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NASA火星探査車「Perseverance」2回目のサンプル採取地点に到着、候補の岩を撮影

sorae.jp / 2021年8月28日 22時37分

既報の通り、アメリカ航空宇宙局(NASA)は火星探査ミッション「マーズ2020」の探査車「Perseverance(パーセべランス、パーサヴィアランス)」による初の岩石サンプル採取を2021年8月6日に試みたものの、岩が細かく砕けてしまったことで、サンプルを保管容器に収めることはできませんでした。

関連:NASA火星探査車「Perseverance」初のサンプル採取では岩がもろくて砕けてしまった可能性

とはいえ、全部で約30のコアサンプルを集めることが計画されているマーズ2020ミッションにとって、これは最初の試みにすぎません。NASAは8月26日、Perseveranceが撮影した次のサンプル採取の候補となる岩石の画像を公開しました。

■風食に強くサンプル採取に耐えられることが期待される岩「ロシェット」 Perseveranceが撮影した岩石「ロシェット」(中央)(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ Perseveranceが撮影した岩石「ロシェット」(中央)(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

こちらの画像の中央に写っているのが、Perseveranceによる2回目のサンプル採取の候補となっている岩石です。運用チームからは「Rochette(ロシェット)」と呼ばれています。Perseveranceを運用するNASAのジェット推進研究所(JPL)によると、今週中にロシェットの表面の一部を研磨してその内部を分析することが予定されています。サンプリングに耐えられると判断された場合、ロシェットからのサンプル採取は来週実施されます。

ロシェットがあるのは長さ400mほどの小高い尾根の一角を占める「Citadelle(シタデル)」と呼ばれる場所です。8月6日に最初のサンプル採取が試みられた場所から北西に位置するシタデルまで、Perseveranceは445m走行してきました。シタデルとはフランス語で「城塞」を意味する言葉で、Perseveranceが着陸したジェゼロ・クレーターの底を見渡せるような立地であることからそう呼ばれています。

周囲よりも標高が高い尾根を覆うロシェットなどの岩石は、長期間に渡る風食(風による侵食作用)に耐えてきたことを意味しており、Perseveranceのコアリングビットを使った掘削にも耐えられる可能性が高いとみられています。サンプルの採取と保管を実行するPerseveranceのハードウェアは8月6日に問題なく動作したことが確認されており、2回目となるロシェットでのサンプル採取成功に期待がかかります。

ロシェットのクローズアップ(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ ロシェットのクローズアップ(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

■サンプル採取後にチューブ内部を撮影・確認するステップを追加

また、Perseveranceによるサンプル採取と保管のプロセスはすべて自律的に実行されますが、1回目のサンプル採取の経験をもとに新たなステップが追加されました。

Perseveranceによるサンプル採取の大まかな流れは次の通りです。まず、Perseveranceの車体に組み込まれているAdaptive Caching Assembly(ACA)で加熱処理された空のチューブが、ロボットアーム先端に取り付けられている円筒形のコアリングビット内部にセットされます。次に、チューブがセットされた状態のコアリングビットが回転して岩石を掘削することで、チューブの内部に棒状のコアサンプルが残ります。その後、サンプルが入ったチューブはコアリングビットからACAに戻されて、体積の測定と写真撮影が行われた後に密閉・保管されます。

Perseveranceに搭載されているサンプルチューブの断面図。チューブの内部にはサンプルが描かれており、またチューブの端は密封されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ Perseveranceに搭載されているサンプルチューブの断面図。チューブの内部にはサンプルが描かれており、またチューブの端は密封されている(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

1回目のサンプル採取では、内部にチューブがセットされたコアリングビットを使って岩石を掘削した後に、チューブがそのままACAに戻されていました。そのため、チューブにコアサンプルが入っていないことに運用チームが気付いたのは、チューブの密閉・保管処理が終わった後だったのです。

そこで、Perseveranceが岩石の掘削を終えて、マストにあるズーム対応カメラ「Mastcam-Z」を使ってチューブの内部を覗き込むように撮影した段階で、チューブの密閉・保管プロセスを一旦停止するステップが追加されました。今後行われる2回目のサンプル採取では、チューブの内部を撮影したMastcam-Zの画像を運用チームがチェックし、岩石のコアサンプルが入っていることを確認した後でプロセスが再開されます。次のサンプル採取がうまくいけば、チューブにコアサンプルが収まっている様子を捉えた画像を目にすることができるでしょう。

▲Perseveranceによるサンプル採取の仕組みを解説した動画(英語)▲
(Credit: NASA-JPL/Caltech)

なお、1回目の採取では岩石が砕けてしまったためにコアサンプルの保管はできませんでしたが、そのかわり保管されているチューブの内部には火星の大気が入っています。マーズ2020では大気のサンプルを後日採取することも計画されていたため、大気サンプルの採取が前倒しされたと捉えれば、1回目の採取に使われたチューブも無駄にはならなかったことになります。ミッションのプロジェクトサイエンティストを務めるカリフォルニア工科大学のKen Farley氏は「サンプルを地球に持ち帰ることで、火星の大気組成も含む科学的な疑問の解答を得たいと願っています」とコメントしています。

Perseveranceが採取したサンプルを収めた保管容器は、NASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションによって後に回収され、地球に運ばれる予定です。近い将来人類が手にすることになる火星の岩石サンプル、その採取に初めて成功する瞬間が待ち遠しいです。

8月6日の掘削後に撮影されたPerseveranceのコアリングビット(中央)。コアリングビット内部にセットされているチューブにサンプルが入る予定だった(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲ 8月6日の掘削後に撮影されたPerseveranceのコアリングビット(中央)。コアリングビット内部にセットされているチューブにサンプルが入る予定だった(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

 

関連:火星探査車「Perseverance」について知っておきたい7つのこと

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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