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NHK『虎に翼』が「“F1層(20~34歳女性)”から支持される」納得の理由。朝ドラでは異例

日刊SPA! / 2024年5月2日 8時50分

 この物語は男女平等史でも男女の優劣を描く物語でもない。男性側の生きづらさも表し、仲間たちの存在によって自分らしさを取り戻す過程も描写されている。

 花岡の場合、東京帝大に落ちたことから気持ちが荒んでいたが、轟の張り手や梅子のやさしさであるべき自分を取り戻す。直言の弁護を担当教授の穂高重親(小林薫)に依頼し、自らも直言の無実を証明するために動く。父親の跡を継いで弁護士になろうとしていた花岡らしい。

 轟も寅子たちと級友になったことで一変した。男尊女卑的な考えが消えた。第19話、花岡に対し寅子たちが好きになったと打ち明けた。

「俺が男だと思っていた強さややさしさをあの人たちは持っている。いや、俺が男らしさと思っていたものは、男とは無縁のものだったのかもしれない」

◆旧来の朝ドラとは違うヒロイン像

 そもそも性別が性格の差を生むと考えること自体、間違いなのは言うまでもない。しかし、旧来の朝ドラは「女性なのに頑張ったヒロイン」や「内助の功を発揮したヒロイン」が目立った。

 一方で寅子は「人として頑張っているヒロイン」。男女不平等なんて許せるはずがない若い世代は好感を抱く。寅子のモデルである故・三淵嘉子さんも「女性であるという自覚より人間であるという自覚の下に生きてきた」と自叙伝に書いている。

 物語に現実味を帯びさせているところも若い世代には魅力なのではないか。1935年に直言が逮捕されたという設定の「共亜紡績事件」は1934年に発覚した「帝人事件」を下地にしている。容疑内容や逮捕者に共通点が多い。

 実際の事件はときの政権を倒すために仕組まれた冤罪とされたものの、無罪判決が出るまでに約2年以上かかった。寅子や穂高教授らの法廷闘争も長引きそうだ。

◆テーマやイズムは現代的

 もっとも、寅子の賢母・はる(石田ゆり子)が、一足早く直言の潔白を証明した。その証拠がはるが欠かさず付けている日記だったというのは心憎かった。日記は裁判で証拠として採用されることもある。第22回のことだった。

 その直前、はるが長男の直道(上川周作)に対し、猪爪家からの除籍を進言。直道はそれを受け入れようとしたが、妻の花江(森田望智)が「お母様、それは今じゃないです」と反対する。胸を突かれるシーンだった。

 一時は主婦になったことを悔いていた花江だが、おそらく、はると同じく賢母になるのだろう。この朝ドラは主婦になることの幸せも否定していない。ここでも多様性を尊重している。

 ドラマとしての完成度が高く、テーマやイズムは現代的。若い世代が歓迎するのはうなずける。<文/高堀冬彦>

【高堀冬彦】
放送コラムニスト/ジャーナリスト 放送批評懇談会出版編集委員。1964年生まれ。スポーツニッポン新聞東京本社での文化社会部記者、専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」での記者、編集次長などを経て2019年に独立

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