「子ども1人育てるのに1500万円かかる」は本当? 元国税専門官が解説する教育費の真実
集英社オンライン / 2024年9月4日 11時0分
少子化が進む一つの要因に経済的な不安が挙げられる。子どもを1人育てるのには相応のお金が必要になるが、その正確な数字とは? 誰も教えてくれない「じつはそこにあるお金の話」を元・国税専門官が人生のライフステージごとに徹底解説した『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
「教育費は子ども1人1500万円」は本当?
お金は、「イメージだけで語らない」がとても重要です。
イメージに惑わされない。
教育費を例に、この姿勢の大切さと効果を実感してみましょう。
「子ども1人の教育費に1500万円かかる」と聞いたことはないでしょうか?
この「教育費1人1500万円」の根拠としてよく用いられるのが、文部科学省が公開する「子供の学習費調査」(令和3年度)。
これによると、幼稚園から高校卒業まですべて公立でも約570万円、すべて私立なら約1840万円の教育費がかかるとされています。大学の平均的な学費については別途文部科学省が情報を公開していますが、同じ令和3年度の情報では国立大約240万円、私立大なら約400万円。
この情報を、「高校までは公立に通い、大学は私立」というケースに当てはめると、たしかに1千万円に近い大きなお金がかかりそうです。
もしも幼稚園から大学まですべて公立でも約810万円、オール私立なら約2240万円が必要になります。
でも、こうした統計の数字だけを見て過剰に不安になる必要はありません。
なぜなら、実際にかかる教育費は統計値と大きくずれることがほとんどだから。
私立高校と公立高校の差は埋まりつつある
そもそも、子どもの教育費は、公立か私立か以外にも、実家通いか下宿か、どのような学部に入るのか、留学するのか、といった複数の要素の組み合わせで決まります。不確定要素が多く存在し、完全には予測できません。
さらに重要なのが、「国などからサポートを受けられる」ということ。
拙著『僕らを守るお金の教室』でも詳しく解説していますが、教育費をサポートする制度はたくさんあり、近年さらにパワーアップ中。世帯年収などの条件にもよりますが、私立高校に通ったとしても、支援制度を利用すれば公立校との授業料の差はかなり解消できます。また、今後さらに支援制度が手厚くなる可能性も大いにあります。
事実、高いと思われていた私立高校と公立高校の差は埋まりつつあるのです。
とはいえ、まったくお金のことを考えずに生活するのもまた危険です。
これまでの流れも踏まえて、次の3点を意識してみてください。
①まずは大きくライフステージごとのお金防衛術を学ぶ → お金の不安を軽減
②目の前の問題に目を向ける → お金の不安の検証
③目の前の問題を解決するために、お金防衛術を活用する → お金の不足を解決
将来使えそうなお金防衛術の存在を大きく知っておき、そのうえで目の前の問題に意識を向ける。
・「お金の不安」を軽くして、目にかかった雲を振り払う
・きれいな目で現実をとらえて、「お金の不足」に着手、解決する
という手順は、一生涯にわたりお金の問題に健全に対処する基本ステップです。
不安に惑わされずに生きましょう!
支援制度の3タイプを使いわける
お金防衛術の肝となるのが国などの支援制度の漏れなき活用ですが、使い方に注意が必要なものが存在します。
①お金の支払いを全額or一部免除してくれる「免除タイプ」(大学の授業料減免など)
②お金をもらえる「支給タイプ」(育児休業給付金など)
③お金を借りられる「借入タイプ」(貸与型奨学金など)
このうち①と②は純粋に経済的な支援を受けられる「もらえる」ものなので、デメリットはありません。最大限利用するために、申請できるものがあれば、期限内に確実に手続きしましょう。
ただし、③は返済義務があるので注意が必要です。受け取ったお金はいずれ返さなければいけません。使い方を間違えると後で返済に困る可能性も……。
かくいう私も、一人暮らしをして私立大学に通うために月16万円もの貸与型奨学金を借りていました。その結果、卒業時には元本と金利を合わせて約1千万円もの返済義務を負うことに。
恥ずかしい話、大学生になった頃は奨学金の返済についてきちんと理解しておらず、「利用できるものは最大限利用しよう」という考えでした。そして、「奨学金が使えるから」という安易な考えで、私立大学への入学を決定。学費がほとんどかからない公立大学にも合格していたのですが……。
ピンチの時こそ「お金を守る方法」を探そう
とはいえ、貸与型奨学金も活用法次第。
貸与型奨学金は、普通に銀行などでお金を借りるよりも条件が優遇されています。金利がかからなかったり、返済期間を長くとってもらえたり……メリットもあるので、一概にダメとは言えません。活用次第で強力なお金防衛術となります。
給付型と貸与型を組み合わせることで、よりお金の問題を解決しやすくなる、なんてことも。
なかには借入タイプでありながら、状況によって支給タイプに変化する特殊なものもあります。
たとえば、低所得者や高齢者、障害のある人などの生活を経済的に支えることを目的とする「生活福祉資金貸付制度」。
一定額のお金を無金利で借りられる制度ですが、返済時期が来た後も病気で働けなかったり、失業したりして、経済的に苦しい状況が続いた場合、返済猶予や返済免除を受けられます。状況次第では、借りたお金は返さなくてよくなるのです(*)。
(*)連帯保証人を立てた場合のみ。連帯保証人を立てなくても借りられますが、その際は年利1.5%。新型コロナのときは特例として「無利子・保証人不要」でした。
不安はピンチになったときの姿を想像して生まれますが、このように、ピンチのときにも「お金を守る方法」は存在してくれています。
それを知るだけでも、心が少し軽くなりませんか?
写真/shutterstock
〈実は日本の10人に8人はまだ利用してない「ふるさと納税」興味はあるけど躊躇している人に知ってほしい基本中の基本〉へ続く
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