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太陽に似た恒星にも「マウンダー極小期」があった! ウィルソン山天文台が活躍

sorae.jp / 2022年11月13日 17時0分

solarcycle(Credit:NASA/SOHO)

【▲28.4ナノメートルの波長で撮影された一連の画像は、太陽の極紫外線放射が1996年から2006年までの太陽周期の間にどのように変化するかを示しています(Credit: NASA/SOHO)】

太陽の表面(光球)に黒点が出現することはよく知られています。小型望遠鏡に投影板を取り付けて黒点を観測した人も少なくないかもしれません。

また近年、太陽フレアによる通信障害などの影響を予測する宇宙天気予報の取り組みとともに、太陽活動や黒点に注目が集まっています。太陽フレアは黒点数の増加に伴って周期的に変化するからです。このような太陽活動の周期は約11年ごとに繰り返されています。

ところが不思議なことに、1645年から1715年の約70年間、太陽表面に黒点がほとんど観測されない状態が続きました。この期間は、発見者の名前に因んで「マウンダー極小期(モーンダー極小期)」と呼ばれています。

ところでマウンダー極小期のような現象は、太陽以外の恒星でも起きているのでしょうか。2022年10月11日付けのAAS Nova/Astrobitesでは、太陽に似た恒星「HD 166620」の独自のマウンダー極小期について紹介しています。

HD 166620は長くゆっくりとした活動周期を示しているため、独自のマウンダー極小期に入っていることを示すには、研究チームは数十年にわたるデータを必要としました。

p15150coll2_875_extralarge-1320x1081(Credit:the Observatories of the Carnegie Institution for Science Collection at the Huntington Library, San Marino, California)

【▲ウィルソン山天文台のフッカー望遠鏡は、エドウィン・ハッブルが宇宙膨張を発見したことで有名です。本研究でも重要なデータを提供しました(Credit: the Observatories of the Carnegie Institution for Science Collection at the Huntington Library, San Marino, California)】

幸いなことに、ウィルソン山天文台のフッカー望遠鏡によるHD 166620を含む多数の星の1966年から1995年までの観測データと、Keck-HIRESスペクトログラフ(ハワイのケック望遠鏡に設置された高解像度分光器)による2004年から2020年までの新しい観測データがありました。

これらのデータは、恒星外層のカルシウム原子に由来する放射を追跡したもので、黒点数など恒星の活動と相関しており、放射が強いほど活動が活発であることを示しています。

ウィルソン山天文台による過去のデータは、HD 166620の数十年にわたるゆっくりとした活動の周期変化を示していますが、Keck-HIRESによる近年のデータは、過去約15年間ほぼ一定の低い活動レベルにあることを示しています。

しかし、この2つのデータセットの間には約10年間の空白があり、この期間は活動が低下する時期に移行する重要な時期に当たります。ところがなんと、研究チームは、1995年から2002年までの範囲をカバーする、ウィルソン山天文台の観測データをさらに発見したのです!

これらのデータは、この星の低活動状態へ向かうスムーズで納得のいく移行を示していました。さらに、研究チームはT4自動測光望遠鏡(アリゾナ州にあるフェアボーン天文台に設置)から測光データを取得しました。1993年から2005年および2015年から2020年に取得された星の明るさの測定値は、カルシウム放射の測定値を補完し、まったく同じ傾向を示しています。

これは、論文の著者たちが言うように、HD 166620がマウンダー極小期に似た時期に入っていることを示す明白な証拠です。

apjlac8b13f1_hr-1320x1321(Credit:Luhn et al. 2022)

【▲本研究に用いられたデータセットの説明図。1番上の図は1966年~1995年および2004年~2020年のカルシウム放射の測定値、2番目は新たに発見された1995年~2002年の測定値を加えたもの、3番目は測光データのみ、4番目はすべてを合わせたもの(Credit:Luhn et al. 2022)】

他にも分かったことがあります。1つ目は、この新しい極小期の放射・測光レベルが、これまでの極小期のレベルと比べて著しく低いわけではないことです。これは、磁場の構造に大きな変化がないこと、つまり、激的な変化が起きているわけではないことを示しています。これは、この星の典型的な極小期を大きく引き伸ばしたような状態だというのです。

2つ目は、他の観測によって、HD 166620は太陽の古いいとこのような星で、あまり活発ではなく、著者たちはこの星のダイナモ(恒星の磁場を生成する機構)が弱々しい可能性があると説明しています。

このように、数十年にわたるウィルソン山天文台の観測データなど、長期的な調査によりHD 166620に関する新たな発見がありました。このような「大極小期」とも言うべき「グランドミニマム(grand minima)」に入ったり出たりする星は、他にもいくつか提案されています。HD 166620の研究から得られた知識によって、これらのプロセスがどのように機能し、これらの現象がどれほど一般的であるのか、近いうちに明らかになることが期待されています。

なお、AAS Nova/Astrobitesは、大学院生が運営する組織で、学部生のために天体物理学の文献をダイジェストで紹介しています。

 

Source

Image Credit: NASA/SOHO、the Observatories of the Carnegie Institution for Science Collection at the Huntington Library, San Marino, California AAS Nova/Astrobites - The Bared Minimum: Revealing a New Phase of Stellar Activity in HD 166620 The Astrophysical Journal Letters - HD 166620: Portrait of a Star Entering a Grand Magnetic Minimum

文/吉田哲郎

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