「オシャレしてきてね」が唯一のルール? 若年女性がテニスコートから消えた令和の日本で、インフルエンサーが立ち上げた画期的な『テニス女子サークル』とは?
集英社オンライン / 2024年8月23日 16時0分
悲しいことに、テニスは日本では近年あまり人気がない。かつて1000万人以上いた競技人口は半分以下になり、特に若い女性が少なくなっている。しかし、世界ではロレックスやメルセデスベンツなどが大会で欠かさず協賛する、オシャレで人気のあるスポーツだ。日本でのテニスのイメージを変え、テニスを楽しむ若い女性を増やそうと活動するテニスインフルエンサー宇野真彩さんに話を聞いた。
若い女性がかわいいウェアを気軽に着られない
テニスといえば、女の子がスコートをひるがえしコートを駆ける——そんなイメージを抱いている人は、少なくないかもしれない。今年公開された映画『チャレンジャーズ』でも気鋭のハリウッド俳優・ゼンデイヤがクールなテニスルックを披露したことで話題にもなった。
テレビで中継されるテニスの国際でも海外の女性選手たちはスポーツドレスやスコートを着こなしているが、現実の日本のテニススクールでは、そのような姿を見ることはあまりない。
かつて若者を中心にブームを誇ったテニスだが、現在コートに通うのは若い頃からテニスに親しんできたテニス愛好家たち。もちろんいくつになってもスポーツを楽しむことは素晴らしい。
だが若い女性も含めて楽しまれているゴルフとは違い、社会人になると極端に若い女性の競技人口が減ってしまうのがテニスの現状だ。
そのため新しくテニスを始めたい、あるいは久しぶりにテニスを楽しみたいと思った若い女性たちが、かわいいウェアを着たくとも気後れしてしまう空気が存在しているという。
「若い女性だけでテニスをしているサークルは、私が知る限りありません。男性がいるから着れないということではないのですが、短いスコートなどは浮いてしまいますよね。同世代でかわいいウェアを着てわいわいテニスを楽しめる環境があればいいなとはずっと思っていました」(中西さん)
そんな若い女性たちの要望に応えるかたちで、テニスインフルエンサーの宇野真彩さんが『テニス女子サークル』を立ち上げた。どんな経緯でサークルが立ち上がったのか、宇野さんのキャリアとともに話を聞いた。
一度はテニスから逃げた
都内のインドアテニスコートで、若い女性たちの軽やかな笑い声と、心地よい打球音が響く。
ラケットを手に、スコート姿でコートを駆けるのは20~30代の女性たち。ボールを打つ合間に写真を撮り合う彼女たちのテニス歴は、「高校時代に団体戦で全国優勝した」という猛者から、「社会人になってから始めた」という人まで幅広い。ただ全員に共通するのは、「好きなウェアを着て、テニスを楽しくプレーしたい」という思い。
そして、同世代の女性たちと気兼ねなくテニスができる場を探していたところ、この『テニス女子サークル』にたどり着いたという経緯だ。
——まずは宇野さんのテニスキャリアを教えてください
宇野(以下同) テニスを始めたのは、小学3年生の時です。大坂・四條畷(しじょうなわて)市のテニスクラブに、体験レッスンで行ったのがきっかけでした。その後、中学に上がるタイミングで鎌倉市に引っ越したんですが、市内には硬式テニス部がある中学校が無かったんですよ。
そこで学校に『硬式テニス部を作ってください』と頼み、部員は私だけで活動を開始。大会に出場するためのハンコをもらいに行くだけで中学では実質的な活動はしていませんでしたが、お陰で高校にはスポーツ推薦で進むことができ、その後のキャリアに繋がりました。
——高校卒業後、プロに?
18歳で選手活動を始めましたが、20歳で辞めているので、活動期間としては一瞬でした。やっぱり、つらかったんです。当たり前ですが、大会で優勝するのは1人だけ。負けてばかりだし、いつも一人で転戦していたので、メンタル的に弱ってしまい。
遠征にはお金も掛かるので、親やスポンサーにも「負けてばかりで申し訳ありません」という気持ちになる。もう「自分には無理だ」と諦めてしまった感じでした。
——引退後の活動は?
テニスから「逃げた」という気持ちがあったので、すぐテニスに関わる気持ちにはなれず、一度環境を変えたくて地元の大阪に戻ったんです。親族が美容系学校の仕事をしていたこともあり、アロマセラピーやメディカルハーブなどを習い、資格を取りまくりました。
ただ、いざエステサロンに行って就職面接を受けているとき、「何か違う」と感じちゃったんですね。そこで改めて何がしたいか考えたときに「やっぱりテニスが好きだ」と気づいたんです。
冷ややかな目で見られていたことも
——気がついたテニスの良さとは?
