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Google検索で「中国史」は学べるが「新型コロナウイルス」は学べない?

集英社オンライン / 2022年7月9日 10時1分

Google検索だけでも教養は身につけられる。しかし、ただググればOKというわけではない。ググるほど面白いテーマとググっても意味のないテーマを例にGoogleの活用術が学べる『39歳からのシン教養』(PHP研究所)から一部抜粋・再構成してお届けする。

中国が侵略戦争を起こさない理由

中国においては、裕福な層である2〜3億人が社会を動かしているため、残りの11億人ぐらいが悲惨な生活をしていても、社会としては安定する。そのため、中国共産党が政権を握って以降、大きな変化はない。

そのことは、中国4000年の歴史を見てもわかる。

中国は春秋戦国時代の内乱期に、諸侯が各地に群雄割拠した時代もあるが、基本的には皇帝がいて、科挙という「公務員試験」に合格した優秀な官僚が民を支配するという構図がずっと続いてきた。昔は科拳の合格者、今は共産党員が各地方に散らばり、日本の昔の代官のようにその上地を統治し、裕福な層はますます富み、それ以外は全員奴隷のような生活を送っているのである。



そしてそれは、専制君主の時代も、共産党の治世でも変わらない。

領土が広く、人口が14億人もいるのだから、中国が本気で侵略戦争を起こすとは考えにくい。実際、中国が自ら戦争を起こしたことは過去の歴史を見てもあまりない。アヘン戦争も日中戦争も攻められてばかりだ。

元のクビライの時代はたしかに外征が多かったが、その点をウィキでは「モンゴル王朝で初めての中国風の元号(中統)を立て」と説明されており、要は中国においては「モンゴル王朝」という位置付け。今のモンゴルが中国を征服したという特異な歴史であったといえる。

それを除くと、中国が自ら戦争を仕掛けたのは中越戦争(1979年)ぐらいだろうか。この戦争ですら、ウィキでは中国の立場から、「『対越自衛反撃戦』と呼び、ソ連・ベトナム連合の侵攻を恐れての行動と主張している」と説明されている。

中国の民主化で米中対立が進む可能性

中印国境粉争(1962年)も本格的な軍事衝突ではなく、その名のとおり、国境未確定地域での小競り合いでしかない。ヒマラヤ山脈を隔てて向き合う両国で、ミサイル配備は抑止力にしかならない。まして、海を越えてアメリカと本気で戦うとは考えられない。

共産党の一党独裁を含めて中国は4000年もの間、専制君主制度を続けてきた。それが中国の文化、政治的風土と割り切ればいいと思う。

もちろん、その構図が崩れる可能性はゼロではない。たとえば中東では、パーレビ王朝(1925年末から1979年初めまで存在したイラン最後の王朝)時代、イランは親米で知られていたが、イラン革命を経て世界で最も過激な反米国家となった。

そこから言えることは、中国の民主化が実現したら、余計に米中対立が進む可能性があるかもしれないということだ。

新聞やニュースの情報だけを鵜呑みにせず、一つひとつキーワードを吟味する。歴史を知らないと思う人は、まずここから始めるべきである。

答えのないものはググらない

本書は、「ウィキでググれば事足りる」というコンセプトで書いているが、すべての事象について、ググるだけでいいと言っているのではない。

哲学的なもの、正解がないものについては、ググる必要がないと考えている。だから一切、手を出さない。

「人間のことは何にてあれ、大いなる心労に値せず」(プラトン)

「幸福になろうとするならば、節制と正義とが自己に備わるように行動しなければならない」(ソクラテス)

「樹木にとって最も大切なものは何かと問うたら、それは果実だと誰もが答えるだろう。しかし、実際には種なのだ」(ニーチェ)

プラトンやソクラテス、ニーチェをグクることはあっても、有名な哲学者の言葉は、まさに究極の主観である。その内面世界の解釈は人によりさまざまで、人の数だけ解釈があると言ってもいい。いくらウィキでも、そうした名言について「絶対的に正しい解釈はこれだ」と示してくれるわけではないし、また示すことなどできないだろう。

哲学とは深い思索であり、情報収集や知識を得る行為とは、全く異なる次元のものであるから、そもそもググるメリットがない。

新型コロナウイルス感染症による死亡率

哲学だけでなく、答えが出ないものはググっても意味がない。

たとえば、新型コロナウイルス感染症で亡くなった人は基礎疾患があったケースが多く、純粋な新型コロナウイルス感染症による死亡率は伝えられるよりも低いのではないかという議論がある。しかし、コロナで死んだ人と基礎疾患が悪化して死んだ人を明確に線引きできるかと言われると、そのための正確なデータはない。

このような主張を客観的データで崩すのは容易ではないし、そうした主張をわざわざ崩す意味もないだろう。

つまり、ググるメリットなどなく、単なる時間の無駄。それよりも客観的な事実や正解のあるものについてググることに、頭と時間を費やしたほうが利口である。

#1 「勉強はウィキペディアが9割」でOKと断言できる理由
#3 ツイッターよりフェイスブックの方が貴重な情報源と断言できる理由
#4 30代以上は知っておくべき! 信頼できる3つのテレビ局と2つの情報サイト(7月10日10時公開予定)

39歳からのシン教養

成毛眞

2022年6月21日

1870円(税込)

文庫 336ページ

ISBN:

978-4-569-85175-4

地政学/統計学/生命科学/英語/先端技術/宇宙/NFT…… 数歩先の未来も予測できる「成毛式・1ランク上の勉強」

「学び直しブームだけど、何を学べばいいのかわからない」「仕事だけでなく、家事・育児に忙殺されて本を読む時間がない」「自分の“教養力"に自信がない……」。本書は、そんな“教養コンプレックス"を抱える人たちに向けて、まったく新しい教養テーマを提示し、その身につけることをめざす本です。 「30代も半ば以降になって、じっくり本を読み知識を蓄えるようではもはや手遅れ」。 『amazon』『2040年の未来予測』などで時代流れを先読みしてきた著者が実践する、ビジネスや投資、企画にも役立つ「コスパのいい学び方」を伝授します。 歴史分野はテレビを観ながらウィキペディアでキーワードを検索。宇宙や生命科学分野は、月1回定例的に特定のサイトをチェックするなど、予備知識&暗記いらず、忙しいミドルエイジのビジネスパーソンでも簡単に真似できます。まわりと同じことをしていては差がつきません。本書でぜひ、数歩先の未来を読む勉強法を身につけましょう。

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