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見られたくないと思っても非公開にはできない裁判。裁判の公開の目的とは?

相談LINE / 2015年10月29日 20時0分

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もしも貴方にとって大切な人が、ある事件に巻き込まれ被害者となった場合、出来ることならその裁判を誰にも見られたくないと思うかもしれない。
しかし、日本国憲法の82条1項では「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」と規定されており、非公開にすることができないのだ。
日本国憲法という最高法規で規定されている「裁判の公開」の目的とは何なのだろうか。星野法律事務所の代表である星野宏明弁護士に伺った。

■刑罰という究極の人権侵害を正当化する機能をもつ裁判

早速であるが、裁判の公開の目的とはなんだろうか。

「裁判官は、司法試験に合格し、司法修習を経た人がなるのが原則です。閣僚や議員といった政治家とは異なり、選挙という民主制の過程を経ていません。例外的に、最高裁の裁判官は、行政官や学者も任命され、衆議院選挙の際の国民審査もありますが、選挙によって就任するわけではない点でやはり政治家とは異なります」(星野宏明弁護士)

「しかしながら、裁判は市民の権利義務を確定し、刑罰という究極の人権侵害を正当化する機能をもちますから、司法権力の暴走を防ぐための仕組みが必要です」(星野宏明弁護士)

刑罰という究極の人権侵害を正当化する機能をもつ裁判。このフレーズは非常に強烈な印象をあたえるのではないだろうか。確かにそんな権利を持つ司法が暴走することは決してあってはならない。

■司法の独立に大きな影響を与えた大津事件

「歴史的には、司法の独立が確保されず、行政権力と一体となって人権侵害に加担することも珍しくありませんでした。平たくいえば、選挙で裁判官をコントロールできない代わりに、審理を広く公開することで公正中立に裁判をしているかどうかを市民が民主的に、自由にチェックしようというわけです」(星野宏明弁護士)

「そのため、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合(憲法82条)に限り、非公開にできます。また、性犯罪事件等において、裁判自体は公開であることに変わりありませんが、被害者特定事項(氏名・住所等)を秘匿することが認められています(傍聴はできるので、あくまで裁判は公開です)」(星野宏明弁護士)

日本において、司法の独立に大きな影響を与えたのは大津事件だろう。大津事件とは、1891年に津田という人物が、滋賀県大津でロシア皇太子を襲い、怪我を負わせた事件である。これを機にロシアから武力報復を受けかねない緊迫した状況に追い込まれた日本政府は、津田を死刑にするように司法に政治的圧力をかけた。しかし司法はそれをはねつけたのである。

■非公開となっては監視がなされずに不正が行われる可能性がある

日本は大津事件によって司法の独立が維持されたとされている。そしてそれは三権分立の意識を高めめることにも寄与されたのは言うまでもないだろう。

確かに家族の裁判は誰にも見られたくないかも知れない。しかし、裁判の公開がこれほど重要な意味合いを持っていたこと。また非公開を認めてしまうと、監視する者が不在のため、不当な刑罰が科されたり、政治犯への不正な処罰がなされる可能性があることを覚えておいていただきたい。

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