院内感染の責任を問う場合、何を立証すべきか医療過誤専門の弁護士に伺った
相談LINE / 2015年12月9日 20時0分
院内感染とは、病院の入院患者が原疾患とは別に新たに罹患した感染症、または医療従事者が病院内において感染した感染症のことを言う。別名、病院感染や医療関連感染とも呼ばれている。
院内感染が発生する主な原因は人から人へ直接、又は医療機器、環境等による。特に、免疫力の低下した患者や子供、高齢者は、院内感染を起こす可能性が高いと言われている。
そんな院内感染について、医療法では明確に院内感染の対策が規定されている。病院側もそれに従い、対策は行っているのだろうが、入院患者ではなく、外来患者の場合、どこで感染したかが判断しにくいという特徴が院内感染にはある。
そこで今回は、院内感染にかかりその責任を病院に追求する場合、何を立証するべきなのか、またその立証する難しさがどれほどのものかを、医療過誤を専門にしている森谷和馬弁護士に伺った。
■「感染した事実、病院に存在した事実、病院の過失」が重要
早速、院内感染の責任を問う場合、何を立証するべきか伺った。
(1)「その患者が病院入院中に細菌やウイルスに感染した事実」(森谷和馬弁護士)
(2)「入院期間中に、その細菌やウイルスが当該病院に存在した事実」(森谷和馬弁護士)
(3)「更に患者が細菌やウイルスに感染したことが病院側の過失(手落ち)によるものであることも証明する必要があります 」(森谷和馬弁護士)
■MRSA院内感染訴訟ではどうだったか
MRSAという病原菌を元に院内感染したと、病院側に責任を追求したケースがいくつか存在する。MRSAは免疫力が低下している方の場合、感染症となってしまうことがあるのだが、実は健康な方からも検出されることがある。
健康な方も持っている病原菌となると、先程伺った(1)の立証は難しいのではないだろうか。
「MRSAは健康人も保菌していることがあり、当該患者自身が入院前から保菌していた可能性もないとは言えません。従って、患者側にとって、『入院中に初めて感染した』という(1)の証明は容易ではありません」(森谷和馬弁護士)
「当該病院内に細菌やウイルスが存在したという(2)の事実は、当該患者が入院していた時期に、同様の感染患者がいたことが明らかになったという場合でもなければ、患者には証明が困難です」(森谷和馬弁護士)
「(3)は、病院側が必要な感染防止対策を怠っていたことの立証ですが、細菌もウイルスも眼に見えない存在であるため、具体的にいつどのように当該患者に感染したのかが分からず、感染が病院側の手落ちによるものであるという証明は難しいと言えます」(森谷和馬弁護士)
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