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大規模特殊詐欺「ルフィ」を壊滅させた2人の女①〜錦糸町のホテルに現れた妖艶な女

日刊SPA! / 2024年3月28日 15時50分

◆錦糸町での取引

 2019年6月某日、初夏と呼ぶには早い季節だが、太陽が照りつけるその日は、真夏のような一日だった。

 多国籍料理店が立ち並び、異国情緒を内包する東京・錦糸町はその雰囲気とも相まってより暑さを感じるような街だ。この日、フィリピン人のKが来日し、この街にやってきていた。年齢は50代、ブランド物の鞄を抱え、パリッと織り目正しくスーツを着たKはビジネスの成功者としての雰囲気を醸し出していた。

 来日の目的はただひとつ。Kはそれを果たすため、錦糸町駅近くにある19階建てのホテルの一室で通訳とともに、ある人物を待っていた。

 部屋のチャイムが鳴り、待ち人が現れたのは約束の時間きっかりだった。ドアを開けて入ってきたのは、妖麗な雰囲気を醸すひとりの女。手にはその雰囲気に似つかわしくない無骨なスーツケースを抱えていた。女はKに初対面の挨拶と来日をねぎらう言葉をかけるや、傍にいる通訳はただちにそれを訳し伝えた。

 Kの表情が少し和らぐのを見るや、女は傍らのスーツケースを開けた。帯封で括られた1万円札の束が並んでいた。女はそれを一つ一つ掴んで、テーブルに置いていった。Kはそれを丹念に数え始めた。一束一束、一枚一枚。十数分後に約束どおり、数千万円の現金があることを確認すると、女に握手を求めた。

◆鳴かず飛ばずのキャバ嬢

 この“取引”はルフィグループが、フィリピン・マニラ近郊にある廃ホテルを所有者から分割で買い取る契約を結び、1回目の代金が支払われた場面だ。グループはこれで、フィリピンに拠点となる物件を手に入れたのだ。買収の原資となったのは当然特殊詐欺でだまし取ったカネ。それを全国から集め、ホテルまで運んできたのが柴田だった。

 さかのぼること3か月、柴田は都内の繁華街でキャバクラ嬢として働いていた。高校を卒業してから多くの時間を夜の街で過ごしてきた柴田。手に職をつけようと奮起したこともあったが、自分には何かをやり遂げられるとは思えず、いつも早々に挫折していた。物事をやり遂げた経験などなかったのだ。

 結局、糊口をしのぐ場所は夜の街。そこに行けば生きられた。愛嬌のある柴田は働く店では決して不人気ではなかったが、ナンバーワンなど日の当たる場所にいたわけではない。20代後半の女がキャバクラで得たのは生活に困らない程度の稼ぎ。鳴かず飛ばずのキャバ嬢――そんな立ち位置だった。

 しかし、柴田にも思うところがあった。こんな生活をいつまで続けられるのだろうかと。店でも年齢は上から数えたほうが早くなっていた。自分より稼ぐのは年下ばかり。実際、ここ数年、稼ぎが減ることはあっても、増えることは一度もなかった。何かに挑戦するほどのカネもなければ、度胸もない。未来には蓋をして、ただ淡々と日々をやり過ごしていた。

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