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「パパとママ、どっちをやってるの?」レズビアンカップルが家庭と子どもを育てるということ

集英社オンライン / 2022年10月23日 17時1分

知人男性から精子提供を受けて同性カップルで子供を授かった、長村さと子さんと茂田まみこさん。2021年12月に長村さんが子供を出産してもうすぐ1年が経とうとしている。血縁関係はなくても家族の絆は育めるのか? 2人の答えは…。

「パパ? ママ? どっちやってるの?」

2人の子供・いったんの日々の成長が早すぎて「0歳が終わってしまうのが寂しい」という長村さん。夜泣きや突然の発熱など大変なことはあっても、長年の夢を叶えて育児を楽しんでいるようだ。

長村さと子さん(左)と茂田まみこさん(右) 写真:本人提供

長村「大変なこと、それさえも楽しいです(笑)。大人になっていくのがすごく楽しみな一方で、寂しさもあって」

少しずつ社会的な状況も変わりつつあるが、いわゆる異性愛のカップルだと、夫(お父さん)は仕事、妻(お母さん)は育児や家事といった性別による分業の風潮は今もまだ残っている。しかし、レズビアンカップルの場合は同性同士なので性別の役割分業のようなものは存在しない。



そのあたり2人はどのようにしているのだろう?

長村「やりたいことをやっていますね。私は料理はしますけど掃除や洗濯は得意ではないのでお願いしています」

茂田「だいたい家事は全部私がやっていますね(笑)」

長村「子育てもお願いしてる! (笑) というのは言い過ぎですけど、絶対に得意、不得意ってあると思うんです。女性だから家事が得意とか『その発想がやばくない?』って思うんですよね。性別の役割だけでやっていたら限界があると思いますし。取材されるときもジェンダーバイアスがかかっていると、まず私に『料理している姿を撮らせてください』とかリクエストされたりする。『見た目で言ってる?』と思ってしまいます」

茂田「男役、女役という…私も最近言われるのが『パパやってんの? ママやってんの? どっちやってるの?』とか言われて、何それって思います」

「そんなに普通に合わせる必要がある?」

性別による押しつけがなく、自由に、得意なほうを得意な人がやる。それがあたりまえの世界。いったんは、そういった性別による先入観のない環境で育っていても、学校へ通い始めると異性愛者がメインとなるマジョリティのコミュニティに身を置く時間が多くなっていく。

そこでつくられた社会規範を目の当たりにして疑問を抱き、「なぜうちはママが2人なの?」「なぜうちにパパはいないの?」と言ってくるかもしれない。それは子供を養育している同性カップルが想定している未来だろう。

茂田「絶対にそういうことは言うだろうし、子供が思春期になったら、『産んでないくせに』、『血がつながってないくせに』とか私は言われると思う」

長村「それでわくわくしている(笑)」

楽観的というか、どこか何があっても楽しんでしまおうと前向きな雰囲気を感じた。そして茂田さんは真剣な面持ちで話す。

茂田「どこかのタイミングでちゃんと話したいとは思っています。一般的には男女に見える人たちが家族を営んでいるところが多いですけど、多い少ないといった数の問題ではないと思っています。たしかに私たちは家族構造からしたらマイノリティ。でも、ひとり親のところもあるし、祖父母に育てられている人もいるし、『みんな違うんだよ』といった話はする。私たちはマイノリティとして生きてきて、家族として大事なのは形ではないなと思っているので」

長村「バカにされたり、非難されたり、貶められたりする発言は他者からの圧ですよね。その他者からの圧が本当に正しいのかという話を成長過程のどこかでしなければと思っています。私たち家族に父親はいないけれど、そんなに他の人の普通に合わせる必要がある? というのが最終的に行き着くところかなと思っています」

血のつながりのない人たちに支えられて今の自分がいる

この取材は長村さんと茂田さんの簡単なプロフィールから、2人の出会い~いったんの誕生までを順を追って質問していた。ここで茂田さんに聞いておきたいことがあった。

それは「血縁関係はなくても、いわゆる絆は育まれる、つくっていけると考えてらっしゃいますか?」というものだ。

茂田「そうですね。私自身、自分の変化として、一緒に過ごす時間を共有し、成長を見守ったりしていて愛着が湧くことを実感しました。自分のつくったミルクをおいしそうに飲んでいる、おむつを替えるとすっきりした顔をする。ひとつひとつ関わっていくことで絆が育まれていくと感じています。

血のつながりより、一緒に過ごす時間のなかで、どう向き合い関わっていくのかが家族をつくっていくと考えています。血縁関係があっても仲が良くない、連絡を取らない親子関係もありますし、生まれたところはひとつのきっかけに過ぎないのかなと。すでに10か月育児をしていて、この子の親は自分だと思っているし、この子を守りたい気持ちがあるので」

長村「私は自分の育った家庭がいろいろあって、家に帰るのが憂鬱でしたし、学校ではいじめにも遭っていたし、毎日死にたいと思っていました。母も亡くなった父も好きですし、感謝もすごくしているけれども、私の命が今あって生きていられるのは、血のつながりのない人たちに支えられてきたおかげだと思っているんです。

私たちがつくっている今の家族は、こうでありたいという理想はあるけれど、生まれてきた子にとって、私が過去、自分の家族に感じたように、安心できずに憂鬱な場所になるかもしれない。でもそうしたら、助けてくれる人や逃げられる場所を用意しておくことは、できる限りしたいと思っています。その子を支えてくれる人がたくさん集まってくれる環境がベストだと思っているので」

広いつながりの中で子供を育むこと

長村「この子が生まれた瞬間から、ずっとたくさんの人たちが可愛がってくれているんですね。親のような人というのは何人いてもいいと思っているので、私は自分が母親である自覚はしっかり持っていますけど、そういうことばかりに縛られたくないとも思っています。子供にとって親がどういうものであってほしいのかは子供が決めることだから。子供に安全な場所を用意すること、それが親の役割かと思っています」

「こどまっぷ」の活動を通じて多様な家族のカタチを見てきているふたり。そこで築いている関係は揺るぎないものであるのを端々から感じた。

長村「いつか擦り減る感情を子供が持ってしまうかもしれないけど、あまりネガティブに考えていないのは、私たちと同じようなほかの家族やまわりの人とのつながりがちゃんとあるからです。子供には自分の存在を肯定してくれる人々の中で育って、望まれて生まれてきたことに自信を持っていってくれたらという気持ちがあります 」

子供の笑顔をつくるのも守るのもまわりの人と環境しだいだ。それは家族という単位とは限らないのだろう。

取材・文/中塩智恵子 撮影/高木陽春

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