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“極端に低い”児童養護施設からの大学進学率「ガリ勉と馬鹿にされる空気が」当事者が感じた”見えない壁”

日刊SPA! / 2024年8月9日 15時51分

 周囲は頼れない。であれば児童養護施設につながったのも、まさに“自力”だ。

「17歳のときに登校するふりをしてそのまま児童相談所を訪れました。自分の身に起きている状況を述べると、保護の要否が検討され、一時保護が相当であると判断されました。その後、児童養護施設に入所することができました」

◆入所者から「ガリ勉」と馬鹿にされる空気が

 前述の通り、児童養護施設出身者のなかで大学進学が叶う人はそう多いとは言えない。まして東京外国語大学は説明不要の名門国立大学であり、狭き門。だがそれだけに、大学進学を志すあお氏の施設時代は孤独でもあったという。

「勉強は昔から好きでした。単純にわからないことがわかるようになるのは楽しいですよね。幼稚園の頃から、店の看板や電柱の広告に書いてある漢字のほとんどは読めていたと思います。漢字検定2級(高卒程度)は小学生で取得しました。

 しかし、虐待によって複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまい、児童養護施設に入所するころには幻覚や幻聴の症状もありました。施設はそうした高年の児童に対するケアをあまり想定しておらず、たとえば私が服用すべき薬も『幼児さんを寝かせてからね』と言われたまま放置されるなど、重大に捉えているようには思えませんでした。

 加えて、勉強をしていることを同じ入所者から『ガリ勉』と馬鹿にされる空気があり、さすがに職員はそうした言葉を使わないものの、冷笑的ではありました。施設内では勉強が難しいので近隣の図書館に自習に行こうと思っても、『一週間前に外出申請してください』というようにやけに事務的で、大学進学を目指すうえで必ずしも良い環境ではなかったように感じます」

◆「あなたが東大に入れば…」職員の言葉に違和感

 児童養護施設がそもそも大学進学を前提としていない、という空気感は、たとえばこんな場面でも感じたという。

「同じ施設入所者のなかに、1つ下の学年の子がいました。その子はとても向学心があり、努力家でしたが、やはり虐待家庭の出身だったこともあって学力は高くはありませんでした。私がもっとも嫌悪したのは、職員が『あなたの成績では大学進学は無理』などとはっきり言うことです。一方で、成績が良かった私に対しては『あなたが東大に入れば、社会的養護出身者の希望になる』というような言葉をかけてくるのです。

 私は、大学進学とは学問を修めるための選択肢であって、その先の就職率の良さや給料の良さだけのためのものではないと考えています。したがって、現時点で学力が低かったとしても、学びたい気持ちがある子に対して冷たく突き放すのは、児童福祉の本質から外れていると思います」

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