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2009年に閉園した遊園地の今。「侵入者を防ぐ高い塀」がもたらした“皮肉な現象”――大反響・総合トップ10

日刊SPA! / 2024年5月19日 15時45分

こうなっていては仕方ない、と諦めて帰ろうとしたそのとき。塀を囲んでいる茂みの中から、ひょっこりとタヌキが出てきて、こちらの様子を見つめるや否やすぐにまた茂みに戻っていったのである。タヌキなんて、東京でなかなか見ることはない。

そういえば、この高い塀に気を取られてあまり見ていなかったが、この多摩テックを囲む塀はそのほとんどが緑に囲まれていて、東京ではあまり聞かないような鳥の鳴き声が聞こえたり、虫が見られたりと、非常に自然が豊かである。

それもそのはずで、元々この辺りの多摩丘陵は武蔵野の自然が豊かな地域であった。高畑勲の映画に『平成たぬき合戦ぽんぽこ』という作品がある。多摩ニュータウンと思しき地区の開発によって住みかを奪われそうになったたぬきが人間に姿を変え、開発を進めようとする人間と対決をする、というのが大まかなストーリーだ。

舞台となった多摩ニュータウンは、この多摩テックの跡地に近い。やはりこの辺りは元々自然が豊かで、たぬきがいたのである。

◆絶滅危惧種も発見されていた

実際、多摩テックの跡地において、たぬきを見たことがあるのは私だけではないらしい。多摩テック閉園後、緑が生い茂ったこの場所で、たぬきの目撃情報が相次いでいるのだ。それだけではない。

この跡地には、絶滅危惧種に指定されているキンラン(ランの一種)や、オオタカの営巣地が発見されているともいう。こうした報告を受けて、東京都自然環境保全審議会では、多摩テック跡地の利用計画も含めて、この自然環境の保全について協議されたことがある。

議事録によれば、この地区にはキンランやササバギンラン、またオオタカだけでなくホオジロや、ホタルなどについても触れられていて、周辺環境と合わせて、相当豊かな自然が多摩テック周辺に広がっていることが推察できる。

◆侵入規制により自然が回帰する“皮肉”

多摩テックの跡地への侵入がきわめて厳重になっていることは、すでに触れた通りだ。テーマパークマニアにとって、それは残念なことかもしれない(もちろん、廃テーマパークへの侵入は不法であるけれど)。

しかし、一面においてその場所への立ち入りが禁止されているということは、その場所の自然が結果的に保全されるということであり、現実に多摩テックでは、侵入規制が激しくなったことによって、その場所に絶滅危惧種の植物が生えたり、かつてこの場所を追われたタヌキたちが戻ってきていたりする。テーマパークへの侵入規制が、逆に自然保護につながるということがそこでは発生しているのである。

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