次は5000年以上先のネオワイズ彗星、満点の星空を背景に巨大望遠鏡とのベストショット
sorae.jp / 2020年7月26日 21時20分
この画像は大西洋に浮かぶ島々「カナリア諸島」の1つ、ラパルマ島で撮影されたものです。画像の左奥のほうには最近地球から見える「ネオワイズ彗星」が輝き、夕暮れの空の下には雲が見えます。撮影された場所は標高がやや高い位置にあり、雲がそこまで来ていないため天体観測には非常に良い条件になっているのです。一方、画像の中央と右にあるのは直径が約17メートルもある望遠鏡「MAGIC」です。MAGICは宇宙からやってくるガンマ線を観測するための望遠鏡ですが、ガンマ線を直接検出するのではなく、ガンマ線が地球大気に入ったときに発生する「空気シャワー」と呼ばれる現象による光を観測します。MAGICは複数の鏡を組み合わせて反射鏡が作られており、昼間に遠目から見ても複数の巨大な鏡が設置されている姿に驚かされます。
なお、左にあるのはMAGICとは別の「チェレンコフ・テレスコープ・アレイ」(Cherenkov Telescope Array)と呼ばれる望遠鏡群の1台で、こちらは直径(口径)23メートルもあります。「アレイ」と名の付くように複数の大型望遠鏡を使ってさらに高感度の観測を目指す計画で、現在建設が進められているものです。「チェレンコフ」はもともとロシアの物理学者パベル・チェレンコフの名前ですが、空気シャワーによって発生する光を発見者の名を取って「チェレンコフ光」と呼んでおり、これが望遠鏡群の名前にも使われています。実はMAGICも「Major Atmospheric Gamma Imaging Cherenkov」の略で、チェレンコフの名前が含まれています。
この画像が撮影されたときには2台の望遠鏡が私たちの銀河系の中心部から来るガンマ線を観測するため、南東(画像のやや手前側)を向いていました。この方向にはいて座とさそり座があり、その星空が巨大な鏡に反射して見えています。そのためこの画像を撮影するカメラはちょうどその反対を向いていることになり、日本でも北の空に見える北斗七星がネオワイズ彗星の上に輝いているのがわかります。
ガンマ線の観測とネオワイズ彗星に直接の関係があるわけではありませんが、夕暮れのグラデーションと彗星、巨大な鏡を含めた星空の組み合わせで素晴らしい写真になっているのではないでしょうか。NASAのWebサイトでは約8.5メガバイトという大きなサイズですが非常に高い解像度の画像が見られます。スマートフォンで見る場合や通信速度によっては表示にやや時間がかかりますが、画像を拡大して望遠鏡に映る星や彗星の鮮やかさをぜひご覧ください。
ネオワイズ彗星は7月後半には夕方に北西の低い空で見られるようです。次に太陽に近づくのは5000年以上先と言われており、天候など条件が揃えば見てみたいところですね。
※画像に見える3台の望遠鏡を「MAGIC」として記載しておりましたが、正しくは中央と右がMAGIC、左はチェレンコフ・テレスコープ・アレイの1台である大口径望遠鏡(Large-Sized Telescope)です。訂正の上、お詫び申し上げます。【7月27日9時50分追記】
関連:
NASAの太陽探査機が宇宙から撮影した「ネオワイズ彗星」の姿
明け方に尾を引くネオワイズ彗星、7月中旬までは北東の空に見られる
Image Credit: Urs Leutenegger
Source: NASA
文/北越康敬
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