1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

揉めた相手と「距離を取って縁を切る」その前にすべきは「“人格”で遮断せず“行動”の裏側を見る」だった/田房永子『喫茶 行動と人格』書評

日刊SPA! / 2024年5月21日 8時50分

揉めた相手と「距離を取って縁を切る」その前にすべきは「“人格”で遮断せず“行動”の裏側を見る」だった/田房永子『喫茶 行動と人格』書評

田房永子・著『喫茶 行動と人格 ①』(竹書房)

 世の中には読んだほうがいい本がたくさんある。もちろん読まなくていい本だってたくさんある。でもその数の多さに選びきれず、もしくは目に留めず、心の糧を取りこぼしてしまうのはあまりにもったいない。そこで当欄では、書店で働く現場の人々が今おすすめの新刊を毎週紹介する。本を読まなくても死にはしない。でも本を読んで生きるのは悪くない。ここが人と本との出会いの場になりますように。
「揉めごと」というのは強いコンテンツである。SNSで一番注目されるコンテンツは「炎上」だし、ご近所の噂話からテレビや新聞が伝えるニュースまで、誰かが揉めていれば「どうしたの? 何が起きたの?」と気になってしまう。

 田房永子の新刊『喫茶 行動と人格』は、そういった揉めごとに対して感情的に処理するのではなく、「どうしてそういうことが起きてしまったのか」「自分はどういう解決方法を望んでいるのか」と整理するためのメソッドを書いたコミックだ。フィクションとしてストーリー仕立てになっているが、主題になっているのは“なぜ揉めてしまうのか”を回避するための実践的なアプローチのやり方である。

 サラリーマンの尾形があるとき、「喫茶 行動と人格」という不思議な店名の喫茶店に入ってコーヒーを飲んでいると、店内の一角で一組のカップルが何やら揉めている。
 女性の方が「私はあの食器棚がもっと使いやすくなる方法があるんじゃないかって言ってるだけでしょ! その方法を一緒に話したいだけなの!! なのにあなたはさっきから!! 『そんなことわざわざ考えなくてもフツーはわかる』とか『できないのはどうかしてる』とか!! どうしてそんなにひどいことばかり言うの!?」と連れの男性に怒っている。
 それに対して男性は「『ひどいこと』というのはキミがそう受け取っただけのことだよね」「あの棚はデザイン性ばかりで機能性が低いのは一目瞭然。わかって買ったんだから使うしかない」と冷たく言い返している。

 その後二人が少し落ち着き、店を出ると、突然店内にいた従業員とカウンターにいた客が一斉に「案件ですね」と店を閉めてしまう。従業員は店内のホワイトボードに「あげ足とり男vsキーキー女」と書き、その下に二人が発言していた言葉を順番に書き出していく。そこに常連客が「こんなことも言っていた」と付け加える。
 次に、従業員と常連客は揉めごとひとつひとつの発言を“行動”と“人格”の二つに分類していく。「『どうすれば棚が使いやすくなるか』は『行動』ですね」「『キミの自己責任』は『人格』!!」「『フツーはできる』も『人格』だよね」。そうやってカップルの一つ一つの発言を「行動について話したこと」「人格について話したこと」を整理すると、従業員と常連客はそれぞれ「あの二人はどうして揉めていたのか、あの男の人、女の人の発言の根っこにあるものは何か」について自分の見解を述べていく。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください