「本当に進次郎を総理大臣にしていいのか?」超党派勉強会で””非常識”と不興を買うなど懸念される調整力のなさ「トランプ相手に”進次郎構文”では太刀打ちできないよ」
集英社オンライン / 2024年9月6日 7時0分
9月6日に自民党総裁選への出馬表明を行なう予定の小泉進次郎衆院議員。一部の世論調査では「次の総理にふさわしい人」で1位になるなど、総裁選に向けて好スタートを切りそうな状況だ。しかし、一方で政治家としては致命的な「調整力のなさ」が永田町では指摘されている。はたして、進次郎総理になって日本は大丈夫なのか。
小泉進次郎氏が4歳のときに撮った、父・純一郎氏、兄・孝太郎氏との3ショット
世論調査で際立つ“進次郎人気”
「進次郎の人気は圧倒的だ。彼の勢いに乗っかって、そのまま解散総選挙になだれ込み、衆院選を乗り切るしかない」
岸田文雄首相が退陣を決め、大乱立の混戦状態となっている自民党総裁選。慌ただしく永田町が動く中で、自民党関係者は臆せずにそう語った。
実際に報道各社の世論調査を見ても、小泉氏の人気の高さがうかがえる。
日経新聞が8月21、22日に行なった世論調査では、「次の自民党総裁にふさわしい人物」として小泉氏を挙げた人が23%で1位となり、自民党支持層に限ると32%にまで増えた。さらに、産経新聞の同様の調査でも小泉氏が22.4%を集めて首位、自民党支持層に限ると29.4%となった。
他社の世論調査では石破氏が1位となっているものもあるが、石破氏は自民党支持層に限ると支持率が低下する傾向にあり、これまで非主流派として歩み続けてきたことが仇となっている様子がうかがえる。
こうしたことから、永田町では小泉氏を自民党総裁選での本命候補と見る向きが強い。
その一方で、政治家としては致命的な「調整力のなさ」も指摘されている。事の発端となったのは、小泉進次郎氏が会長を務める「超党派ライドシェア勉強会」でのこと。
一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」。インバウンド(訪日外国人)を促進してきた菅義偉氏が、観光客による混雑緩和を目指して推し進めてきた政策だが、その具体的な内容を与野党で議論してもらうために、超党派の勉強会を小泉氏に任せた形だ。
永田町関係者は語る。
「菅氏はかねてから小泉氏を総理総裁候補として育てようとしており、与野党で合意形成を図る勉強会の会長をさせることで、政治家としての力をつけさせようとしたみたいだ」
だが、小泉氏はその勉強会の初会合を巡って大きなミスをしてしまった。
調整力不足を露呈した「事件」
昨年11月に開かれた初会合には、俳優の大泉洋氏の兄である、北海道の大泉潤函館市長など地方自治体の首長らも参加。高齢化や過疎化が進む地域でタクシードライバーがどんどん減っていき、地域住民の移動手段がどんどん脆弱になっている現状について聴取した。
じつはもともとこの初会合には、大阪府の吉村洋文知事も参加する予定だった。
大阪府といえば、揺れに揺れている大阪・関西万博が2025年4月から開催される予定だ。吉村知事は、万博を機に増えるであろう観光客や来場客に対応するため、ライドシェアの導入を強く要望している。
そこで日本維新の会の議員は勉強会を通してライドシェア解禁の機運を高め、さらには問題続出の万博のイメージアップを図ろうと、小泉氏に吉村知事の初会合参加を裏で働きかけた。それに対して小泉氏も、初会合が注目されるきっかけになるだろうと受け入れようとしていた。
しかし、これに維新以外の議員が猛反発。野党議員からは「万博や維新を前面に出す勉強会になってしまい、協力するのが難しくなる」という声が出たほか、与党議員からも「さまざまな問題が露呈している万博とセットにするのはイメージが悪い」という懸念が挙がった。
一時は、野党議員の一部が勉強会から離脱しようとする動きも出てしまい、結局、慌てた小泉氏による再調整によって吉村知事の参加は見送られた。
「ただのゲストだと軽く考えてしまったのかもしれないが、ちょっと非常識だよね。与野党にまたがった超党派で合意形成をする会合において、特定の政党を目立たせないようにすることや、各政党の意向をバランスよく聞いていくことは基本中の基本だ。小泉氏は菅氏に任された勉強会の序盤で、早くも政治家としての調整力不足を露呈してしまった」と永田町関係者は嘆く。
小泉氏といえば、安倍晋三政権と菅政権で環境大臣を務めたあと、まさに“調整力”を学ぶために、国会における野党との折衝を担当する国会対策委員会の副委員長を務めたことも話題となった。大臣経験者が国対副委員長というポジションに就くのは異例だったが、その背景には本人の希望もあったという。
しかし、野党議員は「いまだに調整力はまったく身についていない。ライドシェアについても、現在はタクシー会社が運行管理する限定解禁になっているが、その効果の実証も十分にできていないのに、全面解禁に向けて焦って進めようとしてしまう。まるで菅氏や維新の意向のみを受けて動いているみたいだ」とため息をつく。
「現状、自民党総裁選の本命は進次郎のようだが、本当に彼を総理大臣にしていいのか。選挙の顔としてはいいかもしれないが、総理大臣として十分に職責を果たすことができるのかと考えると、頭が痛くなってくるね」
対トランプにも「進次郎構文」で応酬?
そもそもこれまで務めてきた要職が少なく、経験不足が指摘されている小泉氏。知名度や人気によって自民党総裁選や衆院選を乗り越えることができたとしても、その後の政権運営まで勢い任せというわけにはいくまい。
一方、自民党関係者からは「彼のバックには菅氏がいる。菅氏は安倍政権で官房長官を長く務めるなど、調整力の塊のような存在だ。菅氏がうまく進次郎総理を操ることによって、政権運営は何とかなるだろう」と楽観的な声が上がるのも事実だが、菅氏による振り付けだけでは何とかならない部分も多いはずだ。
とくに、アメリカでは11月に大統領選があり、民主党のハリス副大統領が善戦しているものの、共和党のトランプ氏が再び大統領となる「トランプ・リスク」もいまだに残っている。トランプ氏といえば、多国間による話し合いを嫌い、個別のディールを重視して、相手国にプレッシャーをかけることでも有名だ。
外交では首相のほかに通訳しか間に介さない「テタテ」の交渉が発生する場合もある。
「そのトランプ氏に対して”進次郎構文”では、相手を一時的に混乱させることはできたとしても、太刀打ちできないよ」と永田町関係者は冗談混じりに話す。
「それ以前に、出馬会見で総理総裁として実現したいことを聞かれて『自民党総裁選に勝ったら、自民党総裁になりたいと思います』とか言ってしまうのではないか」(前同)
それでも永田町では進次郎総理誕生への機運は日に日に高まっている。
果たしてそれが本当に日本の国益になるのか。自民党総裁選で投票する自民党員ら、そして国民も改めて考える必要があるだろう。
取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班
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