ひとつはやはり、男女問わず、どんな年齢の人ともプレーができる点です。そしてネットを挟んで相手と真剣に向き合える、すごくフェアなスポーツだというのも、すごく感じました。
——その後、どのように再びテニスと関わり始めたのですか?
最初はコーチをしていました。22~23歳の頃は、ジュニア選手育成やツアーの帯同もしたんです。でも選手と、主張が強い親御さんの板挟みになるのが苦しかった。もちろん親御さんのお気持ちも理解できるんですけどね。
でもそこで改めて私は楽しくテニスがしたいと気づけたんです。そのタイミングでテニスインフルエンサーとして仕事を始めました。
テニス会場やイベントなどに行き、観客のかたと交流したり、情報発信し始めたのが約5年前。現役選手たちが現在ほどSNSをやっていなかったので、どんどん私のフォロワー数は伸びました。でも周囲にはあまり理解されなくて、冷ややかな目で見られたりもしましたね。
——それは、どういうことですか?
ありがたいことに大会では「写真を撮って下さい」とお声がけいただいたり、メディアに出演する仕事もいただいていたので、悪目立ちしてしまったのかもしれません。
現役の選手たちからの評判があまりよくなかったんです。こちらとしては「選手も含めて大会を盛り上げるために」頑張っていたので、その時期は悲しかったですね。
今ではみんなが「SNSやるのは大事だよね」という雰囲気になってきたので、当時よりは優しくしていただいています(笑)。
自分が目立ちたいのではなく、「テニスを盛り上げたい」という気持ちで活動しているので、今後も結果で示していきたいなと思っています。
おしゃれなテニスで日韓戦
——そのような活動の中で、どのような思いで“テニス女子サークル”を立ち上げたのでしょう?
先ほど言ったように、誰もできる幅の広さがテニスの魅力だと思うんです。ただ、今はテニススクールに行っても、昼間はご年配のかたが多く、夜は会社帰りのサラリーマン男性が多いのが現実です。若い女の子が、いきなり入って一人で楽しめるかといったら難しい。
あと私ゴルフも大好きなのですが、若い女の子がSNS用にかわいいウェアを着て、綺麗なコースで写真を撮るってゴルフでは普通なんですよね。これがテニスではできない理由はなんだろう? そういう場を作れたらなという思いもあって、テニススクールとは違う「おしゃれでかわいい」新しいサークルを作りたかったんです。
——確かに女性だけの社会人テニスサークルは聞かないですよね。
私たちのサークルはレッスン代などもなく、コート代だけ払えば基本は誰でも参加できる。20~30代の女性限定で「オシャレしてきてね」という声掛けはしていますが、ルールもないので、何度も来てくれている人もいるし、毎回初めての参加者もいます。
みんなでかわいいウェアを着て、女子同士で写真を撮って、新しい子を輪に入れるというのも大切にしています。それをSNSで発信することで、テニスをやったことがない人に興味を持ってもらったり、もっとテニス人口が増えて欲しいなと思ってます。
実際に韓国では今、テニスは若い女性の間で「かわいいスポーツ」として人気があるので、日本でも可能性はあると思うんです。
——韓国と日本では何が違うのでしょう?
韓国でのブームのきっかけはSNS。多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーたちが、かわいいウェアを着てコートで撮った写真を発信しています。
去年も主催したのですが、今年も9月にサークルのメンバーを連れて韓国で交流戦をやるんです。日韓戦はどんなスポーツでも盛り上がりますし、「おしゃれなテニス」という文脈の日韓戦をこれからも盛り上げていきたいなと思っています。
——改めて伺いますが、宇野さんが伝えたいテニスの魅力や、多くの人にテニスをやってほしいと思う理由は、なんでしょうか?
私自身、テニスをずっとやってきたので、テニス界に恩返しをしたいという思いがあるんです。テニスって楽しいし、今はおしゃれもできるし、色んな人たちと仲良くなれるし、生涯スポーツなので一生楽しめる。
絶対に人生が豊かになると思ってるんですね。
そのためにも、テニスがもっと開放的で、誰からも愛されるスポーツになってほしい。そうでないと、時代は変わっていくなかで、テニスが取り残されてしまうと思うんです。
特にいま、若い女性からの人気がないので、もっともっと参入のハードルを下げて、テニスをみんなに楽しんでもらえるスポーツにすること…それは私にしかできない活動だと思うので、もっと賛同したり応援してくれる人が増えてほしいなと思ってます。
現在もスポーツブランドに協賛してもらっていますが、もっと大きな会場で活動したり、頻度を増やしたいので、活動資金をサポートしてくれるスポンサーさんを広く募集しております。
取材・文/内田暁
写真/松木宏祐
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