「通知が来たら即撮影」2分以内の制約が課せられるSNSにハマる若者が急増…授業中もバイト中も撮影してしまうスマホ中毒の呪縛
集英社オンライン / 2024年8月27日 17時0分
近年、中高生を中心に流行している写真共有SNS「BeReal」。「通知が来たら2分以内に撮影しなければならない」という独自のルールから、TPOをわきまえずに撮影する中高生が問題になっている。なぜ若者たちはそこまでSNSのしがらみにハマってしまっているのだろうか。
話題の“映えない”無加工SNSが問題になっている背景
中高生の間で流行しているSNSアプリ「BeReal」をご存じだろうか。
このアプリは、1日1回ランダムに通知が来るシステムで、「2分以内に写真を投稿しないと他の友達の投稿が見られない」というルールがある。そして、この即時投稿しなければならないというルールが中高生に深刻な影響をもたらしている。
というのも、授業中やバイト中でもお構いなしに撮影する中高生や大学生の存在が指摘されており、保護者や学校関係者から苦情が相次いでいる状況なのだ。また、撮影する際にシャッター音が鳴るので、このSNSを使用しない生徒たちからは「シャッター音が気になる」、「気が散る」といった意見もある。
こうした仕様については「スマホ依存を助長している」との指摘もあるが、なぜ若い世代はここまで夢中になってしまうのだろう。毎日投稿するという高校生と、頻繁に投稿する女子大学生を取材し、「BeReal中毒」になってしまう彼女たちの心理を深堀りした。
毎日投稿するのは当たり前、通知が来ないとソワソワ…
最初に話を聞いたのは現在高校1年生のハルさん(仮名・16)だ。ハルさんは2023年の7月からこのアプリを使い始め、そこからは毎日欠かさず投稿しているという。
「通知がなかなか来ないと待ち遠しくてソワソワしちゃいます(笑)。自分でもかなりハマっているなって感じますね」
そんなハルさんになぜここまでハマってしまっているのか聞いた。
「一番の理由は、学校とかで通知が来たときに友達みんなで騒ぐのが楽しいからですね。アプリからの通知ってみんな一斉に来るんですけど、その場に友だちがいると『BeReal来たから撮ろう!』って盛り上がるんです。
あとは友達が近くにいないときでも、自分や友だちが今何をしているのか共有できるので話題が増えて楽しいんです」
ハルさんはSNSの「Instagram(インスタグラム)」で繋がっている友人はBeRealでも繋がっているという。知り合い程度の関係性でもアカウント交換することもあり、よりオープンなSNSかつ加工で“映え”を意識することが特徴のインスタグラムだが、BeRealは無加工の写真が基本。“ありのままの自分”を見られることに恥ずかしさや抵抗は感じないのだろうか。
「無加工の自分を見られることに対して特に抵抗はありません。でも自分には大して撮るようなイベントがないときに、BeRealで楽しそうな様子をアップしている人や、私生活が充実している様子を載せた投稿を見ると、劣等感を感じることがあります。そういう“リア充”の人から、自分の大したことない投稿についてリアクションされると少し恥ずかしいという気持ちはありますね(笑)」
やはりSNS特有の自己と他人を比較することで感じてしまう“劣等感”や“承認欲求”はあるようだ。
次にBeRealを使っていない同級生について聞いてみた。アプリを使用していないことで、クラスの話題に乗り遅れたり、仲間外れにされたりすることはあるのだろうか。
「私の学校では携帯をロッカーにしまっておかないといけない決まりがあるので、学校生活中は基本BeRealを撮りませんし、話題に上ることも少ないです。だから、やっていないとクラスに馴染めないなんて雰囲気はありません」
ハルさんの場合、授業中にスマホで写真を撮ることなどはなく、あくまで親しい間柄同士で一緒に楽しみ、思い出を共有するためのポジティブなツールとして使っているようだった。
「授業中もよく撮っています」1日でも撮り忘れると悔しさを感じる
続いて話を聞いたのは現在高校2年生のミナミさん(仮名・17)。ミナミさんも昨年の4月に使い始めてから毎日投稿しているそうだ。そんな彼女が、アプリが自身の生活の一部になっていると感じた瞬間について語ってくれた。
「毎日の口癖が『通知まだかな』になっていることですね(笑)。友達と通知が来たときに盛り上がるのが楽しいんです。授業中もよく撮っていますよ。とりあえず通知が来たら『撮らなきゃ!』ってなっちゃいます」
