「打撃練習中にバットが飛んできた」巨人ルーキー時代の広岡達朗を襲った“プロの洗礼”とその理由
日刊SPA! / 2024年4月6日 15時50分
すべては、平井のアドバイスをもとに自らのバッティングスタイルを変えるためだ。早稲田時代まで我流でやっており、指導らしい指導を一度も受けたことがなかった。プロに入ってからもコーチから何かを言われたことはなく、初めてアドバイスをくれたのが平井だった。広岡は、指導されることに飢えていた。そして、スポンジのように吸収した。
オープン戦中盤から難なく引きつけて打てるようになり、一年目から遊撃手のレギュラーに抜擢されるようになった。
「平井さんは心臓弁膜症を患っていて、試合に出ると症状が悪化するからと監督の水原さんは俺を使うようになった」
平井が打撃の手ほどきをしてくれた恩人であるがゆえか、現在の広岡はショートのポジションを「奪い獲った」という表現は決して使わなかった。初めてのシーズンを終え、打率三割一分三厘七毛、ホームラン15本、67打点 。堂々たる成績を残して新人王に輝いた。この新人時代の打率は、二〇二一年にDeNAの牧秀悟(打率三割一分四厘)に抜かれるま で六六年もの間大卒ルーキーの歴代最高打率を誇っていた。
【松永多佳倫】
1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。
―[92歳、広岡達朗の正体]―
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