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ドラマ業界の視聴率至上主義の崩壊。『silent』『最愛』など“低視聴率でも大ヒット”と言われる根拠とは

集英社オンライン / 2022年11月10日 15時1分

視聴率至上主義だった時代のドラマは、高視聴率か否かがヒットの分水嶺だった。しかし令和のいま、『silent』や『最愛』など全話平均で二桁視聴率に届かない作品が大きな話題に。視聴率に依存しなくなったドラマ業界、その理由を考察する。

一昔前なら、テレビドラマにおいては全話の世帯平均視聴率が二桁に乗ることがヒット作の目安になっており、一桁視聴率の作品はどんなに内容がよくても“不発”という扱いをされていたもの。

けれど現在放送中の恋愛ドラマ『silent』(フジテレビ系)は、第1話から第5話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区、以下同)は6.4%、6.9%、7.1%、5.2%、7.9%と低水準で推移。以前なら「大爆死」「打ち切り危機」などと報じられてもおかしくない数字だが、『silent』は大ヒットと言っても過言ではない盛り上がり方をしている。



近年、『silent』に限らず、視聴率が一桁台でも高評価され、ヒット作となっているドラマが増えてきているが、どういった要因があるのだろうか。

TVerなどの見逃し配信で記録更新した『silent』、『最愛』

『silent』だけでなく、最近は『六本木クラス』(テレビ朝日系)、『最愛』(TBS系)といった全話視聴率の平均が一桁でフィニッシュした作品も、立派にヒット作として見られるようになっている。

かつては視聴率至上主義だったドラマ業界だが、近年は視聴率に依存せずともヒットする作品が続々と登場しているのだ。

まず視聴率至上主義が終焉した要因として、そもそもリアルタイムで観ている人をカウントする視聴率というデータが、時代にそぐわなくなってきていることが挙げられる。

自分の好きなタイミングで観られる動画配信サービスが全盛の今、決まった曜日・時間にテレビの前に縛られる不自由さを敬遠する人が増えてきているのも自明の理だ。

そんな視聴率だけが絶対正義ではなくなった理由と表裏一体で昨今注目されている指標が、TVerなどの見逃し配信サービスでの再生数である。

『silent』は放送1週間の見逃し配信(ビデオリサーチ調べ/TVer、FOD、GYAO!の合計値)において、いきなり第1話で531万再生を叩き出し、フジテレビ全番組における歴代最高を記録。続く第2話では567万再生とさらに記録を伸ばし、第4話では688万再生を突破し、フジテレビ歴代最高の記録を更新し続けている。

日本の総人口を約1億2000万人とすると、同じ人が何度も観ているというケースもあるだろうが、単純計算で日本の5~6%ほどの人が『silent』第4話を見逃し配信で観たという計算になるわけだ。

昨年10月期に放送された『最愛』(TBS系)の世帯平均視聴率は、最終話のみ10.9%と二桁に乗せたが、それ以外は一桁で全話平均は8%台。

だがヒット作と呼べる『最愛』の人気の高さを裏付けていたのも、TVerで樹立した記録だ。2021年10月から12月の全配信番組を対象とした再生数ランキングで、1位となる2280万再生を記録しており、これは当時のTVer歴代1位となる数字だったのだ。

ちなみに『最愛』は今年に入ってから、富山や岐阜といったロケ地を2日間かけて巡るオフィシャルバスツアーが実施されて話題となった。ドラマの公式ツアーが企画されるのは異例で、それだけ熱量の高いコアなファンがついていたからこそ実現したのだろう。

また、ほかにもTVerの2022年1月から3月の全配信番組を対象とした再生数ランキングでは、興味深い結果が出ていた。

全話の世帯平均視聴率が14%越えだった『DCU』(TBS系)が1473万再生で4位だったのに対し、全話で7%台だった『妻、小学生になる。』(TBS系)が1637万再生で2位、同じく全話で7%台だった『真犯人フラグ』(日本テレビ系)が1486万再生で3位だったのである。

視聴率ではほぼダブルスコアで勝利していた『DCU』が、TVerの再生数では『妻、小学生になる。』、『真犯人フラグ』に敗北したという結果は、視聴率に依存しないヒット作が生まれているという時代を如実に表しているように思う。

もちろんリアルタイムで最速視聴したいという人はまだまだ多いため、今でも視聴率がヒットか否かを判断する重要な指標のひとつであることは間違いない。ただし単話で数百万再生を稼ぎ出す見逃し配信のデータも、同じように重要な指標のひとつになっているのである。

Twitterのトレンド入りや映画化の興行収入もヒットの指標

見逃し配信以外にも今の時代のヒットの指標となっているものと言えば、TwitterなどのSNS投稿の多寡だろう。

例えば『silent』は、なんと第3話まで3週連続でTwitterの世界トレンド1位を獲得しており、第4話も国内トレンド1位を獲得、第5話では再び世界トレンド1位を獲得。

何度か世帯平均視聴率が10%台に乗ったものの全話平均は9%台で終わった前クール放送の『六本木クラス』(テレビ朝日系)も、Twitterの国内トレンド1位を獲得していた。

Twitterはリアルタイム視聴の方々のつぶやきがメインのため、けっきょく視聴率に依存していると思われるかもしれないが、高視聴率ドラマが必ずトレンド1位を獲得しているわけでもない。Twitterの投稿の多さは視聴率の高さに比例しているわけではないのだ。

Twitterでトレンド1位を獲得できるかどうかは、視聴者の熱量の高さにかかっているのではないだろうか。

流し見している人はわざわざつぶやかないので、Twitterのトレンド1位は熱心なファンが非常に多くついているという証拠。つまり視聴率ではわからない視聴者たちの熱量の高さを測る指標として、TwitterなどのSNSは重要視されているのである。

そしてTwitterのトレンド1位獲得というトピックは、ネットニュースなどで取り上げられやすい。その上、テレビ局側もそれを謳って宣伝できるといったメリットもあり、好循環が生まれて人気に拍車がかかる大きなファクターになっているのかもしれない。

また少し遡ると、2018年放送の『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)は全話が一桁視聴率で、内容的には放送当時から高評価されていたものの、数字的には“不発”という烙印を押されていた。

しかしその後2019年、2020年、2022年に劇場版が公開され、第1作が約30億円、第2作が約38億円、第3作が約29億円と興行収入を荒稼ぎするヒットシリーズに大化け。ドラマ放送は低視聴率ながら、明確にマネタイズに成功した作品となったのだ。

――このようにTVerをはじめとした見逃し配信、TwitterなどのSNSでの反響、映画化の興行収入の成績など、令和のいま、“ヒットドラマ”を裏付ける指標は増えてきている。ドラマ業界は視聴率に依存せずともヒット作を生み出せる新たなフェーズに突入しているのだ。

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