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「ごめん…君に一目ぼれしちゃって」CAと再会したくて“怒りのクレーム”を入れた迷惑客の正体

日刊SPA! / 2024年7月12日 8時54分

「結局、翌週にクレームを入れた男性客と本社の一室で謝罪することになったんです。上司も同席することになりましたが、それまでの一週間は不眠と胃痛で散々な目にあいました。

そして対面当日。応接室のドアが開いて、三十代後半と思しきスーツ姿の男性が仏頂面で入ってきました。大柄で強面の男性を見るなり、私は上司とともに深々と礼をしたんです。その表情に見覚えがありました。ドリンクサービス後に酔い止め薬が欲しいと告げたお客さま。丁重に対応したはずだったのですが、その方がどうして……? 私は唇を噛みしめました」

◆ニンマリ笑って放った「衝撃の一言」

 しかし次の瞬間、男性はとんでもない言葉を告げてきた。

「私の顔を見ると、仏頂面は一転、ニンマリ笑って『ごめん……君に一目ぼれしちゃって。こうでもしないと会ってくれないだろう?』と照れたように頭を掻いたんです。唖然としました。

上司に『クレームが入って直接謝罪して』と言われた日から、私は眠れずじまいでした。他のCAたちにもクレームの噂が広がってしまい、居心地の悪い状況で必死にフライトをしてきたのに……。結局、クレーム客を装って私をおびき寄せ、謝罪と言う名目で再会し、交際のきっかけをもくろんだお客さまだったんです」

◆名刺を渡してきた男の正体は

 何とも信じがたいことだが、その男性は図々しくも名刺を渡してきたという。

「差し出された名刺は、機転を利かせた上司が『わたくしがいったん預からせていただきますので』と受け取ってくれました。凍りついたままの私に、男性客は『春美さん、連絡待ってるよ。良かったら食事に行こう。これからも君の会社の便を使うから』と笑顔を向けてきたんですが、腹立たしさと緊張が一気に解けたことで、めまいがしてしまって……」

 クレームではなかったと理解した上司は、他の社員を呼び、男性客を別室に案内するようお願いした。男性客も名刺を渡せてスッキリしたのか、おとなしく退室したという。

「後日、上司に聞くと、男性客はある不動産会社の二代目社長だと教えてくれました。『名刺はこのまま私が預かっておくから』と言われ、もちろん連絡はしていません。あまりにも悪質な乗客だったため、注意喚起と私の汚名返上のため、他のCAたちも情報共有をしてもらいました。ただ当時は、今ほど迷惑客に対しての罰則がなかったため、私は泣き寝入りの形になってしまいました。何年経っても苦い思い出です」

 謝罪までの一週間、不安で眠れない日々を送っていた春美さんの心労を彼は理解しているのだろうか。「いまだにトラウマとなっています」と眉をひそめる春美さんの心の傷は深い。

文/蒼井凜花

【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。

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