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自由研究・読書感想文は絶滅の危機? 令和の小学生の「夏休みの宿題」が激減している理由

集英社オンライン / 2024年8月18日 10時0分

夏休みも終盤、ようやく “夏休みの宿題”に取り掛かり始めた学生も少なくないだろう。膨大な宿題に追われる日々を想像すると少し気の毒にも感じるが、実は現代の小学生の夏休みの宿題は、昔とは事情がだいぶ異なるようだ。

【画像】読書感想文は時代遅れなのか? 令和の小学生の夏休みの宿題とは

過半数の親が「昔に比べて小学生の宿題が少ない」と回答

地域によって多少の違いはあるものの、おおむね日本の小学校の夏休みは、7月下旬から8月末まで。1カ月以上もの休みの間には、友達と思う存分遊んだり、旅行に行ったり、だらだら何もしない一日を過ごしたりと、無限の選択肢がある。

だが、これに水を差すのが夏休みの宿題だ。とくに、夏休みが終盤に差しかかると、何をするにしても、時折、宿題のことが脳裏をよぎり、心から休みを楽しめなくなることも少なくない。

この宿題問題は、お盆休みで休養中の大人にも降りかかっているようで、SNSを見ると、〈末っ子の宿題が終わらないよ。何で夏休みに母ちゃんがこんな心配しなきゃならないのよ〉〈子どもたちから夏休みの宿題の質問とかで声がかかるのを「待ち」の状態〉〈結局お盆休みは子どもの夏休みの宿題の手伝いになるんだよなぁ…笑〉〈子どもたちの夏休みの宿題が終わらない。。。〉といった声があがっている。

やはり、夏休みの宿題で苦労するのはいつの時代も同じなのか……と思いきや、実は昔と比べると、小学生の夏休みの宿題の量ははだいぶ抑えられているとのデータもある。

ベネッセコーポレーションが、今年7月17日に発表した小学生の「夏休みの宿題に関する調査」によると、実に56%もの小学生の保護者が「自分が小学生の時と比べて、子どもの夏休みの宿題の量は少ない」と感じていることがわかっている。(調査は小学1年生から6年生の保護者1728人が対象)

「多いと感じている」と答えたのはわずか11%、「変わらない・わからない」が33%であった。確かにSNSでは〈子どもがもう夏休みの宿題終わらせてすごいと思ったら、そもそも量が少なかった〉〈今って夏休みの宿題めっちゃ少ないんだね! めんどうな課題は参加自由でドリル的なのも薄っぺらいの一冊でむっちゃ楽〉といった声も確認できる。

愛知県在住の40代・小学校教師に聞くと、なぜ今の小学生の宿題は少ないのか、なにが昔と劇的に変わったのかが見えてきた。

読書感想文はやらなくてもいい! 代用課題は習字

「まず宿題の量ですが、確かに昔に比べたら減っていると思いますね。昔は、国語・算数の練習帳と書き取り30ページ、絵日記3枚程度、夏休みの計画表、絵画作品1点以上、作文1点以上、習字作品1点以上、読書感想文1点といった感じのラインナップでした。学年が上がるにつれて、さらに内容は多くなっていきます。

一方で今の小学生はというと、練習帳と書き取り、あるいは自主学習のどれかを選択で10ページ程度、そして作文か絵画か習字、読書感想文も選択制で1〜2点程度あたり。これは私の担当している学校だけの話でなく、どの学校もこの程度と考えてもらってよいと思います。学校や学年によって変化があるとすれば、それらに加えて絵日記、計画表、観察カードがあるかどうか、といったところでしょうか」(40代・小学校教師、以下同)

確かに明らかに少なくなっている宿題量。特に、多くの日本国民のトラウマになっている読書感想文については、“やってもやらなくてもどっちでもいい”というから驚きだ。

「自由研究・読書感想文・習字・絵画を選択制にしていると、習字7割、絵が2割、そのほかが1割といった割合で選ばれています。自由研究や読書感想文に関しては、やってくる子は本当に好きか、読書感想文のコンクールで入賞したいからか、親に無理矢理やらされたかのどれかですね。だからクラスの1割程度の子くらいしかやってこないですし、クラスによっては0も全然ありますよ。

そもそも、自由研究は大半の親が支援しているので、親に時間的、精神的余裕がないとなかなかできませんからね。写真の印刷ひとつにしても必ず親の力が必要になりますし、子どもだけでやることはほぼ無理です。だからこそ、共働きの家庭では選択肢にすら入らないのではないでしょうか」

夏休みの宿題の代表格である、自由研究も読書感想文も、まさか現代では絶滅危惧になっていたとは……。なぜ、これほどまでに宿題が減ってしまったのか。それは、現代の子どもを取り巻く教育環境が強く関係しているという。

塾に通う小学生が30年前の2倍以上

「夏休みが昔に比べて数日短いなど、いろいろな要因があるとは思いますが、子どもの教育方針に関して、学校よりも親の考えが強く反映される世の中に変わったことが特に大きいと思います。例えば、習い事に通う子どもは昔に比べて格段に多くなり、多い子は週5でどこかに通っています。習い事は学習系に限らず、ダンス・楽器・演劇といった芸能系など多岐にわたり、親が送迎して徹底的にサポート。

さらに、中学受験をする家庭も多くなり、そういった家庭では日ごろから、学校の宿題以外でもドリルを買って勉強するなどしています。こうなってくると、学校側が子どもに強制させる宿題を多くするわけにはいかなくなりますよね」

令和4年の文部科学省の調査によると、公立の小学校に通う児童の4割、私立の小学校に通う児童の7割が学習塾に通っているという。約30年前の1993年の調査では、小学校全体で塾に通っている子どもの割合は23.6%であった。飛躍的に塾に通う子どもが増えていることがわかる。

ただ、宿題が減っているのは、教員たちがそれぞれの家庭に任せてしまっているというわけだけではなく、子どもを想っての考えでもあるようだ。

「そもそも教員の意識としては、学習内容の定着のために課題を出していますが、果たして宿題にどこまでの効果が見込めるかが疑問です。中学・高校となったら自然と課題も増えて部活も始まって忙しくなるので、せめて小学生時代は好きなことする時間が多くてもいいんじゃないかという思いもあります。

教員の激務がたびたび話題になるので、教員が楽をするために宿題を減らしているのでは? との声も聞きますが、課題を添削することはそこまで苦ではありません。ただ、費用対効果が薄く、子どもの時間をいたずらに奪うだけの結果になっているなら『少なくしてもいいんじゃないか』って考えを持つ人は多いです。

ただ、宿題は学習習慣をつけるという面でも、提出期限を守るという面でも、子どもたちに身に付けてほしい社会的スキルですので、大切にしていきたい文化であることは間違いありません」

いくら夏休みの宿題が減ったからといって、今の子どもには今の子どもなりの苦労があるようだ。古いしきたりに固執せず、これからも時代に応じて教育環境が変わっていくことを期待したい。

取材・文/集英社オンライン編集部

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