最後の直線まで、いかに‟勝ちたい”という気持ちを抑えられるかー。調教師・福永祐一の教え
日刊SPA! / 2024年5月4日 8時20分
自分も晩年は安藤さんの境地を目指し、近づけたような気がした瞬間もあったが、たどり着けたとは言いきれない。後から人に聞いた話だが、そんな安藤さんも引退間際、「最後まで完全な“無”にはなれなかった」と漏らしていたとか。それを聞いて、ちょっとホッとしたのを覚えている。
安藤さんの話は別として、欲とは本来、ジョッキーが持っていて然るべきもの。欲がまったくない状態では、負けても悔しくないわけで、敗因を探ることなく「まぁ仕方がないか」で終わってしまう。それでは次につながらない。
ありすぎてもダメ、なさすぎてもダメ。だからこそ、コントロールが必要なわけだが、こればかりは経験を積みながら自分のものにしていくしかない。自分も負けて引き上げてきた後、何度も「欲をかきすぎたな……」と反省することがあった。まずは反省し、次は同じことを繰り返さないように意識をする。それを繰り返すうちに、いつしか無意識に欲をコントロールできるようになっていった気がする。
◆他者の欲をコントロールするには……
そもそも競馬界は、馬主、調教師、ジョッキー、そして馬券を買ったファンたちの欲がうごめいている世界だ。馬主や調教師にも「勝ちたい」「勝ってほしい」という欲があり、ジョッキーは自分の欲と向き合いながら、ときにそういった他者からの欲ともうまくつき合わなければならない場面がある。
では、他者の欲をコントロールするには、どうしたらいいのか。それはただ一つ、きちんと言葉で説明することに尽きる。
たとえば、まだキャリアの浅い2歳馬や3歳馬だったとしたら、次のような言葉で伝える。
「当然、このレースを勝ちたい気持ちがあると思いますが、この馬はまだこういうことができないので、それを経験させる必要があります。そのうえで勝てれば一番ですが、現段階ではあくまで勝利は副産物。重要なのは、ここでこういう経験をさせるということでしょう。だから、こういうレースをしますね」
ここまで丁寧に説明すれば、馬主さんや調教師も「わかった、任せる」となり、“ここを勝ちたい!”という他者からの欲は軽減される。ただ、これを可能にするには、相手との普段からのコミュニケーションが必要であり、なおかつ説明をするジョッキーに説得力がなければ成立しない。
ここが難しいところで、若手が突然こんなことを言い出したって、「お前、何を言ってんだよ。いいから勝てるように乗ってこい!」と叱責されて終わってしまう。説得力を持つためには実績を積み重ねるしかないが、馬の能力を正しく伸ばすためにも、そういうジョッキーが一人でも増えてくれたらいいなと思う。
この記事に関連するニュース
-
福永祐一調教師が振り返る「巨大なプレッシャーが襲いかかった‟あのダービー”」
日刊SPA! / 2024年5月26日 8時25分
-
元ジョッキー福永祐一氏が語る「その後の人生」。新米調教師になって変わった金銭感覚
日刊SPA! / 2024年5月24日 8時25分
-
18回挑戦しても勝てなかったのに…福永祐一が日本ダービーを勝つまでに「通算2000勝」を必要としたワケ
プレジデントオンライン / 2024年5月19日 14時15分
-
祖父が元調教師の櫻坂46武元唯衣、福永“祐一君”から「頑張ってね!」 競馬番組出演で驚きの交流明かす
ORICON NEWS / 2024年5月18日 17時0分
-
大事なことは「自分にとっての最適な緊張感」を知ること。調教師・福永祐一の教え
日刊SPA! / 2024年5月5日 8時20分
ランキング
-
1ジャッジが2打席連発20号 メジャー単独トップ、2戦3発の量産態勢…止まらない5月14本目
Full-Count / 2024年6月1日 12時44分
-
2元世界女王・渡部香生子、引退発表「寂しさもありますが…競技者としては後悔がないのが本音です」【競泳】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年6月1日 14時17分
-
3オリ・中嶋監督 中日・マルティネスに「完全ボークでしょ」審判団に苦言「あれはちょっとないですね」
スポニチアネックス / 2024年6月1日 17時50分
-
4大谷翔平、大失速でも“歴史的5月” 6部門で自己ベスト…6月のブーストへ高まる期待
Full-Count / 2024年6月1日 16時17分
-
5西武渡辺監督代行はパンクしないか…編成と現場の二刀流に加え「腰痛い」とポロリ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月1日 7時45分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください