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子どもを授かったゲイ夫夫(ふうふ)が「親のエゴだろ」「子どもがグレそう」との心ない批判に思うこと。将来、娘に「なんでうちにはお母さんがいないの?」って聞かれたら…【2024 社会問題記事 2位】

集英社オンライン / 2024年12月23日 11時0分

「活動自体が犯罪」「こんな娘に育って親がかわいそう」SNSで強烈なバッシングを受けながらも、医大生が実名顔出しでHPVワクチンの情報発信をする理由【2024 社会問題記事 1位】〉から続く

2024年度(1月~12月)に反響の大きかった社会問題記事ベスト5をお届けする。第2位は、同性で結婚式を挙げ、子どもを育てる家族をインタビューした記事だった(初公開日:2024年7月28日)。千葉県で小児科の看護師として働くハヤトさん(35)と精神科の訪問看護師として働くタカフミさん(36)は、2018年に結婚式を挙げ、養子縁組をしている夫夫(ふうふ)である。2人は現在、娘のなーちゃん(1)と家族3人で暮らしている。インタビュー後編では、子どもを授かるに至った経緯や同性カップルならではの苦悩について聞いてみた。

ハヤトさんとタカフミさんが行なった結婚式の写真

子どもを授かることに対する周囲の反応

––––子どもを授かることになったきっかけは?

ハヤトさん たまたまSNSで海外のゲイファーザーたちの写真を見ていたときに、「海外ではゲイでも子育てできるんだ」って思ったんです。「日本でもできるかな?」って彼に相談したら、「実は、僕も子どもを育てたいんだよね」って言われたんです。

それで、ブログに「いつか日本で子どもを育てられたらな」と投稿をしたら、3組のレズビアンカップルから「協力して授かりませんか」というお話をいただいたのが始まりでした。

––––子どもを授かるまでの準備期間はどれくらいでした?

ハヤトさん 6年〜7年くらいかかりましたね。お話をいただいた3組の中から1番意見が合ったカップルと半年以上かけて価値観をすり合わせました。すごく細かいところまで話し合い、司法書士さんを間に入れて合意書を作りました。今はそれぞれの家庭に子どもがいる状態です。

––––今でも向こうの家族と会うことはありますか?

ハヤトさん 定期的に会ったり、プレゼントを送り合ったりしています。僕たちは、なーちゃんが生みの親や出自を知る権利を1番大事にしていたので、“なーちゃんが大きくなってからも会ってくれる人”が条件でした。

 ––––子どもを授かることに対して、親御さんは反対していましたか?

ハヤトさん 「母親のいない子どもは不幸になるからやめなさい」って母に大反対され、それがきっかけで絶縁した期間がありました。でも、なーちゃんが産まれたときに写真を送ったら、一気に変わりましたね。それからはかわいがってくれています。

タカフミさん  僕の親も「子どもがいじめられたり、苦労したりするんじゃないか」という理由で反対していました。でも、娘が産まれたら、母が最初の2ヶ月間、育児を手伝いに広島から来てくれました。

––––子どもが生まれてからの手続きは大変でしたか?

ハヤトさん 大変でしたね。僕らも司法書士さんもみんな手探りの状態で、いろいろ調べながら手続きしました。何度も市役所に足を運んで事情を説明し、手続きが全部終わったのは娘が生後2ヶ月くらいのころでした。男女の夫婦が1回で終わることを、自分たちは複数回しなきゃいけないことがけっこうありましたね。

あとタカフミには親権がないので、何かあったときのために、僕とタカフミは養子縁組を結んでいるんです。なーちゃんが生まれる前に、僕が元の籍を抜けてタカフミと同じ苗字になりました。戸籍上、タカフミは僕の親で、なぁちゃんの祖父になります。

––––育休は取りましたか?

ハヤトさん 親権が僕にしかないので、タカフミは育休を取れなかったんです。だから、僕は育休を取り、彼には仕事を辞めてもらって、なーちゃんが保育園に通い始めるまでは専業主夫をしてもらっていました。

タカフミさん 今年4月になーちゃんが保育園に通い始めたのですが、それからは週に3回パートで精神科の訪問看護をしています。

SNSで「子どもがグレそう」「親のエゴだろ」という声が届くことも

––––ご家庭の事情を、保育園ではオープンにしていますか?