なぜミナミさんは授業中も撮るほど、魅了されているのだろうか。
「BeRealは自分の過去の投稿をカレンダーの形式で振り返ることができるので、私は思い出日記みたいな感覚で使っています。だから1日でも撮り忘れるとその日の思い出が残らないので悔しいんです」
相当ハマっている様子のミナミさんだが、毎日投稿することに疲弊したり、無加工の写真を撮ることに嫌気が差したりすることはないのだろうか。
「面倒くさいと思ったことは全然ありませんね。むしろ楽しいとしか思いませんし、私は無加工の写真のほうが『盛れるな』って思います。最近は加工するより、シンプルで飾っていない写真の方が魅力的なんじゃないかと感じています」
ミナミさんもハルさん同様、親しい仲間と一緒に盛り上がることが楽しいと感じているようだが、「1日でも撮り忘れると悔しい」と語るように、「日々の思い出を記録する」ということが、ある種の強迫観念のようになっているのではないかという印象を受けた。
自己承認欲求が強い人ほど盛んに投稿
最後に話を聞いたのは現在大学4年生のユキさん(仮名・22)だ。ユキさんは1年ほど前からBeRealを始め、投稿頻度は月によってまちまちだというが、まずはユキさんが使い始めたきっかけについて聞いてみた。
「周りの友達がやっているからという理由で、最初は軽いノリでアプリをダウンロードしました。それから私がフォローしている海外のインスタグラマーがBerealの投稿をインスタグラムのストーリーに載せ始めたのを『おしゃれだな』と思ったことで、自分も撮り始めるようになりましたね」
ではユキさんは主にどんなときに投稿するのだろう。
「学校で友だちと会っているときや、バイト先が一緒で仲のいい子とシフトが被ったときに撮ることが多いですね。逆に一人でいるときはあまり撮りません。どうしても仲のいい子の近況が知りたい場合は、内カメラを真っ暗にして顔を載せずに投稿することもあります。ちなみに、こうやって自分の顔を載せずに“見る専門”でBeRealを使っている子も結構いますよ」
また、ユキさんによると投稿頻度が高い人は、他のSNSも頻繁に投稿する傾向があるという。
「インスタグラムのストーリーを頻繁に更新したり、投稿を頑張っていたりする子は、毎日のようにアップしている印象です。そういう子は他の人の投稿にリアクションすることが少なく、自己満足で投稿している気がしますね。あとBeRealは何回撮影し直したか他の人にもわかる仕組みなんですが、私のフォローしている人のなかには17回も撮り直している子がいましたね…」
昨今のSNSの写真の潮流に反して、無加工が魅力的だと感じているミナミさんの話があったが、なかには自分が納得いくまで“盛れる”写真を撮り続ける人もいるみたいだ。
さらにユキさんの周囲には、まさに“BeReal中毒”になっている人もいるそう。
「通知が来て2分以内に撮ると、追加で2回投稿できる機能があるんです。毎日3回投稿することがチャレンジの一種みたいな感じになっていて、1日でも3回投稿を逃すと悔しいと思う人もいるみたいです」
さまざまな機能が「スマホ依存」を引き起こすような原因となっていることがユキさんの話からわかる。またユキさんは、このアプリのヘビーユーザーに対して疑問を感じることもあるそうだ。
「たまに満員電車の中とかで、BeRealを撮っている人たちを見かけるんです。“カシャッ”と大きな音がするので気になるし、いくら親しい人同士でしか投稿を共有しないからといっても、他人が映り込んだ写真を撮るのってどうなんだろうって感じます。もし自分が写っていたら怖いし、正直そういう人たちは使い方をわきまえてほしいなって思います」
――次世代型インスタグラムのようなSNSにハマる若者たちは総じて「通知」という“呪縛”にとらわれているようだった。また気軽に繋がることができるインスタグラムなどのSNSとは違い、親しい友人同士で“内輪ノリ”を楽しむような側面がある。BeRealは若者たちにSNSの新たなおもしろみを与えた一方、スマホへの深刻な依存も引き起こしていることは間違いないだろう。
取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio
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