1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「定額減税4万円では効果がない。消費税を減税すべき」と元日銀副総裁が断言するわけ

日刊SPA! / 2024年6月28日 8時50分

「定額減税4万円では効果がない。消費税を減税すべき」と元日銀副総裁が断言するわけ

※首相官邸ホームページより

―[経済オンチの治し方]―

私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。
◆6月から始まる4万円定額減税って意味あるの?

6月から’24年分の所得税・住民税の徴収額から定額が控除されます。対象者は合計所得金額が1805万円以下の人です。減税額は納税者と同一生計配偶者、または扶養親族1人につき所得税3万円、住民税1万円で、合計4万円。家族4人世帯であれば、合計16万円が減税されます。

定額減税の目的は、賃金上昇が物価上昇に追いついていないことによる国民の負担を緩和することにあります。しかし、その緩和策は不十分と言わざるをえません。’24年4月の消費者物価は前年同月比2.5%にとどまっているとはいえ、生活を直撃する食料の上昇率は4.3%、生鮮食品に至っては9.1%です。さらに、食料と生鮮食品の前年同月比は’21年12月以降、現在まで低下したことがないため、この約2年半の上昇率は食料で15.4%、生鮮食品で20.5%にも達しています。

5月20日の経団連の発表によると、大手企業の今年の春闘での賃上げ率は5.5%で33年ぶりの高さになりましたが、’21年と比較すれば、実質賃金は下がっていることになります。大手企業がこの程度では、中小企業の実質賃金は推して知るべしです。

さらに、家計消費は’23年7−9月期から3四半期連続で前年同期比マイナスという弱々しさです。

このように考えれば、4人家族で16万円は、「もらえないよりまし」といった程度で、消費を喚起して、景気を回復させる力はありません。所得税・住民税非課税世帯には減税でなく、給付金が出ますが、これも同様です。

今回の定額減税に似たものとして、過去には1999年度の“定率”減税がありました。これは所得税の20%減税、住民税の15%減税で、税負担の大きい世帯ほど減税額が大きくなり、今回の定額減税よりも規模が大きく、しかも’06年まで続きましたから、ある程度の景気下支え効果を発揮したと言えるでしょう。

それに対して、今回の定額減税は1年限りですから、景気対策としての効果はなく、実質賃金が物価上昇に追いつかないことによる負担を、「ちょっと軽減します」という極めて小ぶりな政策です。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください