歯周病が心筋梗塞や脳卒中の原因に? 現役歯科医が断言する口中の健康と健康寿命の密接な関係
集英社オンライン / 2024年12月31日 10時0分
〈日本でインプラント治療が多い本当の理由「1本50万もする自由診療の背景には…」〉から続く
スウェーデンで「世界標準のオーラルケア」を学んだ前田一義先生いわく、「むし歯や歯周病を放置することで、全身の病気にかかるリスクも高まる」ことが近年の調査で明らかになったそうだ。
【画像】歯周病が原因で、糖尿病、脳梗塞、アルツハイマー、インフルエンザにも
その調査の詳報を『歯を磨いても むし歯は防げない』より一部抜粋、再編集してお届けする。
むし歯や歯周病は全身病のもと
日頃からむし歯や歯周病にならない生活を送ることで、ほかの病気になるリスクも減らせます。
日本では「むし歯で痛くなってから治してもらえばいい」と軽く考えがちですが、むし歯や歯周病を放置することで、全身の病気にかかるリスクも高まるのです。
とくに歯周病については、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、アルツハイマー、肺炎、インフルエンザなど、さまざまな病気と関係があることがわかっています。歯周病の罹患者は、糖尿病や心筋梗塞の発症率が数倍高いというデータもあります。
歯周病は、歯周病菌によって歯肉に炎症が起こり、歯根膜、歯槽骨、セメント質といった歯の周りの組織がなくなっていく病気です。その結果、最後は歯を支えきれなくなり、歯が抜け落ちるのです。
そして歯周病菌は、口の中にとどまらず、血管を通じて体中に広がり、体のあちこちに悪影響を及ぼすのです。
血管自体にも作用するので、動脈硬化も起こしやすくなります。また糖尿病患者の場合、歯周病が重度になると血糖値の管理が難しくなります。逆に歯周病が改善することで、血糖値も改善するという報告もあります。
そのため近年は、日本の病院でも患者に対して、歯周病を意識した治療をするようになっています。たとえば大きな手術をするとき、歯科医院で歯周病のチェックをしてもらうのは当たり前になっています。
歯周病菌が、血管を通じて手術する部位に悪影響を及ぼす危険があるからです。
またむし歯や歯周病で歯を失えば、それによる弊害もあります。たとえば残された歯の本数と認知症には、相関関係があるとされます。残された歯の本数と転倒しやすさも、関係性が指摘されています。歯が抜けることで体のバランスが取りにくくなり、つい転んでしまうケースが増えるのかもしれません。
お年寄りの転倒は、骨折にもつながりやすくなります。足を骨折して、そのまま歩けなくなってしまう人も少なくありません。
さらにいえば、むし歯や歯周病が悪化することで、メンタル面への悪影響もあります。
むし歯や歯周病が悪化すれば、本人は歯の痛みに苦しみます。
痛みによって不機嫌になったり、見た目が悪く人前で笑えなくなったり、無口になったりすれば、周りから疎まれることにもなりかねません。心身共に健康的な生活を送るうえで大きな障害にもなるのです。
見方を変えれば、口の中の健康が、健康寿命を延ばすのです。
歯周病と心筋梗塞・脳卒中の関係
前項では口の中の細菌(歯周病菌)が全身の病気と関連していることをお伝えしました。
なかでも命に関わる怖い病気が、心筋梗塞や脳卒中といった血管の病気です。
血管が硬くなったり、詰まってしまうことを動脈硬化といいますが、この動脈硬化に歯周病菌が影響を及ぼしているといわれています。
動脈硬化が進むと、心臓に大きな負担がかかり、狭心症、心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞、脳出血)のリスクが上がります。
心筋梗塞は心臓周辺の血管が詰まったため、脳卒中は脳内の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)するために起こります。
心筋梗塞や脳卒中が恐ろしいのは、ある日突然やってくることです。いったん心筋梗塞や脳卒中になると、病院に運ばれても回復せず、そのまま死亡することもあります。あるいは命が助かっても、重い後遺症に苦しむこともあります。
そんな心筋梗塞や脳卒中の原因の一つが、歯周病なのです。口の中の歯周病菌が全身の血液内に流れ込み、血液をドロドロにしたり、血管を脆くさせたりするからです。
心筋梗塞や脳卒中の原因は、いずれも血液がドロドロになったり、血管が脆くなることです。血液がドロドロになると血管が詰まりやすく、心臓周辺の血管に栄養が行き届かなくなります。
そのため心臓周辺の筋肉が壊死を始め、これが心筋梗塞になります。また脳内の血管が詰まると脳梗塞に、血管が破れると脳出血になります。もともと心臓周辺や脳内の血管には複雑なカーブが多く、このカーブ部分の血管が詰まったり、破れたりするのです。
歯周病菌は、この血液のドロドロ化を加速させます。しかも歯周病菌からは血管を脆くする炎症性物質も出ています。この炎症性物質は、わずか数分で全身の毛細血管まで行き渡ります。
歯周病が心筋梗塞や脳卒中を招きやすいことについては、すでにいろいろな報告もあります。
たとえば歯周病の人は、健康な人と比べて心筋梗塞のリスクが2倍に増えることがわかっています。同様に、健康な人の2.8倍、脳梗塞になりやすいといわれています。
2021年に発表された研究では、歯周病治療が血管内皮機能を改善し、炎症マーカーを低下させる可能性が示唆されています。
文/前田一義 写真/Shutterstock
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