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圧倒的だった“2012年の阿部慎之助”。3割4分、27本塁打、104打点…背景には恩師からの一言が

日刊SPA! / 2024年10月25日 8時53分

2007年から09年まで巨人がセ・リーグ3連覇を果たしたときのこと。アレックス・ラミレス、小笠原道大を中心に打線が機能していたなか、阿部は6番か7番を打つことが多く、打撃タイトルはラミレス(2008年打点王、09年首位打者)が獲得していた。そうであるからこそ、心のどこかで「自分が打たなくても、チームの誰かが打ってくれればそれでいい」と考えていたフシがある。

野球はチームスポーツだ。たしかに試合に出場している1人がどんなに頑張ったところで、ほかの人がまったく機能しなければ、得点は奪えないし、そうなると負ける確率が高くなってしまう。そう考えると、阿部の考え方も理解できなくはない。だが、彼自身が打撃成績に対してもっと貪欲になれば、今以上の成績を収めることなどたやすいことだと私は見ていた。

◆「1年だけ、真剣に野球に取り組んでくれないか?」という言葉をかけた

もう一つの、「捕手でこれだけ打っているからいいだろう」と自ら決めつけてしまっていたことも、阿部のプレースタイルから顕著に見てとれた。たしかに捕手として彼の打撃成績を見れば素晴らしい数字であることは間違いない。だが、「上には上がいる」とさらなる高みを目指して野球に取り組めば、間違いなく当時の打撃成績で終わるような選手ではない。それもまた事実だった。

私は阿部にこんな提案をした。

「1年だけでいい。一生懸命、真剣に野球に取り組んでくれないか?」

阿部の試合での打席の様子を映像で確認したとき、集中しているときとそうでないときの差が激しいのではないかと感じていた。打撃タイトルを獲る選手というのは、一打席一打席を大切にしているものだ。裏を返せば、打っても打てなくても、集中力を欠かすことなく維持し続けている。

3割を打つ打者は100打数で30本の安打を打つ。2割9分の打者は、100打数で29本の安打となるわけだが、このわずか1本の差が3割打者になれるかどうかの分岐点となる。阿部は余力を残して3割近くを打っているのだから、シーズン通して集中力を持続すれば、とんでもない成績を残せるのじゃないかと思ったわけだ。

結果からいえば、阿部はこのシーズンは3割4分近くを打って首位打者のタイトルを獲得しただけでなく、104打点を挙げて打点王との2冠に輝いた。

打率を月別に見ていくと、3~4月が3割2分5厘、5月が3割1分6厘、6月が3割3分8厘、7月が3割1分8厘、8月が2割9分8厘、9月が4割4分7厘、10月が3割ちょうどと、まったくばらつきがなかった。それどころか、優勝争いも佳境に入った9月の打率が滅法よかった。つまり、「シーズンを通して集中すれば、成績の残せる打者である」ことが証明されたのである。

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