NASAの探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影し続けてきた火星の素顔
sorae.jp / 2020年8月15日 21時11分
日本時間2005年8月12日、NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」が打ち上げられました。MROには高解像度撮像装置「HiRISE(The High-Resolution Imaging Science Experiment)」、広角カメラ「MARCI(The Mars Color Imager)」、幅30kmに渡る地表のモノクロ画像を取得する「CTX(The Context Camera)」の3台のカメラが搭載されており、火星のさまざまな表情を撮影し続けています。
MROの打ち上げから今年で15周年を迎えたことを記念して、NASAのジェット推進研究所(JPL)がMROによって撮影された画像をピックアップしています。今回はそのなかから6点の画像をご紹介します。
■火星全体を覆った砂嵐MARCIによって撮影されたこちらの画像に示されているのは、左が2018年5月、右が同年7月の火星の様子です。この年、火星では10年に1~2回の頻度という大規模な砂嵐が発生。地表の大半が塵の雲ともやに覆われたことで、宇宙から見た火星の様相は一変してしまいました。
当時火星ではNASAの探査車「キュリオシティ」と「オポチュニティ」がミッションを行っていましたが、太陽電池を搭載していたオポチュニティはこの砂嵐によって電力を失い、通信が途絶してしまいました。なお、太陽電池に代わり放射性同位体熱電気転換器(RTG)を搭載しているキュリオシティはこの砂嵐を乗り越え、2020年8月現在もミッションを継続しています。
■平原に立ち上る塵旋風HiRISEによって2012年2月に撮影されたこちらの画像には、北半球のアマゾニス平原から立ち上る塵旋風が捉えられています。画像は幅650m弱の範囲を写したもので、塵旋風の直径はおよそ30m、影の長さから推定された高さは800m以上とされています。
■雪崩のような崖崩れHiRISEによって2019年5月に撮影されたこちらの画像に写っているのは火星の北極域。氷と塵が堆積することで形成された高さ500mの崖と、その一部が雪崩のように崩れている様子が写っています。春の訪れとともに温度が上昇して堆積層の氷が気化したために、崖の不安定になった部分が崩れて塵が舞い上がったものとみられています。
■MROの到着後に形成された衝突クレーターこちらは火星の赤道近くに形成された新しい衝突クレーター。直径はおよそ30mで、衝突にともなう噴出物は15km先まで飛ばされたといいます。画像はCTXによってクレーターが検出された後、HiRISEによって2013年11月に撮影されたもので、衝突は2010年7月から2012年5月までの期間中に起きたとみられています。2006年3月にMROが火星に到着して以降、CTXは800以上の新しいクレーターを検出しています。
■斜面に現れては消える痕跡HiRISEによって撮影されたこちらの画像には、斜面を何かが流れたような細くて暗い痕跡が幾つも写っています。暖かい季節になると斜面を下り、涼しい季節になると消えるこれらの痕跡は、ほぼ同じ時期に同じ場所で現れることがわかっています。塩水が流れたのではないかとも考えられてきた痕跡の正体は、現在では暗い色合いの砂が斜面を滑り落ちたために生じたのではないかと考えられています。
■火星の周回軌道から撮影された地球と月MROが撮影するのは火星だけではありません。HiRISEの較正のために2016年11月に撮影されたこちらの画像に写っているのは、およそ2億500万km離れた地球と月です。地球の中央やや下に写っている赤茶色の部分はオーストラリア大陸で、その下には南極大陸が見えています。
JPLによると、HiRISEは撮影のために青緑色、赤色、赤外線の波長を利用しており、この画像ではそれぞれの波長が青色、緑色、赤色で示されています。また、地球の明るさに合わせると月は暗くてほとんど見えなくなってしまうため、4回撮影された画像のなかから地球と月がそれぞれ最も良く写っているものを選び出し、別々に処理をした上で組み合わせることで作成されたということです。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏
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