全盲の22歳シンガー、幼少期の“音育”に関心を示して「(美空)ひばりさんの歌に心奪われました」
日刊SPA! / 2024年5月11日 15時52分
その努力が実を結び、9歳だった2010年、障がいのあるミュージシャンたちがその技量を競い合う「第7回ゴールドコンサート」で歌唱・演奏賞と観客賞をダブル受賞する。史上最年少での快挙だった。
歌った作品は『アメイジング・グレイス』。不当極まりない差別を行ってきた黒人奴隷商人が牧師に転じ、過去への後悔と神への感謝を歌った賛美歌だ。聴衆からは割れんばかりの拍手が起こり、審査委員長の湯川れい子氏(88)らが絶賛した。
――どんな気持ちでしたか。
ひらり:そのときは賞を取りたいと思っていたわけでは全然なくて、だから緊張もせず、「行ってきまーす!」という感覚で歌ったら、思いも寄らず賞がいただけまして。聴いていただいた皆さんに喜んでいただけたので、とても嬉しくなったことをおぼえています。
◆東日本大震災が起きた10歳で曲を自作
ますます歌うことが楽しくなっていた10歳のとき、東日本大震災が起こる。このとき、初めて自分で作品をつくった。書くまでもないが、2011年のことだ。
――この作品がファーストシングル『みらい』?
ひらり:はい。テレビとラジオが伝える音声によって、被災地が想像もつかないような状況になっていることが分かり、その後、いろいろな方が復興に向けた作品をつくり始めたことを知って、私も何かできないかと思い、つくったんです。
――曲づくりの方法は知っていたんですか?
ひらり:いいえ、作詞も作曲も分かりませんでしたから、旋律や言葉が思い浮かぶたび、母親に記録してもらったんです。それを何度も直しました。何か出来ないかという思いだけでやりました。
♪心の目を開いたら 明るい未来が待ってるから 過去、現在、未来 みんな歩いてゆけるよ――『みらい』に2度に渡って登場するサビのフレーズだ。
ひらり:まず、過去、現在、未来という言葉が浮かびました。これまでも今も、この先も、必ず繋がっていると思ったんです。
◆東京パラ五輪で国家を独唱
ひたすら被災者を励ます内容だった。それが被災者でなくても胸を打たれると評判になる。CD化されると、その収益は震災遺児に寄附された。
12歳だった2013年には米国ニューヨークの「アポロシアター」での音楽イベント「アマチュア・ナイト」に挑戦し、ウィークリー・チャンピオンを獲得。20歳だった2021年の「東京2020パラリンピック」開会式で国歌を独唱したのは記憶に新しい。
――パラリンピックで国歌を歌うことが夢だったそうですね?
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