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かつての“天才子役”が“宇宙的な俳優”に。同級生の記者が明かす「グッときちゃった」瞬間

日刊SPA! / 2024年6月21日 15時51分

同作のラスト、井川遥扮するピアノ教師の導きで発表会に参加した少年が弾いたのが、クロード・ドビュッシーの「月の光」。左手以外は本人が弾いている。12年後、初主演映画『ミュジコフィリア』(2021年)では、並外れた感性を発揮する音大生役を演じ、今度は両手とも吹替えなし。どちらの役も現代音楽で共通し、響き合う。『トウキョウソナタ』からの流れがアンダンテ(歩くような速さで)のようにもアレグロ(速く)のようにも感じられる。『ミュジコフィリア』の取材現場で、卒業以来の再会を果たしたのも音楽映画の奇縁がもたらした通奏低音だろうか。

◆ワンショットの持続を体感

大学時代の友人である一方、純粋に俳優としての井之脇海を見るということは、スリリングな体験に他ならない。対象となる俳優の演技に並走し、見つめることのワクワク感。それはあたかも撮影現場の袖で眼差しているような感覚だ。

「よーい、スタート」から「はい、カット」までの間、井之脇がひと息に演じ、気を吐く瞬間を追体験するというのか。今、彼の演技にすごいことが起きているというグルーヴ感を共有するというのか。そんな体感が特に強かったのが、2023年末に放送された『あれからどうした』(NHK総合)だった。

第3話「制服を脱いだ警察官」では、警察官たちの軽妙な日常が本人の視点と客観的事実とのズレとしてコミカルに描かれる。井之脇が演じたのは、正義感は強いがちょっと頼りない巡査の青柳健太。休憩時間、先輩・金澤真由(岸井ゆきの)と人数分のお茶を入れながら会話する場面。それぞれ肩越しのショットが数カット切り返される内、岸井のグルーヴィーな呼吸に合わせた井之脇が恐るべき持続力のある演技を表出した。井之脇海に何かが宿る瞬間を体感したのだ。「この海君、ほんとにすごいな」とテレビ画面に釘付けになりながら、膝をたたいた。

◆井之脇海の宇宙観

ワンショットの中に存在し、演技を持続させること。これは、俳優の能力として当たり前のことだと思われるかもしれない。でも想像以上に難しい。もっと言うと、この当たり前が出来ている俳優の方が実は少ない。

俳優の基礎的能力を確認しながら、井之脇の出演最新作『9ボーダー』を見るとどうだろう。第1話の初登場場面でまずびっくりする。主人公・大庭七苗(川口春奈)の姉・大庭六月(木南晴夏)が経営する会計事務所に面接にやってきた松嶋朔(井之脇海)が、一見して何とも風変わり。ハムスターのカゴをどうして抱えているのか、朔が事情を説明する間、カメラが興味を示すかのようにスゥッとズームアップ。

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