三笘薫の突破力を支える、類まれなるキャンセル力。秘訣は“後出しじゃんけん”にあり。
日刊SPA! / 2024年9月10日 21時47分
中国戦でも、この「キャンセル」は無数に行われていた。むしろドリブル時はボールタッチする度にキャンセルを繰り返していると言ってもいい。1タッチ1タッチ、ボールを動かしながら対面のDFの所作を読み取り、瞬間的な判断で常に逆、逆を取って抜いていく。対応するDFとしては必死についていくものの「だんだん抜かれていく」ようなイメージだ。
中国戦の前半42分、相手DF2人に寄せられながらも縦に突破していったシーンはその典型だ。最初に横から寄せてきた20番シェ・ウェンノンに対しては入れ替わるようにカットインする……と見せ掛けてキャンセルして縦へ。続いて立ちはだかった15番のヤン・ゼシャンに対しても、一瞬スピードを緩めてグッと中に切り込む体勢に入っておきながら、ヤンがそれを読んでやや重心が内側寄りになったのを見逃さず、瞬時にキャンセルしてやはり縦へ突破。完全に抜き切るには至らなかったが、ラストパスを供給するには相手より半身分でも前に出てパスコースが作れれば十分だ。ニアに走り込んだ守田英正へ左足で低く速いクロスを送り込み、チャンスを演出した。
◆キャンセルドリブルの究極系・後出しエラシコ
以前、三笘が報道ステーション(テレビ朝日系)のスポーツコーナーに出演し、実際にピッチで自らのドリブルを実演解説したことがあった。DF役として対峙した元サッカー日本代表DF内田篤人氏は、その駆け引きについて「後出しじゃんけん」と表現した。DFの動きに応じて三笘が後出しでタッチを変えてくるので、守備側が常に後手を踏んでしまうという意味だ。現役時代、クリスティアーノ・ロナウドら世界最高峰のアタッカーともマッチアップしてきた経験を持つ内田氏も「すごいわ」と脱帽するほかなかった。
三笘には、そんなキャンセルドリブルの究極系とも言える技がある。後出しで発動するアウト→インのタッチだ。
皆さんは「エラシコ」と呼ばれるプレーをご存知だろうか。ポルトガル語で「輪ゴム」を意味するフェイントで、足の外側→内側の順に素早く「トトン」というリズムでボールを弾き突破する技だ。古くはセルジオ越後氏が開発し、1970年代に活躍した元ブラジル代表No.10ロベルト・リベリーノに授けたのが起源で(リベリーノがかつてブラジルのテレビ番組内でそのように語った)、04年に同じくブラジル代表No.10ロナウジーニョ・ガウーショがナイキ社のCMで披露したことで、日本のサッカーファンの間でも一躍脚光を浴びた。ロナウジーニョは公式戦でも度々使用していたほか、ウィリアンやドウグラス・コスタら、後のブラジル代表アタッカーたちにも得意とする選手は多い。
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