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“極端に低い”児童養護施設からの大学進学率「ガリ勉と馬鹿にされる空気が」当事者が感じた”見えない壁”

日刊SPA! / 2024年8月9日 15時51分

 東京外国語大学での生活は、あお氏にとって苦しみと向き合うだけのものだったのか。あお氏はその質問にかぶりを振る。

「私は現在、フリーランスの声優としても活動しているのですが、東京外大のナレーション系のサークルに所属したことによってきっかけを与えられたと思っています。実家にいたころは、父に可能性を潰され続けて、息苦しく過ごしてきました。けれども、同じサークルのなかにはさまざまなバックグランドを持った学生たちがいて、多様な価値観を認めてくれる仲間がいました。勉強しかしてはいけない空気感のなかで育った私は、勉強を頑張ったあとでもアーティスティックな世界を目指せるんだと感銘を受けました。

 また、私は結果的に退学しましたが、お世話になった教授が電話をしてきてくれて『本当に辞めてしまうの? あんなに熱心なのに、もったいない』と言っていろいろな回避策を考えてくれたこともありました。その教授からは、退学してからも、『何かあったら連絡してください』という言葉をかけていただきました」

 あお氏に対峙すると、いかなる環境に置かれたとしても自らの道を進むことの大切さを思い知らされる。だがすぐに、そうした“個人の努力”に依拠した考えは間違いで、社会制度の整備やその周知さえ徹底されていれば、困難な状況にいるより多くの子どもたちが自分の学びを実現できたことに気付かされる。

 誇らしげに情報社会を謳う現代日本において、本当に必要な人にどれだけの情報が届いているか。届けるべき立場の人間が、どれだけの勉強をして役割を果たしているか。あお氏の問いかけは静かで丁寧だが、その本質は慟哭にも少し似ている。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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