銀河団が作り出す重力レンズの背後に潜む「赤い宝石」
sorae.jp / 2020年6月25日 22時0分
画像全体に見えているのは銀河の集まりである銀河団ですが、注目したいのはそこではありません。中央に明るい光がありますが、その周辺に赤みがかった点がいくつかあるのが見えるでしょうか(かなり暗いです)。これが「PLCK G045.1+61.1」と名付けられたスターバースト銀河(星が大量に生まれている銀河)です。銀河の手前にある銀河団の重力によりPLCK G045.1+61.1の光が曲げられて私たちのほうに向かってきており、その影響でこの場合は複数の点が広がったように見えています。このような現象は「重力レンズ」と呼ばれており、アインシュタインの一般相対性理論により予測されているものです。
2009年から2013年にかけて、欧州宇宙機関(ESA)の「プランク衛星」が夜空を広く探査し、「ハーシェル宇宙天文台」という別の人工衛星も遠赤外線やサブミリ波(短い波長の電波)を使って補完的な観測を行いました。画像はハッブル宇宙望遠鏡によるものですが、プランク衛星は重力レンズの効果を受けた、非常に明るく遠方にある銀河をいくつか発見しています。PLCK G045.1+61.1は、プランク衛星・ハーシェル宇宙天文台の観測した天体についてハッブル宇宙望遠鏡を使い研究をしていた最中に発見されました。
プランク衛星が発見した、「非常に明るい、ダストが多い、星がたくさん生まれている、地球からの距離が非常に遠い」という特徴をもつ銀河のうち特に明るい11個には「Planck’s Dusty GEMS」という名前がつけられています。「GEMS」は英語で「Gravitationally Enhanced subMillimetre Sources」の頭文字で、意訳すると「重力レンズの影響を受けた、サブミリ波を出す天体」といったところです。一方でGEMSは宝石という意味もあり、特にこのPLCK G045.1+61.1はその赤みがかった姿から「ガーネット」(日本語では柘榴(ざくろ)石)とも呼ばれているようです。
Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Frye
Source: ESA/Hubble
文/北越康敬
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