「収納は生活であり生き様だ」社会に影響を受けて変遷する“収納”の歴史/『収納され続ける収納 生活者のデザイン史』書評
日刊SPA! / 2024年8月27日 8時50分
北田聖子・著『収納され続ける収納 生活者のデザイン史』(雷鳥社)
世の中には読んだほうがいい本がたくさんある。もちろん読まなくていい本だってたくさんある。でもその数の多さに選びきれず、もしくは目に留めず、心の糧を取りこぼしてしまうのはあまりにもったいない。そこで当欄では、書店で働く現場の人々が今おすすめの新刊を毎週紹介する。本を読まなくても死にはしない。でも本を読んで生きるのは悪くない。ここが人と本との出会いの場になりますように。
収納、という文字を見るとワクワクしてしまうのは私が本屋だからだろうか。ジャンルや文脈などを基準に区画整理された棚にピッタリと本が収まったとき、もうこのまま誰にも買われないでほしい……と倒錯した思いに浸ることもある。当然そんな夢は叶うはずもなく、本棚は完成したそばから崩れていく。いや、崩してもらわないと困るのだ。私は本屋だから。
そこまで言うのなら、さぞかしおぬしは収納上手、整理整頓がなされたきれいな本棚(=お店)を維持しているのだろう、と思われるかもしれない。そうではない。基本的に雑である私の性質を自ずと反映させることになる店内は、やはり全体的に雑、そしてそれを「なんかいい感じ」に見せようと……いや、単に整理整頓が面倒でやらないことの言い訳にしているだけである。しかしそれもまた収納である、と本書『収納され続ける収納 生活者のデザイン史』(雷鳥社)は言う。言っている気がする。
著者の北田聖子はデザインの専門家であり、その観点から収納の歴史を綴る。曰く、「私たちは、収納で生活をデザインしてきた」。つまり本屋が本棚でお店をデザインするという行為は、生活というさらに大きな枠組みの中に“収納”されている、とも言えるだろう。あるいは生活をもう少し言い換えるならば、その者の生き様、とも言えるかもしれない。本屋の生き様、収納(をデザイン)する者の生き様……。
本書は収納の歴史を現代から遡っていくスタイルであり、第1章(2000年代)で多く取り上げられているのはいわゆるブロガーだ。収納についての記事をネットに書き、それが人気コンテンツとなり、書籍も出すようになる……。その流れは各人概ね同じなのだが、なぜ収納について考えるようになったのか、そしてそれを発信しようと思ったのかについては、それぞれに個性がある。もちろん、収納のこだわりポイントにも違いがある。そして、記事を通して何を伝えたいのかも異なっている。当然と言えば当然なのだが、不思議なことに同じ意図(たとえば「生活感をなくしたい」)でも、伝わってくる印象は違うような気がするのだ。
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