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火星探査機「インサイト」で地中センサーのトラブルを解消するために実施された作戦とは

sorae.jp / 2019年10月5日 21時20分

今年の4月に火星の地震「火震」を捉えることに成功したNASAの火星探査機「インサイト」。地震計による探査が着実に成果を挙げつつあるいっぽうで、実はもう一つの観測装置にトラブルを抱えています。NASAのジェット推進研究所(JPL)は10月3日、このトラブルを解消するために、ある作戦を実行に移したことを明らかにしました。

火星探査機「インサイト」の想像図。本体の手前右、地表に置かれているのが問題の熱流量計「HP3」。手前左にあるのは地震計「SEIS」を覆うカバー

■アームに取り付けられているスコップを使った「ピン留め」作戦

2018年11月に火星への着陸に成功したインサイトには、2つの主要な観測装置が搭載されています。

1つは火震を検出するための地震計「SEIS」(Seismic Experiment for Interior Structure)で、もう1つは火星の地中から放出される熱を測定するための熱流量計「HP3」(Heat Flow and Physical Properties Package)です。どちらも火星内部の様子を探るための観測装置ですが、このうち熱流量計HP3がトラブルに見舞われています。

HP3では「モール」(the mole、もぐら)と呼ばれる杭のようなセンサーを火星の地下5mまで打ち込むことになっているのですが、今年の2月28日に作業を開始してからモールを打ち込めた深さは、わずか35cmでしかありません。原因は、HP3を設置した場所の下に、想定よりも厚い5~10cmほどのセメント質の固い層があったためでした。

層の固さはモールを打ち込めないほどではなかったものの、固いために穴が崩れにくく、モールを打ち込んだ穴にすき間ができやすくなります。その結果、土とモールとの間に働く摩擦力が小さくなり、ハンマーで叩かれたモールが穴のなかで弾むようになってしまったため、それ以上深くまで打ち込むことができなくなってしまったのです。

そこでインサイトの運用チームは、ロボットアームに取り付けられているスコップを使って、モールを穴の側面に押し付けてみることにしました。接触する面積が増えればそれだけ摩擦力も強くなるので、セメント質の層を突破できるかもしれないと考えたのです。JPLでは今回の操作を「ピン留め」(pinning)と呼んでいます。

スコップを左に動かしてモールを穴に押し付けている様子

■7回に及ぶ失敗を教訓にした今回の作戦、果たして成功するか?

インサイトの運用チームは「ピン留め」作戦に先立ち、HP3を一旦地表から撤去した上で、モール周囲の穴をなんとか崩せないものかと試行錯誤してきました。

しかし、この夏に実施された7回に及ぶチャレンジはことごとく失敗。インサイト本体の熱が観測結果に影響を及ぼさないようHP3は本体から離れたところに設置されたのですが、それゆえにロボットアームの力をうまく利用することができなかったのです。

世界でも一線級の技術者や科学者が集まり、多額の予算を費やしても、はるか火星で起きた無人探査機のトラブルを解消するのは至難の業。ピン留め作戦が良い結果をもたらし、火星の謎を解き明かす観測につながることを願います。

穴に側面が密着したモール。打ち込めるだけの摩擦を得られるかが鍵

 

関連:火星地震学の幕開け。探査機インサイトが”地震波”らしき振動をキャッチ

Image: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA – DIR
文/松村武宏

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