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〈兵庫県庁、2人目の自死を公表〉「弔慰金集めを“牛タン倶楽部”が妨害」なぜ阪神・オリックス優勝パレード担当課長の死は徹底隠蔽されたのか?【2024 政治記事 4位】

集英社オンライン / 2024年12月24日 8時0分

「森山幹事長続投」に自民党内は大反発…瀕死の石破政権、後任に浮上した「まさかの名前」【2024 政治記事 3位】〉から続く

2024年度(1月~12月)に反響の大きかった政治記事ベスト5をお届けする。第4位は、今なお混乱が続く兵庫県政に関する記事だった(初公開日:2024年7月26日)。大阪府と兵庫県が昨年11月に行った阪神・オリックスの優勝パレード。兵庫県でその実施準備の中核となった50代の県課長・Bさんが今年4月に自死した。県は7月23日、死去から約3ヶ月経ってようやくその事実を県職員たちに明らかにした。それまでBさんの死は隠蔽を徹底するよう同僚にも圧力がかけられ、それは兵庫県中枢の一連の疑惑の“本丸”といえる問題に直結するからだと関係者は話す。

〈泣きじゃくった会見も…〉知事と側近・牛タン倶楽部の面々の写真とAさんが3月に作成した告発文書。7月19日に兵庫県議会百条委で一部黒塗りで公開された

A局長の告発文書の中身

兵庫県の斎藤元彦知事の体制下では、知事と“牛タン倶楽部”と陰で呼ばれる側近グループの違法行為疑惑を7つ挙げた告発文書を3月にメディアなどに送った元西播磨県民局長Aさん(60)が7月7日に自死している。

知事と牛タン倶楽部はこの告発文書の内容を「嘘八百」と断じ、公益通報者保護法で守られるべきAさんを不満分子扱いして懲戒処分するなど、徹底的に弾圧していた。(♯4

このAさんが告発文書の6番目に書いたのが「優勝パレードの陰で」と題した問題だ。

「令和5年11月23日実施のプロ野球阪神・オリックスの優勝パレードは県費をかけないという方針の下で実施することとなり、必要経費についてクラウドファンディングや企業から寄附を募ったが、結果は必要額を大きく下回った。

そこで、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った。幹事社は〇〇信用金庫。具体の司令塔は片山副知事、実行者は産業労働部地域経済課。その他、××バスなどからも便宜供与の見返りとしての寄附集めをした」(※伏字は原文では実名)

事実なら県補助金の違法支出や公金横領になる重い内容だが、この資金集めを担当したのがBさんだった。告発文書は続ける。

「パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症し、現在、病気療養中」

文書が指摘する信用金庫への県補助金というのは、県の令和5年度12月補正予算で4億円が計上された「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」だ。

金融機関から無利子・無保証融資(ゼロゼロ融資)を受けた4300の中小事業者に7万5000円~10万円を支援する内容で、県は金融機関に補助金を出す形になる。

“号泣辞職”の元副知事が増額を指示か 

この問題に注目してきた丸尾牧県議は「所管の地域産業経済課によれば、昨年10月ごろに、事業者への伴走支援を実施する金融機関への補助の継続を決めています」と話す。

丸尾県議が情報公開請求で開示を受けた優勝パレードの「協賛企業一覧」には関西を代表する有力企業を筆頭に、112社の名が並ぶ。

寄付金額は公表されていないが、金額の規模によって企業は4ランクに分けられ、上から3番目の「シルバー」には、告発文書で「幹事社」と指摘された信用金庫を含む兵庫県内の金融機関が名を連ねている。

問題の支援事業で補助を受ける金融機関も調べた丸尾県議は「補助対象の20社の中で12社が優勝パレードで寄付をしている形です」と話す。

疑惑のスキームの「司令塔」と名指しされた片山副知事は7月末に退任すると発表し、7月12日に記者会見を開いた。

その場で「阪神・オリックスの優勝パレードについてですが、必要経費について、企業からの寄付を募ることとなり、信用金庫への依頼は私が行いましたが、県補助金をキックバックするようにと言及したことはありません。あくまでも依頼を行ったものです。信用金庫への補助金は前期比50%減少となっています」と主張した。

最後の「50%」のくだりは、前年より補助金が減っているのだからパレードを念頭に多く支出したのではない証左だと強調する意図だろう。

確かに前期の令和4年12月の補正予算では同じ名称の事業費額は8億円で、昨年度は半減している。

だが、県関係者によると、状況は全く違う。

「実は担当の地域経済課はこの事業の額を1億円で計上していました。県内の資金需要などを計算して積み上げた結果、令和5年度に必要だと算出したのがこの額です。ところが片山副知事が『これじゃ足りん。4億にせえ』と口をはさみ、その額にせざるを得なくなったのです」

