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「近い将来、タイやベトナムにも抜かれる」日本の1人あたりGDPが過去最低順位に…今や『“超”経済低迷国家』となった諸悪の根源とは

集英社オンライン / 2024年12月30日 10時0分

内閣府が今年12月23日、日本のドル建て1人あたり名目国内総生産(GDP)が、2023年は3万3849ドルとの試算を公表した。この数字は、2年連続でOECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中22番目で、21番目の韓国を2年連続下回る結果に…。そして22番という順位は、比較可能な1980年以降、最も低い順位となった。

【図を見る】日本がダントツ世界最低!1997年以降の名目GDP成長率

日本は「唯一無二の“超”経済低迷国家」

実際、この数値が意味するものとは何なのか。そして背景にはどのような原因が潜んでいるのだろうか。

第二次安倍内閣時に内閣官房参与を務めた京都大学大学院(都市社会工学専攻)の藤井聡教授に話を伺った。

まずは今回、韓国より下回ったGDPの数値をどう受け止めているのか。

「40代以上の日本人にとってみれば、かつて隣国の韓国は日本よりも圧倒的に貧しい後進国でした。しかし、それも昔の話。数年前から大卒初任給の水準は韓国に追い抜かれており、日本経済が低迷し続けている今日、1人あたりのGDPが韓国に抜かれるのは時間の問題でした。だから『ついにそのときが来た』という印象です」(藤井教授、以下同)

とはいえ、この結果がどれほど危機感を覚えるべきことなのか、ピンとこないのが正直なところ…。この数値が意味するものとはいったい何なのか。

「日本は過去25年以上、全く成長せず、平均賃金がなかなか伸びないどころか、むしろ徐々に下落してきている。それを当たり前のように感じている国民が多いですが、こんなに低迷しているのは世界広しといえど我が国一国だけなのです。

5%に引き上げられた1997年以降の経済成長率は、ダントツの最下位を記録しています。日本の1997年以降の平均経済成長率はわずか0.3%。これは10年経っても3%しか成長しないという恐るべき低水準なんです。

対して世界全体は年平均で4.7%、10年で1.51倍に拡大するスピード感で成長を続けています。日本に次ぐ『成長率ワースト2位』のギリシャですら、年平均2.1%、10年で21%も成長しています。一方で韓国の平均成長率は5%強、これは世界平均より幾分高い程度で、とりたてて韓国が『超絶な成長国家』でもないわけです。

結論、韓国に追い抜かれたのは日本が『唯一無二の“超”経済低迷国家』であることの必然的帰結であり、いかに経済成長できていないかということを、実感をもって理解すべきなのです」

きっかけは1997年の消費増税

『唯一無二の“超”経済低迷国家』といわれた日本だが、これを招いた原因は何なのか。

藤井教授はズバリ「政府の怠慢です」と断言するが、その背景にはマクロ経済学の観点から3つの段階に分かれるという。

まず1つ目が「市場の均衡」の変化。

「経済成長とは、国家全体の『需要』が『供給』を上回ることでもたらされます。『需要』が多ければ、各産業で『作ったもの/サービス』が基本的にすべて売れることになり、そうすると必然的に『売上』が拡大し、『賃金』が上昇、それと同時に物価が上昇します。そして賃金が上がれば、国民・企業の消費や投資が拡大します。

つまり、需要が供給を上回る限り、『需要の拡大→賃金上昇→さらなる需要の拡大』というプロセスと『需要の拡大→供給拡大』というプロセスが並行して進行し、経済は成長していきます」

そして2つ目に需要不足による「デフレ政策」。

「一方、需要が供給を下回っていれば、以上に述べたプロセスと完全に逆のプロセスが進行することになります。『需要不足→売れ残りの発生→売上の低迷&物価下落→賃金下落→さらなる需要不足』という循環です。こうして経済は衰退していくわけですが、日本は1997年以降、このようなデフレに突入してしまいました」

そして3つ目は賃金上昇率を上回る「消費増税」。

「日本はGDPのグラフで見ても、消費税を増税した1997年以降、『経済成長』から『経済低迷』へと大転換しています。1997年に需要不足が生じたのは、消費税が3%から5%へと引き上げられたからです。厳密にいえば、バブル崩壊で成長率がきわめて低調な状況の中、わずか年率『1%強』しかなかった賃金上昇率をはるかに上回る『2%』もの水準で消費税が引き上げられてしまい、需要不足によるデフレ不況に陥ったのです」

つまり、25年以上にわたる日本の経済低迷は、1997年に当時の賃金上昇率を上回る水準で、消費税を引き上げたことに起因するという。実際、消費推移は消費税8%、10%と引き上げた際のいずれも激しく落ち込んでおり、消費を激しく冷え込ませるインパクトを与えている。

本質的原因は…

2024年も景気の悪さばかりが目立った日本だが、2025年には日本経済が上向きになるための打開策はあるのだろうか。

「日本の経済低迷の直接的原因は消費増税ですが、本質的原因は『国債発行規律』という緊縮的な財政規律にあります。いずれの消費増税も、この規律を実現するがためになされたものです。

例えば、国民民主党が主張する103万円の年収の壁を178万円に引き上げる案は、国や地方で7~8兆円の減収を導くとされていますが、2000年代初頭に民主党政権で導入された『プライマリーバランス黒字化目標(PB規律)』という、国債発行額を『ゼロ』にすることを企図した財政規律が今も日本の財政を縛り付けているのですが、これが撤廃されずに存在し続けている限り、7~8兆円のPB赤字の拡大分を埋め合わせるための支出カットおよび増税が行なわれることになります。つまり全く実質的な減税がなされないことになる。

コロナで給付金を配ったとしても、結局そのための予算カットや増税が行なわれる…。日本はこのようなことを四半世紀以上にわたって続けてきており、これこそが日本が低迷し続ける最大の根本的要因なんです。

つまり石破政権がPB規律の旗を降ろさない限り、日本が成長することは万に一つもないのです。もしも日本が本当に成長したいというなら、PB規律の一時凍結か、諸外国と同様の規律に緩和することが必要不可欠です。それができない限り、韓国どころか、近い将来タイやベトナムにも追い抜かれることとなるでしょう」

日本経済の停滞を招いたとされる消費増税とPB規律。果たして石破政権と国民民主党・玉木代表はどう動くのか。

2024年の冬の賞与が4年連続増加の見通しとなるなど明るい兆しも見えてきた。まだまだ課題は山積みの日本だが、2025年は少しでも経済が上向く年となってほしい。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部

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