「汚れた東京湾を8キロ泳いだ」防衛大卒の女性が語る学生生活。学内の“恋愛事情”も
日刊SPA! / 2024年8月2日 8時52分
あとは、こんな迷いを持つ私が30人もの隊員を部下にもつ小隊長として、やっていけるのだろうかといった思いも正直に言うとありました。金銭的な理由もあいまって入校したものの、その頃には実家の家計が落ち着いたというのもあります」
◆根深く残るハラスメントという問題
松田さんの同期で、今も女性自衛官として活躍しているのは、防衛省で情報を扱っている人、北海道で中隊長を務める人など様々だという。ただ、任官後もすいすいとキャリアを築けるとは限らない。松田さんは、多くの女性幹部自衛官に取材し、共通する声を聞いている。
「とくに結婚し、子どもができてからは職務との両立が大変です。時間的拘束はあるし、転勤族なので、家事・育児で困難に直面します。実家の親の助けで、どうにかなっている人がほとんどですね。離婚するケースも少なくありません私の周りでは、特に若くして結婚した人はその傾向が強いです」
家庭との両立のほかに、上官や同僚からのパワハラやセクハラという問題も、松田さんは指摘する。
「今は減ってきているようですが、『お前、使えない。本当に幹部なの。もう辞めてしまえ』を連発するといった、あきらかにアウトな事例は結構あるようです。セクハラもよく聞きます。学生時代の延長線的なノリで酒席で騒いで、酔っ払った勢いで女性隊員の胸を触ったりとか。
セクハラはわかりやすいのですが、パワハラは、線引きが難しいことも多いのです。例えば訓練で、不意に危ない行動をした隊員に思わず手が出て、『お前、バカか。死ぬぞ、ボケ』と言ってしまうのは、はたしてパワハラかという問題があります。一方、パワハラだと騒ぎたてて、幹部の将来をつぶしてやろうと考える部下もいたそうです。自衛隊では、厳しい言動はどこまで許容されるかという点は、深く議論する必要があります。それは今後の課題のひとつです」
<取材・文/鈴木拓也>
【松田小牧】
1987年大阪府生まれ。2007年に防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、株式会社時事通信社に入社、社会部、神戸総局を経て政治部に配属。2018年、第一子出産を機に退職。その後はITベンチャーの人事部を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う。著書に『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』『定年自衛官再就職物語 – セカンドキャリアの生きがいと憂うつ –』(いずれもワニブックスPLUS新書)がある。
X:@matsukoma_yrk
【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki/
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