〈岸田前首相襲撃〉“空気みたい”だった無職男の初公判「殺意はありません」「選挙やってると知らなかった」と主張…でもSNSでは政治批判だらけ
集英社オンライン / 2025年2月5日 7時0分
和歌山市の漁港で2023年4月、選挙演説に訪れた岸田文雄首相(当時)らに向かって爆発物を投げ込んだなどとして殺人未遂や公職選挙法違反など5つの罪に問われた木村隆二被告(25)の裁判員裁判が2月4日から和歌山地裁(福島恵子裁判長)で始まった。
【画像】引きこもりがちだった木村容疑者の学生時代の写真、Twitterでは岸田前首相に関するカキコミも
「2人にけがをさせたことは認めるが、殺意はなかった」
木村被告は罪状認否で「殺意はありませんでした」と殺人未遂罪を否認、公選法違反についても「選挙をやっているとは知らなかった」と争う姿勢を見せた。
黒色火薬を製造・所持していた火薬類取締法違反と包丁1本を所持していた銃刀法違反については罪を認めたが、爆発物の製造・所持・使用したとして問われた爆発物取締罰則違反については「人をけがさせる目的はなかった」と起訴事実を否認した。
起訴状によると木村被告は2022年11月以降、兵庫県川西市の自宅などで黒色火薬を詰めた爆発物2個を製造。
2023年4月15日に和歌山市の雑賀崎漁港で行われた衆院和歌山1区補欠選挙の応援演説に来ていた岸田氏のそばに爆発物を投げ込み、聴衆と警察官の計2人に全治1~2週間のけがを負わせた。
初公判で弁護側は「2人にけがをさせたことは認めるが、殺意はなかった」と木村被告の罪が傷害罪にとどまると主張した。
威力業務妨害の現行犯で逮捕されて以降、一貫して黙秘を続けてきた木村被告。小学校時代は活発で「将来はパティシエか発明家になりたい」「車屋の社長になる」などと夢見る人気者だったが、中学では孤立して図書室にこもりがちな「空気」のような存在に転じ、大人になってからは定職にも就かず、母親とガーデニングに勤しむ物静かな青年だった。
犯行当時、川西市の自宅の近隣住民もこう証言していた。
「木村さんご一家はもともと近所の県営住宅に住んでいて、15年ほど前にこちらに引っ越して来られました。当時はご両親と隆二さんと年子のお兄さん、それとお姉さんの5人家族だったんですけど、7年くらい前からお父さんを見なくなりました。お父さんは宅配の仕事をしていたのですが、大声で怒鳴る声がよく聞こえてきて、怒りっぽくて怖い印象でした」(近隣住民)
父親が突然いなくなったことについては、別の住民もこう証言していた。
「木村さん宅のガレージには乗用車が2台あって、夕方にお父さんが出かけて1台になり、朝方帰ってきて2台になっているというパターンでした。ところが5、6年前からずっと1台だけになり、そのころからお父さんを見かけなくなりました。
同時期に、お母さんもラフな格好ながら、きちんと化粧をして外出するようになったので働き始めたのだと思います。隆二君はほんとに大人しくて、優しそうな感じの子です。いつもお母さんと一緒でニコニコ笑っていて、車で買い物にもよく出かけています。
(事件の)2〜3週間前にも2人でガーデニングしているところを見ましたよ。逆にお父さんといるところはほとんど見たことがなくて、隆二君が高校生の時にガレージでお父さんに『グズグズするな』と怒鳴りつけられていたことがあったくらいですね」
被選挙権に満たない年齢で立候補できないことが不服
陰キャのニート青年はしかし、政治の世界に活路を見出そうと突飛な行動に出た。被選挙権に満たない年齢で立候補できないことを不服として法廷闘争を始めたのだ。
「木村被告は自身が23歳で被選挙権のある30歳に達しておらず、供託金300万円も用意できなかったことが理由で参院選に立候補ができなかったことについて、『法の下の平等などを定めた憲法に違反する』として2022年6月、国に10万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。
同11月に1審で請求が棄却されると『全部不服』として控訴したものの、2023年3月23日に大阪高裁で第1回口頭弁論が開かれた控訴審は、即日結審しました。型通りの門前払いですが、木村被告は悔しかったんでしょうね。
同日、自身のTwitter(現X)に『本日の口頭弁論では審議不足を指摘した控訴人に対し、審議を拒否し。いきなりの結審でした。大阪高裁の無法振りが露呈しました』(原文ママ)と投稿していました」(社会部記者)
木村被告はこれ以外にもTwitterに、銃撃で死亡した安倍晋三元首相の国葬を決定した岸田氏や、世襲政治について批判の投稿を繰り返していた。そして、事件前の最後の投稿は2023年4月11日、こんな内容だった。
<憲法違反の選挙供託金・成人年齢以上の被選挙権年齢による、被選挙権侵害が現実問題として存在しています。普通の国民が立候補出来ない現状の制限選挙下では、普通ではない世襲と、政党の言いなりの犬しか立候補出来ません。まともな候補者がいなければ、投票数が減ります。>
そして4日後、若者は自宅から120キロ離れた和歌山の漁港で手製の爆弾を「最高権力者」に投げつけた。検察側は冒頭陳述でこう主張した。
「雑賀崎漁港までの経路や警備について検索していた。自宅を出る前には検索履歴が記録されたハードディスクなどを屋根裏に置いてから会場に向かい、岸田前総理大臣らに向かって爆発物を投げた」
弁護側はこの日の初公判で、木村被告の母親を呼んで証人尋問を行うことを明らかにした。2月10日の第4回公判で結審し、同19日に判決が言い渡される見通しだ。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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