29歳の女性僧侶が、受刑者に寄り添う“最年少教誨師”になった理由。「常識を常識と思えなかった」不登校時代を経て
日刊SPA! / 2024年4月11日 15時54分
◆他者への違和感から小学生で不登校に
──片岡さんが僧侶として布教使・教誨師を兼任していることについて、ご家族の反応はいかがですか?
片岡:家族とは“理解し合えない”という感情がお互いにあるので、基本的には関わりがありません。お寺は父が跡を継いでいますが、私は個人として、自由に活動しています。給与形態も完全歩合制ですね。
──小学5年生から不登校になり、「不登校なのは精神的な病気だから」という親の勧めで、高校からは養護学校へ行くことになったそうですね。そこから片岡さんと家族の間には何かしこりのようなものが残っているんですね。
片岡:私は学校という集団には、小学生のときから違和感を持っていました。毎日同じ服を着て、同じ時間に学校へ行き、先生が言うことは絶対。同級生に「先生の言うこと、なんで聞かなきゃいけないんだろう?」と聞けば「先生だからじゃない?」で終わってしまう。私は常識を常識と思えなかったんです。不登校になった私に対して、家族は完全に拒否反応を示していました。“常識”こそが常識で当たり前と考える人たちには、不登校などまったく理解できなかったんだと思います。
──更生保護女性会の講演でも、時折涙を流しながら学校という集団に対する違和感などを話す姿が印象的でした。
片岡:頭の中では完全に整理がついていても、感情が揺さぶられると、反射的に涙が溢れてしまうんです。キラキラした学生生活は、私にはもう手に入らない。不登校時の自分を思い出してしまうのです。当時から“死にたい”という鬱症状がありました。ただ布教使や教誨師という役割を担う上では、身をもって語れる大切なことだと思っています。それが体験として持てているのは、ひとつの才能だとも自負していますね。
◆希死念慮は「とても意味のある苦悩」
──それでも“死にたい”気持ちで心が侵食されるのは、あまりにもしんどいですよね。
片岡:私が希死念慮を抱くのは、人から与えられた不快感や攻撃に対してのリベンジ意識からです。そういうとき、自殺行為だけが相手にダメージを与える手段と考えてしまう。無意識に首を吊ろうとしている自分がいて、ふと我に返り、思いとどまることの繰り返し。その都度“自分を言い聞かせる作業”をひたすらしています。具体的には「命を賭すべきはどちらか」を問い、「自分を大切に想う人・自分が大切に想う人」を選び取り、蔑ろにする人たちに振り回されない。こうして乗り越えることが、人に対しての布教にも繫がっていく。だからこれは、とても意味のある苦悩だと思えるのです。
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