NASA赤外線天文衛星「NEOWISE」ミッション終了 2024年末頃に大気圏へ
sorae.jp / 2024年8月19日 21時8分
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年8月8日付で、赤外線天文衛星「NEOWISE(ネオワイズ)」のミッションが終了したことを発表しました。運用を終えたNEOWISE衛星は2024年末頃に地球の大気圏へ突入して燃え尽きると予想されています。【最終更新:2024年8月16日10時台】
NEOWISEはもともと赤外線で全天を観測する「WISE(Wide-field Infrared Survey Explorer、ワイズ)」ミッションの天文衛星として2009年12月14日に打ち上げられました。当初の目的である4つの波長帯(3.4μm、4.6μm、12μm、22μm)での全天観測は2010年7月までに達成されています。2010年9月には冷却剤の固体水素が枯渇しましたが、冷却剤がなくても稼働する2つの検出器(3.4μmと4.6μm)を使用した小惑星帯の小惑星観測が4か月間行われ、衛星の運用は2011年2月で一度終了しました。
【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の赤外線天文衛星「NEOWISE」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】その後は地球の公転軌道に接近する軌道を公転している地球近傍天体(Near-Earth Object: NEO)を観測するWISE衛星の新たなミッション「NEOWISE(Near-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer)」が、現在の惑星防衛調整局(Planetary Defense Coordination Office)の前身であるNASAの地球近傍天体観測プログラム(Near-Earth Object Observations Program)の下で2013年12月にスタートしました。
NASAによると、NEOWISEミッションで作成された全天マップには太陽系に存在する4万4000個以上の天体の145万件の検出が含まれています。NEOWISE衛星が検出した地球近傍天体は3000個を超えていて、そのうち215個はNEOWISE衛星による観測で新たに発見されたものでした。また、NEOWISE衛星は2020年に話題を呼んだ「ネオワイズ彗星(C/2020 F3)」をはじめとする25個の彗星も発見しています。
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・12年かけて撮影された全天タイムラプス動画 NASAの衛星「NEOWISE」の成果(2022年11月28日)
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NEOWISE衛星の科学観測は2024年7月31日で終了し、科学データの送信が終わった後の2024年8月8日には衛星の送信機をオフにする最後の指令が送信されました。本稿の執筆時点でNEOWISE衛星は高度349km×346km・軌道傾斜角97.14度の軌道を飛行していますが、これは高度約400kmの軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)よりも低い高度です。
現在は約11年周期の太陽活動がピークに差し掛かっていて、太陽に加熱される地球の大気は太陽活動が静穏な時期と比べて膨張しています。地球低軌道を周回する物体は希薄な大気の抵抗を受けて少しずつ減速しますが、太陽活動が活発な時期は大気が膨張することでより強い抵抗を受けることになります。軌道を維持するための推進システムを持たないNEOWISE衛星は高度がすぐに低下し、2024年末頃に大気圏へ突入する見込みです。
【▲ NEOWISE衛星が最後に取得した画像。「ろ座(炉座)」の一部が写っている。ミッションが終了したアメリカ東部夏時間2024年8月1日3時の直前に取得されたもの(Credit: NASA/JPL-Caltech/IPAC/UCLA)】なお、NASAは地球近傍天体の観測を専門とする赤外線宇宙望遠鏡「NEO Surveyor(NEOサーベイヤー)」を2027年9月に打ち上げる予定です。NEO Surveyorは5年間のミッションで幅140m以上の地球近傍天体のうち90%以上の発見を目指しており、潜在的に危険な小惑星を捜索するNASAのミッションはNEOWISEからNEO Surveyorへと引き継がれることになります。
Source
NASA - NASA Mission Concludes After Years of Successful Asteroid Detections NASA/JPL - NASA’s NEOWISE Infrared Heritage Will Live On NASA/JPL - NEOWISE Mission Summary NASA/JPL - Near-Earth Object Surveyor Caltech IPAC - The NEOWISE Project文・編集/sorae編集部
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