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思春期特有の葛藤と格闘――それは「ふつう」を求める「ふつう」の私たちの物語だ/『ふつうの軽音部 ①』書評

日刊SPA! / 2024年4月30日 15時51分

 誰もいない夜の教室、弾けないギターを掻き鳴らしandymoriの「everything is my guitar」を熱唱する鳩野が抱える過去と、それでもなお抱く未来への期待は、誰でも同じように経験するものではない(前述の桃が直面している状況も同様だろう)。しかし私たちはこの場面に、自分自身の過去や現在を投影することになるはずだ。

 ぼやけた自分自身の輪郭と、それゆえに理解できなかった他者の振る舞い。「ふつう」という幻影に無自覚に翻弄されていた日々。それらを思い出しながら、本書を読んでみてほしい。誰にも言えない、言うことはない、と思っていたあれこれを、そのときようやく誰かに伝えることができるようになるのかもしれない。わかりあえやしないと思っていた存在との物語が始まるのは、青春時代を生きる者だけの特権ではないのだ。わけもわからずandymoriの曲を掻き鳴らしていた私の物語もまた、始まるかもしれない気がしてきた。

評者/関口竜平
1993年2月26日生まれ。法政大学文学部英文学科、同大学院人文科学研究科英文学専攻(修士課程)修了ののち、本屋lighthouseを立ち上げる。著書『ユートピアとしての本屋 暗闇のなかの確かな場所』(大月書店)。将来の夢は首位打者(草野球)。特技は二度寝

―[書店員の書評]―

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