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「日本はギャンブル依存症が突出して多い」「それはパチンコ・パチスロの普及ゆえ」という言説が間違っている理由

日刊SPA! / 2024年5月1日 15時53分

 これにより、ICD-10までは「アルコール依存」や「薬物依存」などと同じように扱われていた「ギャンブル障害」であるが、物質に依存する「アルコール依存」、「薬物依存」と、行動の障害である「ギャンブル障害」が明確に区分けされたということを敢えて強調したい。

 その上で、ICD-11では、「ギャンブル障害」の症状を明確に示した。
 
 その症状とは、

①ギャンブルに興じる時間や頻度を自分でコントロール出来ない
②日常生活において、ギャンブルを他の何よりも優先させる
③否定的な結果(人間関係の破綻、多額の金銭的損失、健康への悪影響等)が生じてもギャンブルを続け悪化させていく

の3つの症状すべてに当てはまり、且つ

④その行動によって、個人、家族、社会、教育、職業などに重大な苦痛や障害が生じている

状態のことを言う。
この要件が「ギャンブル障害」の必須要件となるのだ。
水原一平氏は「ギャンブル障害」であるか否かはここでは問題ではない。メディアが連日報じた「ギャンブル依存症」というものが、果たしてこのWHOの新たなジャッジの上で、正確に論じられてきたのかが問題なのだ。

◆30年前のものを、あたかも現代病のように語ってしまう厚労省の愚

 実は厚生労働省では、WHOが新たに提唱したICD-11をいまだ国内に適用していない。だから冒頭のように、国に近い機関だからこそ、ギャンブル障害について間違った理解を流布してしまうのだ。

 例えば、パチンコ。

 2000年頃から、社会的に公営競技やパチンコ・パチスロ依存が問題となり、2009年に厚生労働省が行った調査によれば「ギャンブル依存症536万人」という衝撃的な数字がはじき出された。その後、2017年に再度厚生労働省が成人1万人に対し面接調査を行った結果、生涯においてギャンブル依存の疑いがある人は約320万人という推計値が発表された。

 一度目の調査に比べ、二度目の調査では依存症の疑いがある人が大きく減った訳だが、これも「生涯を通じて」という調査結果であり、実はこれを直近1年で換算すると約70万人程度という数字となる。そもそもこの調査に用いられたSOGSという調査方法自体が現代では改善の余地があるとされており、一説には直近1年で「ギャンブル障害」と思われる人は40万人という話もある。

 公営ギャンブルやパチンコを擁護する訳ではないが、少なくともこの調査結果により、厚生労働省が指摘する「日本はギャンブル依存症が突出して多い」、「それはパチンコ・パチスロの普及ゆえ」というのが誤りであることは証明された。

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