<漫画>「幽霊が一切出てこない話」に大きな反響が。“ホラーが苦手”な作者がホラー漫画を描き始めたワケ
日刊SPA! / 2024年10月7日 15時54分
『僕が死ぬだけの百物語』(小学館)より
『僕が死ぬだけの百物語』は、「少年サンデーS」と「サンデーうぇぶり」で連載中のオムニバスホラー漫画。幽霊そのものの怖さと人間が持つ狂気が同居するストーリー展開が話題を呼んでおり、2024年10月時点で「八十九夜」を迎えている。
一つ気になるのは、漫画連載という荒波のなか、百物語が途中で終わってしまうリスクがあったのではないかということ。作者である的野アンジさんに、心臓が冷え切るような作品を描く発想の秘密に迫るだけでなく、百物語を構想した当時の心境についてもインタビューした。
◆もともとシュールなギャグ漫画を描いていた
――的野さんは、『僕が死ぬだけの百物語』の連載前はギャグ漫画を描いていたと聞きました。
的野アンジ:そうなんです。地球侵略に来た宇宙人がサッカーにハマるとか、少年と河童が仲良くなるとか、シュールギャグのようなテイストの漫画をよく描いていました。ある日、編集者さんから「的野さんの絵柄は、ギャグよりもホラーでこそ生かせるのでは?」と言われたのが、いまの作風に路線変更したきっかけですね。お化けや妖怪など、人外のキャラクターをデフォルメ化して描くのが好きだったのですが、そのなかにホラーを彷彿とさせるようなデザイン性を感じてくれていたようです。ただ、そのとき私がした返事は「絶対に無理です」の一言でした。
◆ホラーが苦手だからこそ描ける“恐怖”が
――なぜ無理だと思ったのでしょうか?
的野アンジ:実は、ホラーが大の苦手だったんです(笑)。テレビでホラー番組が流れるものなら、一瞬たりとも目に映らないように高速でチャンネルを変えていました。なので、自分がホラーを描くなんてことは選択肢にすら入らなかったんですよ。ただ、編集者さんから「怖いものを怖いと思える人の方が、恐怖を感じるポイントを知っているぶん、実はホラーを描く素質がある。」と言われて。大好きな漫画のためなら……と思いホラーへチャレンジすることにしました。
――いまも、苦手なホラーと向き合いながら作品づくりを続けているのでしょうか?
的野アンジ:実は、ホラーを観る視点が変わったおかげか、怖いものにはしっかり耐性が付きました。人に恐怖を覚えさせる展開や見せ方に興味を持つようになり、怖さが二の次になったことが大きいですね。ホラーを描くと決めてからは、とにかく怖いものに触れることを意識しました。ジャパニーズホラーのじんわりした恐怖こそホラーだと感じていたので、日本の怖い小説や映画などの作品をひたすらに吸収していましたね。とくに、ホラー漫画家の伊藤潤二さんの作品は、いまの作風にたどり着くまでの刺激になったと思います。ホラーを描くなかでも、人間らしさを感じられるようなストーリー展開が面白くて、大好きな漫画家さんの一人です。
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