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ハッブル定数を求める手段として新たに「重力波」を使った測定方法が登場

sorae.jp / 2019年7月10日 1時7分

中性子星どうしが合体する様子の想像図

アメリカ国立電波天文台(NRAO)は7月8日、プリンストン大学の仏坂健太氏らによる研究チームによって、宇宙の膨張速度を示す「ハッブル定数」を求める新たな手段が編み出されたことを発表しました。研究結果は論文にまとめられ、同日付でNature Astronomyから発表されています。

宇宙が膨張していることはアメリカ合衆国の天文学者エドウィン・ハッブルによって見出されましたが、「ハッブル定数」と呼ばれる膨張速度の正確な値については、今も議論の渦中にあります。

ハッブル定数を求める方法としては、「天体の明るさ」もしくは「宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background : CMB)」のいずれかが用いられてきました。

天体の明るさを用いる方法では、Ia型の超新星爆発やケフェイド変光星が用いられます。これらの天体については本来の明るさである「絶対等級」の求め方が判明しているため、地球からの見かけの明るさである「実視等級」との差を求めることで天体までの距離を測定し、そこからハッブル定数の計算へとつなげることができます。今年の4月に紹介したように、この方法を使った最新のハッブル定数は74.03km/s/Mpc(以下は単位を省略)と求められています。

いっぽう、初期宇宙の名残である宇宙マイクロ波背景放射を用いた方法では、67.4という数値が算出されています。このように、ハッブル定数を求める2つの方法を用いた計算結果は異なっており、9パーセントほどの食い違いが見られます。

仏坂氏らによる研究では、ハッブル定数を求める新しい手段として、近年観測できるようになった「重力波」と、その源となった天体の電磁波による観測結果が利用されています。

今回ハッブル定数の計算に用いられたのは、2017年8月17日に検出された重力波「GW170817」です。GW170817は「うみへび座」の方向およそ1億3000万光年先にあるレンズ状銀河「NGC 4993」で発生したもので、その源は中性子星どうしの連星が合体したことで発生した「キロノバ」と呼ばれる爆発現象だったと見られています。

NGC 4993と、重力波GW170817の発生源とみられる天体(赤丸内)(Credit: ESO/J.D. Lyman, A.J. Levan, N.R. Tanvir)

NRAOの発表によると、重力波は、その波形から本来の強さを求めることができます。「地球でキャッチした重力波の強さ」と「波形から導かれた本来の強さ」を比較することで、まるで天体の絶対等級と実視等級を比較するのと同じように、重力波源までの距離を求めることができるのです。

ただ、地球に届く重力波の強さは、地球から見た中性子星の公転軌道の傾きによって左右されます。そこで、アメリカ各地の電波望遠鏡を結んだ観測設備である「超長基線アレイ(VLBA)」や、「カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)」、それに「ロバート・バード・グリーンバンク望遠鏡(GBT)」といった電波望遠鏡の観測結果から軌道の傾きを求めることで、ハッブル定数の計算結果をより確かなものとすることに成功しました。

論文によると、今回の研究によって求められたハッブル定数は70.3。ただし誤差が大きく、現時点では65.3~75.6という大きな範囲が示されるに留まっています。

とはいえ、従来とは異なる独立した方法によってハッブル定数が示されたことには、大きな意義があります。今後、電波望遠鏡などで観測可能なほど近距離の重力波源が複数観測されることで、重力波を使って求められたハッブル定数の精度向上が期待されます。

 

Image Credit: NRAO/AUI/NSF
[https://public.nrao.edu/news/new-method-measuring-universe-expansion/]
文/松村武宏

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