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明徳義塾の馬淵監督が「松井秀喜を5打席連続敬遠した」理由。“勝利へのこだわり”が選手に与えたもの

日刊SPA! / 2024年7月17日 8時51分

そのため、失策を最低限にすることにより、勝率が上がるのだ。また、チームの統制を整える上で、上級生への配慮も欠かさず、同等の能力ならば上級生を起用することも意識している。さらに、主将は上級生の投票で決めており、監督が一方的に決めるのではなく、あくまで選手を主体としており、監督と選手が上手く伴走していることがわかる。

◆スパルタ指導から脱却し、今の時代に合わせた指導を

昭和・平成・令和の3つの時代を指揮した名将は、伝統的なチームづくりをする一方で、時代に上手く適応しながら育成をしてきた。昭和から平成では、練習試合後に夜遅くや翌朝まで練習をしていたそうだ。しかし、令和のご時世でそのような練習を選手に強いれば、すぐに批判を浴びるだろう。また、今はスパルタ的指導法ではすぐに選手が辞めてしまい、彼らの可能性をなくしてしまうデメリットもある。現在はそこまでスパルタ的指導を行わない。

このような時代背景の中、馬淵氏は自身がやっとの思いでグラブを買ってもらった原体験を伝えることで、道具とお金の大事さをはじめ、グラウンドの練習では「負けじ魂」を植え付けていくのだ。これは、普段から諦めないメンタリティをつけさせる狙いがある。練習から諦めるクセがついていると、土壇場の大事な場面で踏ん張れないからだ。

◆選手への徹底した気配りと熱い想い

また、選手の親との関係も考えながら接している。明徳義塾では、県外から入学した選手が多いことや母子家庭の選手を配慮し、練習試合の応援やお茶当番は保護者に一切やらせない。これは、家庭環境で差が生まれると、まだ未成年の選手に対するメンタル面で影響が出るからだろう。このように、練習以外でも気配りをしながら、選手を支えていることがわかる。

様々な指導法や柔軟な対応力で、長年トップにいる馬淵氏からすると、目先の勝利も大事だが、人生に対して大局観を持って取り組んでほしい考えもあるだろう。選手達には、「人間はいつか花が咲くんよ。いつ咲くかが問題で、はよ咲いたら楽しみがないで」と声をかける。

好きな野球で大成すれば万々歳だが、なかなかそうはいかないこともある。それを踏まえ、選手には厳しい練習や試合に耐えた時を思い出して、今後の人生に活かしてもらえるように指導しているのだろう。馬淵氏の好きな言葉で「一芸は万芸に通じる」という世阿弥の名言がある。

これも、「高校野球の経験を人生に活かしてほしい」という彼の想いと通じる。高校野球に集中して極限まで打ち込むことにより、社会に出た後も活かせることが大いに出てくるのだ。逆に、何も打ち込んでこなかった場合は、何をやっても成せないという考えもある。部活動とはいえ、高校野球というスポーツをやっている以上、勝ち負けはついてくる。さらに、レギュラーに入るか入らないかの競争の勝ち負けもある。

ただ、これも大局観を持って人生を眺めれば、一つの瞬間にしかすぎないのだ。高校時代がピークの人もいれば、社会に出た後にピークが来る人もいる。長い人生において、自分を高められる人間になることが、馬淵氏にとっての「勝利へのこだわり」かもしれない。

<TEXT/ゴジキ>

【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55

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