされてるんです。

亀は海の中で手足を引っ込めてスーッと泳ぎます。
これはエネルギーを使わず、波に乗って進むため。
陸に上がったらめちゃくちゃゆっくり歩く。
これもエネルギーを使わないため。

人間も同じで「怠惰」なのではなくて、
エネルギーを消費しないために
「すぐやらない」「動かない」「考えない」
ことで体力を温存しているんです。

脳は取り込んだ酸素のうち20%を使う、
人間にとって最大のエネルギー消費器官なので
休もうとするのは当然なんですね。

じゃあ、どうすれば「すぐやる」かというと
あるホルモンをドバッと分泌させることです。
それが「ドーパミン」です。

仕事でも、家事でも、勉強でも、
「やりだすまで」がなかなか長くないですか?
で、やりだしたらいつの間にか
エンジンがかかってきて
一気にやっちゃうことがあります。

これこそドーパミンの力です。

ドーパミンは「やりだしてから」出る。
これが出るから、さらにやる気になる。
これを「作業興奮」と言ったりします。

だから、とりあえず、あれこれ考えずやりだすと、
「ドーパミン君の力で勝手に体が動きはじめますよ」

というのがこの本です。

それを現役の脳神経外科医が説明してくれるので
信頼性が高く、かつ、簡単な文章なので
短い時間で読めてしまいます。

やったほうがいいのはわかっちゃいるけど
腰が重くてなかなかはじめられない、
という人はぜひ読んでみてください。

【目次より】
序章 脳がそれを拒否する理由
第1章 ドーパミンこそが行動を決める!
第2章 すぐやる
第3章 こまめにやる、早めにやる
第4章 続ける
第5章 決める、選ぶ
第6章 挑戦する
第7章 怒らない

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