米津玄師、新アルバムがビルボードTOP50入りも「アメリカで受け入れられるのは難しい」と言えるワケ
日刊SPA! / 2024年9月18日 8時53分
これとは対照的なのが米津玄師の作風です。とにかく手が込んでいるのです。
たとえば、アニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマとして大ヒットした「KICK BACK」。プログレッシブ・ロックの構築性と歌曲としてのJ-POPが高い純度で融合したこの曲と同じ要素を持つものは、アメリカのメインチャートにはありません。「KICK BACK」は、日本的な輸入と加工によるコラージュの、大衆音楽におけるひとつの極点だと言えるでしょう。
他にもループ的な要素を持つ「LADY」でさえ転調による場面転換がありますし、映画『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」は横に広がる大きなメロディのバラードですが、細かな音節に合わせてコンパクトにコードチェンジするあたりに演歌、歌謡曲の名残りを感じます。
◆米津がアメリカで受け入れられるのは難しい?
このように複雑な構造の曲を書くミュージシャンがトップを取るのですから、日本のリスナーは熱心に音楽を聴く人たちなのだと言えます。米津玄師の曲には、聴く側にある程度の積極性や能動性が求められます。何の気なしに聞いているようでも、「KICK BACK」が売れるのは、良い意味で異常な事態なのです。
では、そのような作風のままアメリカでも受け入れられるのでしょうか? 筆者は難しいのではないかと予想します。良し悪しではなく、いまの作風を貫けば、あくまでもエキゾチックなポップミュージックのひとつとして、マニアックなファンを獲得するにとどまるでしょう。いまのアメリカのヒットチャートには、米津の複雑さを味わう土壌がないのが明らかだからです。
さらに言えば、常田大希率いるmillennium paradeのように、洋楽的コンセプトを下敷きにしたアーティスティックなプロジェクトもあまり需要がないのではないかという恐れもあります。あちらからすれば、“そういうのもう間に合ってます”、なのですね。
◆アメリカの音楽ファンを楽しませたいなら…
米津玄師にグラミー賞への野望があるかはわかりません。少しでもそういう考えがあるのだとしたら、戦略を変える必要もあるのかもしれません。世界で成功したK-POPを見ていると、商売をする国の人々に好かれるためのアクションを惜しまないからです。たとえば、NewJeansのハニが松田聖子やTUBEを歌う。それは、NewJeansを売り込むこと以上に、日本人を喜ばせることを意識しているのです。
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