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目黒のとんかつ店に感動…人の心に響く商品・サービスに共通する「3つに分ける」の極意

集英社オンライン / 2024年10月9日 11時30分

日頃、私たちが何気なく購入している商品・サービス。実は気づかないうちに「買いやすい」「楽しみやすい」ものを選んでいるケースがある。コクヨのワークライフスタイルコンサルタント・下地寛也さんの著書で生活の中におけるさまざまな「しにくい」を、「分ける技術」を使って「しやすい」に変えることを探った『「しやすい」の作りかた』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

【写真】石田三成が豊臣秀吉に気に入られるためにやったこと

先味、中味、後味の3段階に分ける

分け方を変えるだけで、人の心に響く商品やサービスになる。

飲食業を例に考えてみよう。

「分けて提供する」代表は、フランス料理のフルコースだ。

一般的には、前菜→スープ→パン→魚料理→ソルベ(シャーベット)→肉料理→フルーツ→デザートといった順番で出てくる。なんでこのタイミングでパンやソルベが出てくるのかと思うが、それぞれにきちんと意味がある。

パンはスープと魚料理の間の口直しとして、ソルベは魚料理と肉料理の間の口直しとして出てくる。

和食の懐石料理などもそうだが、コース料理は一品一品を出すタイミングを分けることで、客を楽しませる手法をとっているわけだ。

1、とんかつ名店の「先味」

では、「とんかつ」などの単品料理では、このような楽しみが味わえないかというと、そうではない。

大きめと小さめを分けて楽しめる

東京の目黒に、とんかつの名店がある。昭和初期に創業の老舗だ。お店はコの字形のカウンター席になっていて、その後ろに順番を待つ人が座る席がある。

待っている人は、普通であれば、先に来た人が順番にずれながら動いていくか、入口で名前を書いて呼ばれるのを待つところだが、この店ではそうはしない。

お客さんは入店すると、待合席の空いているところにランダムに座る。

初めて行くと「本当に順番通りに呼ばれるのだろうか」と不安になるが、じつは入店したお客さんの順番を完璧に覚えている店員さんがいて、間違わずに声をかけてくれるのだ。

私は初めて行ったときに、その様子を見て感動してしまった。「プロだ!」と。

この店は、あらゆる工程が分業になっている。先ほどのお客さんを順番に呼ぶ職人、とんかつを揚げる専門の職人、切る専門の職人、盛り付けてお客さんに出す職人などだ。

流れるようにとんかつが作られる様子に、まるでショーでも見ているかのような感覚を覚える。食べる前から「期待感」で一杯になるのだ。

2、とんかつ名店の「中味」

いよいよとんかつが出てくる。

すると、とんかつはタテだけでなくヨコにも切ってある。しかもそのヨコ向きの切り方がとんかつの真ん中ではなく、1:2くらいの比率でカットされている。

つまり、小さめのとんかつと大きめのとんかつを分けて楽しめるように考えられているわけだ。

味はというと、衣はサクッとしていて、肉はジューシーでじつに美味しい。この原稿を書きながら、今すぐにでも店に飛んでいきたくなる。

買う前、買う時、買った後で分ける 

3、とんかつ名店の「後味」

以前、私が行ったときは、食べ終わって店を出るときにサプライズがあった。帰り際(会計後)に「ブラックサンダー」というチョコレートをくれたのだ。

ちょっとしたことではあるが、粋な心配りで、また来ようという気になった。

この例でお伝えしたかったのは、サービスや商品には「先味」「中味」「後味」の3つがあって、プロはそれぞれの工程でお客さんを唸らせる仕掛けをしている、ということだ。

飲食店で言えば、店に入って食事が出てくるまでを「先味」、食事そのものが「中味」、食事が終わり店を出るまでが「後味」となる。

いいお店はこの3つの流れがしっかりと設計されていて、お客さんを最初から最後まで楽しませようという気づかいを感じる。

飲食業界に限らず、商品やサービスを提供する人であれば、お客さんが買う前にどんな感情を提供できるか、商品そのものでどんな体験を提供できるか、それを使ったあとにどんな気持ちにさせられるか、の3つに分けて考えることで、お客さんは待ち時間を含めて「楽しみやすい」し、結果、お店は「選ばれやすい」はずだ。

かの石田三成は豊臣秀吉に気に入られるために、一杯目のお茶はぬるめにして喉の渇きを癒し、二杯目は少し熱めにして落ち着いてもらい、三杯目は熱いお茶を少しだけ出して疲れを癒す、といった細かい配慮をしたという。

この話が史実かはわからないが、サービスを提供するときの「分け方」の参考になるだろう。

文/下地寛也

コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント エスケイブレイン代表1969年神戸市生まれ。1992年文房具・オフィス家具メーカーのコクヨに入社。5年後、コクヨがフリーアドレスを導入したことをきっかけに「働き方とオフィスのあり方」を提案する業務に従事し、ワークスタイルを調査、研究する面白さに取りつかれる。

顧客向け研修サービス、働き方改革コンサルティングサービスの企画など数多くのプロジェクトマネジメント業務に従事。未来の働き方を研究するワークスタイル研究所の所長などを経て、現在はコーポレートコミュニケーション室の室長としてコクヨグループのブランド戦略や組織風土改革の推進に取り組んでいる。

著書に『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの語彙力』(KADOKAWA)、『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』(三笠書房)などがある。

写真/shutterstock 

「しやすい」の作り方

下地寛也
「しやすい」の作り方
2024年9月20日
1540円(税込)
ISBN: 978-4763141682
ありそうでなかった 「しにくい」を「しやすい」に変える技術 わかりにくい説明、使いにくい道具、 見にくいデザイン、読みにくい文章、 住みにくい部屋、片づけにくいモノ――。 生活の中にはたくさんの 「しにくい」が溢れています。 こんな「しにくい」ものに触れたときは ちょっとイライラしたり、 ちょっとストレスを感じたりするもの。 説明書がわかりにくかったり、 バーガーが大きすぎて食べにくかったり、 イベントの席がぎゅうぎゅうで座りにくかったり。 一方、仕事上で自分が「しにくい」を 作り出してしまっているときは、 どうすればこれを改善できるだろう? と悩むものです。 お客さんや上司に 「使いにくい」「読みにくい」 などと思われているのなら、 改善しないとなりません。 本書は、たったひとつの技術を使って、 「しにくい」を「しやすい」に 変えるための本です。 そのときに役立つのが「分ける技術」。 野球場のプレイゾーンと外野スタンドが 分かれているのは、一目でホームランと 「わかりやすい」ため。 ピザのMサイズが8等分されているのは 「食べやすい」「みんなで分けやすい」ため。 高級スーパーの駐車場スペースが大きいのは 高級車で買い物に「寄りやすい」ため。 会社が様々な部署に分かれているのは 仕事の役割が「わかりやすい」ため。 著者・下地氏が勤めるコクヨの 「キャンパスノート」が大ヒットを 続ける大きな理由のひとつは、 絶妙な行数に分けることで ユーザーに「書きやすい」と 感じてもらっているためです。 このような上手に分ける技術を使って、 暮らしも、仕事もストレスを感じずに 「滑らか」にすることが本書の目的です。 ありそうでなかった 「しにくい」を解決する本。 読んでるそばから、 新しいアイデアが思いつくはずです!

デアゴスティーニが高額なのに売れる理由…買いにくい商品を「買いやすい」に変えるたったひとつのコツ〉へ続く

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