接近していそうで実は離れている2つの銀河、ハッブルと地上の望遠鏡が撮影
sorae.jp / 2022年3月1日 21時26分
こちらは「おとめ座」の方向にある2つの銀河「NGC 4496A」と「NGC 4496B」の姿。画像に向かって上がNGC 4496A、下がNGC 4496Bです。青・赤・黄と色とりどりな星々の輝きを、暗色のダストレーン(暗い雲のように見える塵が豊富な領域、ダークレーン)が引き立てているような印象を受けます。
並んで写る2つの銀河は衝突しつつあるように見えますが、実はそうではありません。欧州宇宙機関(ESA)によると、地球からの距離はNGC 4496Aが約4700万光年、NGC 4496Bが約2億1200万光年と大きく異なっており、地球からはたまたま同じ方向に見えているのです。NGC 4496AとNGC 4496B、そして天の川銀河がほぼ1列に並ぶという偶然は、天文学者に貴重な機会をもたらすといいます。
銀河に含まれる塵を通して星を観測すると、塵がない場合と比べて暗く見えるだけでなく、赤みがかって見えます。これは赤化(reddening)と呼ばれる現象で、波長が長い光(赤)よりも短い光(青)のほうが吸収・散乱されやすいために生じます(天体の運動や宇宙の膨張などにともなって光の波長が伸びる赤方偏移とは別の現象です)。
NGC 4496AとNGC 4496Bのように重なって見える銀河の場合、奥の銀河にある星から届いた光が手前の銀河に含まれる塵からどのような影響を受けているのかを注意深く測定することで、手前の銀河に含まれる塵の分布を調べることができるといいます。観測によって得られた塵の分布図は、宇宙の距離や銀河に含まれる星の種類といった、様々な情報を補正するのに役立てられます。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」、セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」、地上の望遠鏡による掃天観測プロジェクト「スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)」で撮影された複数の画像をもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2022年2月28日付で公開されています。
関連:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影、“ペガスス座”の相互作用銀河「Arp 298」
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, T. Boeker, B. Holwerda, Dark Energy Survey, DOE, FNAL/DECam, CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, SDSS; Acknowledgement: R. Colombari ESA/Hubble - Not-So-Close Encounter文/松村武宏
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