焼肉食べ放題店の元経営者が明かす“裏事情”。注文されると「苦しい/嬉しい」メニューとは
日刊SPA! / 2024年4月3日 15時54分
以前、別の食べ放題チェーン店で塩タンも食べ放題のプランを注文したら、追加するたびに塩辛くなり、塩を拭取りながら食べた苦い経験がありますが、ワンカルビは問題なく追加のタンも美味しかったです。
先ほども説明しましたが、焼肉業界で100品目近くのフルメニュー食べ放題を始めた店はワンカルビです。現在、焼肉きんぐが注目され勢いがありますが、そもそも、この多品種食べ放題をスタートさせて、業界に衝撃を与えたのはワンカルビでした。それまでは食べ放題を導入する店のほとんどは肉の盛合わせやご飯の食べ放題のみでした。
◆メニューや提供内容は法律の保護外?
外食は先頭を切って新商品を開発し、大ヒットさせてもすぐに模倣されます。外装や看板などデザインに関しては意匠権で、自己の商品・サービスに使用する屋号やブランドなどは商標権で保護されますが、メニューや提供内容を知的所有権で保護することは困難です。だから、他店もすぐに模倣して業界は同質化戦略に埋没することになります。
案の定、ワンカルビがフルメニュー食べ放題の販売を開始して注目される中、他店もすぐに内容を模倣して開始しました。しかし、食べ放題の品数を増やしたオペレーションの煩雑さから、どの店も苦労されたと思います。内容で差別化が図れなくなったら、価格で勝負しないといけないので、採算も合わずオペレーションも混乱しアルバイトが辞めたりと散々な店もありました。結局、うまくやり切れたのは最初に仕掛けたワンカルビだったと思います。
私が在籍していた焼肉チェーン店もやり切れず、違う路線にシフトを切りました。追随が成功してさらなる付加価値を追求したのが、焼肉きんぐであることは周知の事実で、この店はさすがです。
◆収益を確保するための仕組み
焼肉食べ放題店を導入する店は週末のファミリー客を狙っていますから、郊外立地の大型店が多いです。焼肉はテーブルごとに無煙ロースターやダクト工事が必要で、坪当りの投資額は100万円程度と言われ、他業態と比較すると初期投資の負担が大きいものです。大型店は固定費負担も大きく営業利益率5%程度、と小型店の10%程度と比較すると利益率は低い傾向にありますが、売上が大きい分、利益額は多くキャッシュは回り、現金創出マシンとしての役割は果たしています。
焼肉業界における競争上の差別的要因は何といっても肉の調達力です。昔は米国の牛肉パッカーからすれば、日本は大量の牛肉を買ってくれる上得意客的な存在で優位性がありました。しかし、経済発展した中国の台頭で日本だけが客ではないと取引関係に変化が生じ、資源争奪戦で中国などに日本が買い負けし、輸入牛の仕入れも厳しくなりました。米国産牛などは日本人の嗜好に合わせた霜降り牛肉を肥育し、上得意客である日本に優先的に輸出していたのですが、そこに取引関係が変化したのです。
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