太陽系外惑星を探す新たな手法は変光星の一種「激変星」がターゲット
sorae.jp / 2022年7月24日 21時16分
ヌエボ・レオン自治大学(UANL)のCarlos Chavez博士を筆頭とする研究チームは、太陽系外惑星を発見する新たな手法に関する研究成果を発表しました。研究チームが着目したのは、明るさが激しく変化することで知られる変光星の一種、白色矮星と恒星からなる「激変星」と呼ばれる連星系です。
■激変星の明るさの変化をもとに系外惑星や褐色矮星を検出できる可能性白色矮星とは、太陽のように比較的軽い恒星(太陽の8倍以下の質量)が赤色巨星へと進化した後に、ガスを失ってコア(核)だけが残った天体のこと。直径は地球と同じくらいですが、質量は太陽の4分の3程度もあるとされている高密度な天体です。
激変星では白色矮星と恒星が互いに接近した軌道を公転していて、恒星から流れ出たガスが白色矮星に落下しているとみられています。このガスが暴走的な熱核反応に至ると、白色矮星の表層が吹き飛ぶ「新星」(Nova、古典新星)という現象が起こります。また、ガスが降り積もり続けて白色矮星の質量が太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に達すると、「超新星」(Supernova)の一種である「Ia型超新星」が起きると考えられています。
ただし、ガスはまっすぐ白色矮星に向かうのではなく、らせんを描きながら落下することで、白色矮星の周囲に「降着円盤」と呼ばれる薄い円盤構造を形成するとされています。降着円盤の温度は非常に高く、その明るさは白色矮星や恒星の明るさを圧倒するほどで、激変星からの光のほとんどは降着円盤から発せられているのだといいます。ちなみに、新星よりも小規模な爆発が繰り返される「矮新星」(Dwarf nova)は、白色矮星を取り囲む降着円盤の状態が変化することで生じると考えられています。
【▲ 白色矮星と恒星からなる連星の想像図(動画)】
(Credit: ESO/M. Kornmesser)
仮に、この激変星を惑星や褐色矮星(※)が公転していたとしても、一般的な恒星を公転する惑星などと同様に、直接発見するのは難しいでしょう。しかし、激変星を公転する惑星などの「第3の天体」は、恒星から流れ出て白色矮星の周囲に降着円盤を作り出すガスに対して重力を介して影響を及ぼすことで、激変星の明るさを変化させている可能性が考えられるといいます。この明るさの変化を捉えることができれば、激変星を公転する“第3の天体”を間接的に検出することができるかもしれません。
※…恒星と惑星の中間にあたる天体、質量は下限が木星の13~15倍・上限は木星の75~80倍程度と考えられている
そこでChavezさんたちは、激変星の明るさの変化をもとに惑星のような暗い天体を検出する手法を検証するために、4つの激変星の観測データを分析しました。その結果、「きりん座LU星(LU Camelopardalis)」「へび座QZ星(QZ Serpentis)」「やまねこ座BK星(BK Lyncis)」の3つについて、比較的質量が軽い“第3の天体”が公転している可能性が示されたといいます。
3つの激変星のうち、「へび座QZ星」を公転する天体の推定質量は木星の0.63倍(地球の約200倍)で、惑星の範囲に収まっています。いっぽう、「きりん座LU星」と「やまねこ座BK星」を公転する天体の推定質量は木星の90倍前後で、褐色矮星の上限をやや上回っている可能性があるようです。
1992年にパルサーを公転する太陽系外惑星が発見されてから今年で30年、既知の系外惑星の数は2022年7月18日の時点で5063個に達しています(アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽系外惑星データベースより)。研究チームは今回用いた新たな手法について、連星を公転する系外惑星を捜索する上で有望だと確信しているとのことです。
関連:史上初めて太陽系外惑星が見つかったパルサー、実はレアな存在かも?
Source
Image Credit: Departamento de Imagen y Difusion FIME-UANL/ Lic. Debahni Selene Lopez Morales D.R. 2022 王立天文学会 - A New Method to Detect Exoplanets Chavez et al. - Testing the third-body hypothesis in the cataclysmic variables LU Camelopardalis, QZ Serpentis, V1007 Herculis and BK Lyncis文/松村武宏
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