ハヤトさん はい。保育園にも市役所にも、「うちはパパ2人です」って言っています。保育園の先生たちには、タカフミは「パパ」、僕は「父」と呼び方を統一してもらっています。「今日はパパがお迎えに行きます」「今日は父がお迎えに行きます」といった具合ですね。

直接会った人に何か言われることはあまりないのですが、SNSでは「子どもがグレそう」とか「親のエゴだろ」とか言われますね。

––––そういうコメントに対してどう思いますか?

ハヤトさん 最初はショックでした。でも、今では「顔も見たことない人に言われたところで、自分たちが傷つくのは時間の無駄だな」と思うようになりました。

僕たちの子どもは不幸になるって言われることもあるんですけど、僕は小児科の看護師として働いているので、必ずしも「パパとママがいる家庭=幸せな家庭」ではないということを理解しています。

なかには、パパもママもいるのに虐待されてしまい悲惨な状況にあるなど、すごくかわいそうな子も見てきました。個人的には、愛情をかけられなかった子どもが不幸になってしまうのではないかと思っています。

タカフミさん 僕も精神科の訪問看護で働いて、いろんな家庭を見てきました。その体験から「家族の形=幸せの正解」にはならないと実感しているので、そういう言葉は気にならなくなりました。

––––子育てをするうえで、今後心配なことはありますか?

タカフミさん 娘がもう少し大きくなったら「何でうちにはお母さんがいないの?」って聞いてくると思います。そのときどう答えるかは、娘が生まれる前から2人でけっこう話し合っています。そこを変に隠してしまうと、娘が「自分は悪いことをしているんじゃないか」と思ってしまうかもしれない。それが嫌なので、いろんな家庭があるんだよというのを隠さずに伝えていこうと思っています。

ハヤトさん 今は家族の形をテーマにした絵本がいっぱいあるので、それを数冊準備しています。パパとママと暮らしている人もいれば、おじいちゃんとおばあちゃんと住んでいる人もいるし、シングルファザー/シングルマザーの家庭もあれば、自分たちみたいにゲイファミリーもいる。小さいうちから、いろんな家族の形があるということを教えていきたいですね。

「誰かのためではなく、自分の人生を生きてほしい」 

––––今の日本の制度に対して、何か思うことはありますか?

タカフミさん 同性カップルにも、男女カップルと同等の権利を認めてほしいと思っています。

ハヤトさん 2人で住む家を探していたとき、不動産屋で「男同士だとオレオレ詐欺とか、犯罪の拠点にされる可能性があるから貸せません」って言われたことがありました。そういった契約をするときに、生きづらさを感じます。

「自分たちもほかの人と同じように働いて、納税して、普通に生きているだけなのに、何で同性カップルっていうだけで、こんなにも違うんだろう」と感じるので、同性婚を認めてほしいです。

––––同じような立場の方から相談を受けることはありますか?

ハヤトさん 将来的に子どもが欲しいゲイカップルやトランスジェンダーの方からDMで相談を受けることがあります。

タカフミさん 最近は、子どもが欲しいゲイカップルもかなり多くなってきていますね。

ハヤトさん その方々の話を聞いていると、ゲイだから子どもをあきらめなきゃいけないとか、同性カップルだから結婚できないと思い込んでいる人が多いなと感じます。「ゲイだからあきらめなきゃいけない、ということはないんだよ」と発信していきたいです。

––––そういった悩みを持った方に何を伝えたいですか?

ハヤトさん LGBTQの方の中には、誰にも悩みを打ち明けられない方も多いと思うんです。結婚や子どもを授かることに対して、男女カップルでは祝福されるのに、ゲイだからネガティブなイメージを持たれたり、黙っていなきゃいけないと感じたりする方も多いでしょう。カミングアウトが正義だとは思いませんが、カミングアウトによって変わる人生もあるので、誰かのためではなく、自分の人生を生きてほしいです。

––––今後の活動において、何か目標はありますか?

ハヤトさん 最近、LGBTQの結婚相談所を2人で始めたので、ご縁を結んで家族を作るお手伝いをしていきたいです。

タカフミさん LGBTQに対するネガティブなイメージを払拭していきたいです。ゲイだからかわいそうとか、ゲイだから子どもができないとか、そういったイメージを変えていきたいと思っています。

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