片山知事はなぜ4億という数字を挙げたのか。

「まったく分かりませんが、去年8億だったからその半分くらいはとかなんとか、めちゃくちゃな理由でした。

最初の1億は細かな積み上げを基に出した数字だったのに4億なんて根拠も何もない。結局、片山副知事から指示が出た4日後に斎藤知事への説明がありましたがその時も積算根拠を説明できなかった。

『ここには今1億円と書いてありますが、これから変わるかもしれません』という程度の説明をして、それが通ってしまったんです。それが去年の11月14日の出来事です」(同関係者)

 こうして作られた資金が信用金庫に流れ込み、それを原資にパレードの寄付が実際に行われていたとなれば完全な犯罪スキームだ。そこに県の業務として携わったBさんが自死をしているわけである。

当然、労災である「公務災害」の可能性を探る必要が出てくるが、それが行われればBさんがどのような仕事をしていたのかが明らかになる。そこで県当局は、Bさんが亡くなったこと自体を認めない行動に出る。

牛タン倶楽部が何度も却下

「兵庫県庁には現職中に不幸にして亡くなった職員が出た場合、公務災害認定などによる遺族への補償金支払いなどと別に、同僚が弔慰金を集める伝統があります。まったくの自主的な動きで『遺児育英資金』と呼ばれています。

当然、職場の中核の一人だったBさんの急逝は隠しても隠しきれず、皆が知るところになりました。しかし、彼のご遺族に遺児育英資金を送ろうという行動が起きなかったのです」

そう語る県OBはこう続ける。
 
「彼の同僚らはもちろん集めようと声を上げました。ところが“上”がこれをつぶしにかかりました。それも一度ではない。同僚たちは複数回、育英資金集めを始めてほしいと掛け合っています」

この県OBは、弔慰金集めをつぶした幹部の名を挙げるのをためらった。

「課長級の人間の弔慰金集めを止められるのはメインのラインの人間しかいない」と答えたのに対し、記者が“牛タン倶楽部”に属する幹部か、とさらにたずねると「そう理解していい」と答えるのだった。

さらに別の県関係者は「Aさんが告発した7つの疑惑のうち、パレードに絡む問題は“本丸”、最もヤバい事案でしょう。中心となって携わったBさんの死亡の背景に関心が向くことをどうしても避けたいという考えが働いたのではないでしょうかね」と話す。

しかし一連の疑惑が拡大し、県政中枢部への批判が日を追って強まるなか、結局、Bさんの死も隠しきれなくなる。

7月17日、県議会総務常任委員会で竹内英明県議が「遺児育英資金が今もって行われていないのか。(Bさんの上司の)県民生活部長は『やらねばならない』という思いが強いのに、それを止めた人間がいるんだという話が私に届きました」と質問した。

この時、牛タン倶楽部の一員の小橋浩一理事は「守るべきは今のご家族のプライバシー。いろいろなアクションがないようにするのが我々の務めですから」と答弁。

遺児育英資金を集める動きについてだけでなく、Bさんが亡くなったかどうかすら公式に認めない従来の姿勢を維持した。

「この映像が直後からSNSで出回り、県庁に抗議電話が殺到しました。さらに小橋理事が答弁で、かつての直属の部下が亡くなったことを半ば認めるような発言をしたこともあり、県は対応を変えざるを得なくなったようです。7月23日午後、県は職員だけが見られるイントラネットでBさんの死を明らかにしました」(県関係者)

翌7月24日、記者会見でなぜ3ヶ月間もBさんの死を伏せたのかと問われた斎藤知事は「遺族の意向」だったと答えた。

ではなぜ明らかにしたのか。県人事課は、7月23日の昼過ぎにBさんの遺族代理人を名乗る弁護士が地元メディアに、遺族への直接取材を控えるよう求める書面を送ったことを挙げ、「そうした文書を出すことになったので県職員へ(情報を)出してもらっても構わないと(遺族から)連絡を受けました」と説明している。

「Bさんの遺族には牛タン倶楽部のラインの県中堅幹部が専任で対応をしており、同僚の弔問も管理されている状況です。しかし、公務が原因と疑われる死を認めた以上、ご遺族が公務災害認定の申請をしないことはあり得ないでしょう」と県関係者は話す。

Bさんの父親は息子の死について「こんなことになって残念だけど、私は事情を知らないんです。息子は実家に帰ってきても仕事の話はしませんでしたし、県からも説明はないです」と淡々と話した。Bさんの死の背景に何があったのか、解明は実現するだろうか。

 ※「集英社オンライン」では、今回の問題について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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